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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 2Sハウス 2つのSとは何・・・?

目次

1 家づくりは「人」「時間」「空間」の順番で検討すると良い

年が明け、あっという間にあの阪神大震災の1月17日が過ぎました。なんと既に24年もの月日が過ぎたと言う。あの日寝起きに生中継されたあの都市型の大地震の衝撃がまるで昨日のことのように思えてなりません。それは多くの都市に住む人やこれから家を持とうとする人に共通する大きな不安となったのです。
以来「耐震免震」がなぜかハウスメーカーの売り文句のようになり、それが家の代名詞のようになりました。合わせて高齢化社会がうたわれていて、家づくりは耐震とバリアフリー一辺倒となり多くの家がリフォームされたり建て替えられたりしたのです。

こうして建てたり購入した家で10年20年経った後に「あーすればよかった」とか、「何か無駄に広かったか?」などと、まるで住まいが家族に合っていないと思う人が多いのです。もともとそのころの家づくりの関心事が子育てあり、この若い家族もいずれその子どもたちはあっという間に成長し、出て行きそこに取り残されたのは自分たちだけになるなどとは夢にも思わなかったことで、ましてや夫婦どちらかが病や認知症などになるなどとは考えたくもなかったからなのでしょう。家づくりの関心事は間取りやインテリアなどの「空間」ばかりではなく、そこにすむ家族さらにその地域の人々と関係があって、「人間」が優先で、その人も時とともに変わって行く、まさしく「時間」を忘れてはいけません。家づくりではこのことは「人間」「時間」そして「空間」の順位となるのです。あらためて考えればこれは当たり前の事象なのかも知れません。

長年多くの家づくりのお手伝いをして来て最近のこんな現象は初めてのことで、まるで経済優先でかつての家づくりでは建てる方も古い家に住む人からも聞いたことがないのです。

2 家の空間よりも、自身や家族が安心して暮らせる家づくりが大切

わが身と家族を救う「セルフディフェンスのS、そしてわが身は自身で支えて行くことすなわち「セルフサポ-ト」のS、の2Sこそが家づくりの根幹で、その上でわが家をわが身なりに建てることではないでしょうか。

ではセルフディフェンスとは即地震耐震でセルフサポートとは即バリアフリーのことでしょうか?実はこの「時間」について、ある住宅雑誌に堺屋太一氏と高齢化を想定して「老後の暮らしはどうなる!」と題した対談を行っているのです。なんと今から38年前の昭和56年のことです。「セルフディフェンス」の発想はその時すでに提案しているのです。

都市での家づくり 掲載記事:住宅雑誌特集「老後の暮らしはどうなる!」

3 家族に合わせて考え建てることが本来の家づくり

現代は人々はこうした『2S』のような謳い文句に敏感となるのかも知れません。事業者もニーズに応えるべく住まいを研究し、売り出そうとするのも無碍なるかとも思えます。ここで改めて、家とは買うものではなく造るものであり建てるものだったはずです。家をあれこれ工夫し、悩み工面して考えさらに大工さんや職人たちに頼んで建てるところに本当の価値があり真の安心があったはずなのです。

強靭な井桁構造の木の家に楽しみの那須の家(H様邸設計:天野彰)

4 重要なのは家族の暮らしやすさ、それにプラスして耐震や省エネを意識する

今時代が進みすでに事前に出来上がった家を購入できるようになりました。販売する側もこうした売り文句が必要となるのです。が、実際にできてしまった家は買う側も専門家もなかなかその実態を確かめようもないのです。そんな中「耐震」と「バリアフリー」が余りに優先され過ぎると、本来の家族一人ひとりの生活や楽しみなどが二の次三の次となり、住む側も今こうした家が安心の家と思ってしまいます。このことはあの「高気密高断熱」大流行りのころの家と同じように肝心の本来の四季の自然の感覚を忘れ常に冷暖房に頼る暮らしとなったことが思い出されます。住まいは自分たちの生活や暮らしを最優先に考え、その上でこうした耐震やバリアフリーなどに惑わされることなくそれらを参考にして生かして、わが「老後の生活」をイメージして省エネや健康などを幅広く考えることなのです。今住んでいる家のリフォームや補強にも共通することなのです。

四季をイメージした可変の住まい方(画:天野彰)

しかし住まいを耐震や強度のことばかりを考えることは、即地震がセルフディフェンスのことでしょうか?

