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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 愉しい家 狭くても楽しい家?“狭楽しく住む”とは

1 昔に学ぶ活き活き暮らす「愉しい」住まい

新たな元号が決まりました。思いもかけず「令和」とは?これからの若い家族はこの二文字にどう思いを馳せるのか?何はともあれ御存命中に新たな元号をお聴きになられることも、こぞって新元号の書き換え準備ができるわれわれもいざ成ってみれば複雑な思いで、ご崩御によって突然の改元でバブルの中で始まったあの「平成」の時に比べてなんとなく諦めも覚悟もできないでいるのは私だけなのでしょうか?

今日のようにこうも情報が多くしかも早く浴びせ掛けられるような時代になると頭も心もついて行けなくなり、物事を想像したり考える楽しみもなくなって、あの高輪ゲートウエイで論議されたように、気が付けば誰もがただ愚痴を言っているだけの評論家になり下がっていることが情けなくも悲しいものです。その生活を観れば与えられたただ「答え」の中に住み続けそしてそれを“是”として生きて行くことしかできない今の時代を空しくも寂しく思うのです。戦後間もない昭和の時代になけなしの金で狭い家の中でどう生きて行くか子どもたちをどう育てていくか?苦しみもがきながらもなんとか工面工夫して「夢のある家」を求めていたときの方がはるかに豊かで生き生きとしていたような気がするのです。

平成の時代になって、なぜか私たちの生活も住まいも面白みも楽しみもない“防御”“防護”の為の高気密と高耐震一辺倒の家となってしまっているようにも思えるのです。度重なる大震災や集中豪雨、国内外の各地で起こるテロやサリンなどの大事件などに委縮し、加えて長い老後に向けて先の見えない経済状況からなのでしょう。しかし誰にとってもいつでも生活は営々と続き、それがかけがえのない人生です。住まいも愉しいものでなければなりません。かつてのように豪華でなくても、広くなくとも、もう一度、狭くても楽しい住まい、狭楽しい住まいにするのです。今こそもっと愉しい住まいにしたいものです。

2 子供の巣立った無駄に広い家は「減築」してあえて狭くする

そこで改めて今の住まいを観てみましょう。既に子どもたちは育って出て行っていて、その子どもたちが帰ってくることを待つ生活をやめて、まず自分の生活を最優先してみましょう。今の家が無駄に広い家か。不用なものばかりに囲まれているのか考えてみればこんな無駄な家を何のために耐震強化し、高気密高断熱にするのかバカバカしくなってきます。

狭楽しい家づくりの前に無駄に広い家を狭くするのです。それは断捨離ではなく、必要最小限のスペースを獲得するのです。少ないスペースならどれほど贅沢しても豪華で強靭でしかも省エネで安心で長生きできる住処となるのです。

イラスト:広くするために減らす「減築」イメージ(画:天野彰)

3 遠さより近さと利便性を選ぶなら、狭く・高い家にならざるを得ない

30数年前に拙著「狭楽しく住む法」を著した時は、やっとの思いで手に入れた中古の2LDKのあまりに狭くしかも住みにくくあの狭苦しさから逃れるために苦し紛れに書き綴ったものです。

狭い家の価値を考えたのですが、なけなしの高額で買い求めた家の価値とは一体何だったのだろうと言うことです。そしてなるほど都会の土地は高い!当たり前のことですがなぜだろう?すると自分はなぜこの家に住みたいのか?なぜここでなければならないのかと。折しも第二子が生まれた時で、仕事も多く忙しい。とても郊外のそのまた遠くに住めず、だからと言ってここでさらに広い家も難しい。郊外の遠くに住めば通勤も通学も長く時間がかかりそのために家族や人との付き合いが少なくなり“社会が狭く”なると。広い家を求めれば今度は家計が苦しくなり“経済が狭く”なる…。なるほど都市の生活のメリットとは仕事が多く近くにあり何事も便利であること、それがために多くの人が集まって高額になる。