5 家の強度も大事だが、その家を建てるそもそもの地盤にも注目する

最近震度7が何回来ようともこんなに耐えられる家とか免震ゴムで浮かせ、ダンパーによって揺れを抑え制震させる家などが持てはやされているようです。が、家の強度や耐久性、部材の一つ一つにばかり関心が行って、肝心の家づくりの在り方や住まい方その経年化その時の有効な避難方法などがおざなりになってしまいます。確かに家の強度も重要ですが、その家が建つ場所や地域地盤などが重要です。地域の地形や付近の川や海、山のありようなどが重要で、最近多く発生する突然の土砂崩れや土石流、地盤ごと流される山崩れ、地震によっては地盤沈下や液状化、そしてあの恐ろしい沿岸地震の津波や河川への遡上による氾濫も起こります。

特に最近とみに多い温暖化による異常気象による集中豪雨や線状豪雨など、どこにいても突然河川の決壊や氾濫など起こります。また密集した地区では火災の発生や延焼も心配です。

イラスト:地形によって家の揺れ方壊れ方が変わる(画:天野彰)

6 日頃から安全な逃げ道を確保し「減災」を意識する

そこで改めて今の家の周辺を見直しその家の場所が高台であるかあるいは谷場なのか付近に危険そうな川や海などがあるか?ハザードマップなどで調べ、近所の古い不動産屋さんでどのような地盤の土地であったかなどを探ります。そうしてその危険度を知ってすべてに対処する前に、まずはいざと云う時に逃げやすいように非常持ち出しをまとめ、逃げ道を塞がれないように家具などの配置を直し、さらにバールや懐中電灯などを随所に置くなどの工夫が必要です。防災のコラムでもお話しましたが真の防災とは堅固な街づくりよりもまずは安全に避難できるルートをいくつか確保し、さらに家族全員で通信情報を持つことです。

災害は明日来るかも知れません。まずは何よりも「減災」を考えることが重要で、ハードよりもこうしたソフトウエアこそが重要ではないでしょうか。その上でちょっとしたつっかい棒や方杖などの補強で家を救い、あるいは避難の支障にならずに安全に逃げ切れた例は多いのです。

これこそが真の命を守るセルフディフェンスすなわち減災思考ではないのでしょうか。

イラスト:阪神淡路地震例 古い家を古電柱二、三本で助かった家(画:天野彰)

イラスト:リフォームの際に外部から通し柱で補強する(画:天野彰)
イラスト:リフォームの際に外部から通し柱で補強する(画:天野彰)

7 機能面以外にも生活そのものを快適にする家づくりが重要

多くの家づくりのお手伝いをして思うのは関心事が子育てのことやインテリアなどキッチン周りのことで、この若い家族もいずれその子どもたちはあっという間に成長し出て行き出て行きその後のことは余り考えていないようです。中年の世帯にしてもやはり今が中心で後々のことは余り考えていないのか、あるいは考えたくもないのかも知れません。しかし誰にもやがて確実にやってくるのが老いの生活です。その老いの生活とは一体どう言うことでしょう?まずは文字通り“老いて”足腰が弱くなり体全体も脆弱となり、ちょっとした段差につまづいたり、転んだりときには思いがけない所から落ちたりもします。視覚や聴覚、嗅覚までもが弱まって火傷したり、火災ともなりかねないのです。しかもそんな災禍から逃げだすことも困難となりやすいのです。

バリアフリーが問われるのですが、実は本当に重要なのは日常の生活そのものです。長寿時代の老後生活はあまりにも長いのです。言葉では健康長寿をと言われますが、そのためにはいろいろな要素が存在します。

まずは住まいですが、バリフリー意外に防火耐火が望まれその構成材料の素材や肌触りの質感・照明の配置バランスやそのスイッチにも細かい配慮が必要となり、特に災害時や防犯緊急の為のセキュリティシステムも大切となります。そのための経済が重要となるのです。老後の長い生活、さらには社会保障の危ういこれからを自らがいかに補填するかが家づくりやリフォームの際に必要となるのです。そこにシフトしてしかも寂しくなくかつ愉しい家づくりこそが理想なのです。かえって家づくりが慎重になりすぎて卑屈になってしまいそうですがさにあらず、今ここでわが家をじっと見つめそこにわが老いた姿、その生活をちょっと想像するだけでいいのです。擦ると我が家の持つポテンシャル夫婦二人の実績や今日までの手習いや趣味さらにはお手のものがありそれを糧に生きて行くなどが見えてくるものです

とは言えそれを元気で若い建て主に提示するのも困難でなかなか言いづらいものですが、あえてそこに拘って、嫌われながらも愉しい家を多く手掛けてきました。その中には子どもたちが出て行ったあとのプランを読み込んだり、夫婦が別々に寝ずにいざとなった時に異変を感じられる、同じ寝室ながら別々の二つの寝室そう、「夫/婦寝室」にリフォームするなどがあるのです。

「夫/婦寝室」のプラン例(画:天野彰)

照明が多すぎると言われた多機能照明(イラスト)や当時は高目だった自然素材などにもこだわったのです。

ON/OFF自在で演出、快適、省エネの多すぎる照明(画:天野彰)

8 老いても住みやすい家は1階で暮らせしを完結できる家

東日本のあの大津波からもはや8年が経ちます。しかし未だ多くの人が避難所暮らしを強いられ原発周辺ではなおも帰還解除もできていないところも多く、のみならず突然盛土された高台状の大平原はまるで砂漠のような体をなし売店のみが空しく建って、そこには未だ人が住まう街の界隈性もありません。そればかりか肝心の漁業や農業従事者は巨大な防波堤に阻まれそのやる気を戻せないでいるとも言う。

盛土による砂漠のような高台果たして人が住むかと売店(写真:天野彰)
盛土による砂漠のような高台果たして人が住むか?と売店(写真:天野彰)

老いると2階・3階に暮らすことすら億劫になる

改めて海岸線が多いわが国の湾岸での住まい方や街の形を根底から考えるときが来て、そこに住む高齢者の人々の命をいかに守るかが問われる時代となったのです。確かにあの津波で多くのお年寄りが亡くなり、また助けようとした家族なども多くの人が波に呑まれたと言う悲しい被災例が浮上しているのです。老いて我々はどこに住むか日常の生活をどう過ごすのか?生まれ育った故郷でいかに幸せに天寿を全うするか?

このことは湾岸のみならず誰もが平地で育ちその生活しか知らないお年寄りが突然高層のアパートやタワーマンションに住むと言う現実です。すべてが都市の合理的な原理と思しきことが、実際の老いの生活ではそうでなくエレベーターでわが家に帰った老人はなかなか“下界”に降りて来ないとも言う。甚だしきは週に一、二度しか降りて来ず、結果その消息さえも認知されない状態になるとも言うのです。階段ならいざ知らず、たった23階のエレベーターによる垂直移動でさえもかくも大きな障害となるものなのでしょうか?確かに私がお手伝いした二世帯住宅でもエレベーターがあるとは言え23階に住む老人がなかなか外に出なくなると言う不思議な現象に驚き、老いたら極力一階に住むことを勧めたり、あるいは高齢となったらその一階に住めるような設計にしているのです。

9 老いても自立して暮らす家とサポートできる環境づくりが課題

そこで高齢者は普段できるだけ“地べた”に住むようにし、若い人たちが高層階に住んで。津波や水害時はその最短にある高台や安全な直上階に移る…。あの災害直後、NHKTV「明日へ…」の番組にてそうした施設提案。船や、中国は永定の「客家(はっか)」のような砦を街のあちこちに築き、いざとなったらまるでノアの箱舟に逃げるようなコロニー(イラスト:写真)などを提案したこともあるのです。

「客家」のようにいざとなったら駆け込めるコローニー(画:天野彰)

永定「客家」土楼内部屋根は豚小屋など備蓄集合住宅(写真:天野彰)

これなら今の地盤や海岸線をそのままに復興し、盛土の高台や巨大な防潮堤などを構築するよりもはるかに安価で、さらに街の景観や農地や漁港など元の界隈性(かいわいせい)を失うこともないと考えたのです。
当たり前の生活をいかに守り、持続させるか?と言う提案だったのですが。放送があの大災害の直後でもあり、そうそう復興の提案など受け入れられようもなかったのかも知れません。しかしこのことこそが私が言う街も家もセルフサポートの考えだったのです。

10 まずは自力で動けるようなシンプルな間取りの家を目指すこと

「減災」が今からできる最低限のこと

実は「2Sハウス」老いていかに自立できるか?などと言う私自身がその自信がないのです。果たしてどんな老いもいつどんな形で現れるかも知れないからです。突然体に異常をきたし不自由になるかも知れないし、あるいは認知症になるかも知れないからです。しかもそのとき家族がどんな状況であるのか長生きして経済がどうなるかが分からないからです。このことはあの防災にもよく似ているのです。いつどんな形で災害に苛まれるかが分からないことです。だからこそすべてに万全でなくともともかくわが身わが家族を守ることが出来る最低限の術を今準備するのです。

シンプルな間取りと必要最小限の設備から始め、自ら老いを促進しない工夫が重要

老いも同じで老いてあり得る状態を想像し、きわめてシンプルな間取りと必要最小限の設備、最少のエネルギーで済む家を用意することがその第一です。その意味で段差を極力なくし、その通り幅もできるだけ広く、自立しながらも人に支えられる空間にもする必要があります。しかもそれはむやみに広いのではなくトイレや飲み水など一人で手が届く位置に配置し、這ってでも腰をずらしてでも一人で出来るようにし。もし認知症となっても倒れたり徘徊しても自身をガードできるコルク素材やラバーなど柔軟素材を多用し、倒れない造り付けの家具や引き戸、低い取手や手すり、スイッチやボタンなどできる限りのITセンサーの恩恵を徐々に随時増やし、セキュリィティーシステムとの連携をその状況毎に契約更新するなどです。これらも最初からすべて用意することではなく、間取りや素材、ドア、家具などはリフォームの際行うとして、保安設備は配線などの準備程度に留めこれらも徐々に更新するなど見守り契約をし、自らも老いを促進しないことも重要なのです。

私が言う、老いの生活はバリアフリーとリハビリも同時に必要なことなのです。その1つが手つきトイレをどの家にも提案実践していることです。老いて握力を失って手すりを握ることが困難でも手をついて腰をずらして便座に移動するのです。

手つきトイレ設計(画:天野彰)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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