結局、家の狭さとは遠い。高い。の三竦みの三つ巴でどうにもならない現実だったのです。こんな当たり前のことが、いままで当然のことのように高額な家賃を払って来た自分が、なんといざ自分の家を買った途端に改めてその苦しさを実感したと言うことです。

4 型におさまったLDKから融通の利く自由な間取りが必要

そこで、この狭苦しい“苦”とは何かを根本から考えたのです。すると、あまりに物が多く散らばって家具も多い間取りが2LDKだの3DKなどと、きっちり決められ融通が利かずしかも動きにくい。おまけに天井も低く狭苦しいの「苦」のオンパレードだったのです。わが家の狭苦しい2LDKのリフォームを真剣に考えることになりそれを実践し、LDKなどと言うあいまいなこと?

大きなKに過ぎないLDKをL+DKにするスケッチとL+DKの実際の収納間仕切り(画:天野彰)

実は大きな “K(キッチン一体型居室)”に過ぎないことの改善から2LDKの2とはどう言う間取り、などを見直し(子ども部屋プラン)、その体験をもとに先の「狭楽しく住む法」の拙著となったのです。

子ども部屋を縮めたり、透明間仕切りにするスケッチ(画:天野彰)

5 ワンルームとして空間をとらえ、暮らし方を考える

狭い住まいをいかに狭楽しくするか?まずはこの特大連休に家の中に溢れるあまりにも多い物をどうするかを考えたいものです。がその前に、住まいそのもののコスト、改めて考えてみたいものです。

私はかつてなけなしのお金で購入した2LDKのマンションの価額に驚き都市での住まい方を考えたのです。すると物の為に一体いくらの費用を払っているのかを調べ、なんと押入れ一個の値段が100万以上であることに驚いたのです。そう畳一枚のスペースです。2LDKすなわち50平方メートル約15坪ほどを畳にすると30枚。これがあの中古のマンションが約3,000万円ほど、つまり畳一枚のスペースが100万円!これが都心の新築マンションならその倍ほど、なんと押入れ一個分の値段が200万以上!これがあらゆる収納家具や家電などの置き場が合計5畳以上の為に1,000万円以上を誰もが支払っているのです。1つの子ども部屋6畳に1,200万円以上も払っていることになるのです!今日の都心のタワーマンションや一戸建てなどではその倍以上が支払われていることになるのです。今日、物の片づけ方や断捨離法などが叫ばれているのは無碍なることかも知れません。

6 空間を広く魅せるコツは、物の配置と床を見せる工夫

そこで、室内に数多く散らばっている家電や収納家具が多く!これらを天井まできっちりと積み上げるのです。角が出っ張っているものはその端を切って揃え日曜大工で頑丈な箱をつくりそれらをきっちりと嵌め込むのです。一体感を出すために同一色で塗装をし、これで室内を観てみましょう。物や家具がなくなりうんと広くなり、ソファーやテーブルなどは部屋の隅に追いやり極力床を見せるのです。

イラスト:空間の立体家具を積み上げるとこんなに広く(画:天野彰)

これだけで同じ部屋が倍ほどに広くなり行動もスムースとなります。

7 可動式の間仕切りで自由自在に間取りを変える

空間の立体利用で、間仕切りを取っ払って厚さ10センチ~15センチほどの本棚にすると、なんと単行本なら3LDKすべての壁収納で5,000冊も収まります。小さな本屋さんです。

イラスト:3LDKのすべての間仕切り壁の中に5,000冊の本?(画:天野彰)

この要領で先の子どもも積み上げてしまうのです。

イラスト:1段ベッドで6畳を立体的に2つの子供部屋へ区切る(画:天野彰)
2段ベッドで6畳を立体的に2つの子供部屋へ区切る(画:天野彰)

こうした空間の立体利用に加え、間取りが2LDKだの3DKなど、きっちり決められ融通が利かずしかも動きにくく、狭苦しいのです。そこでこれらを仕切る壁をすべて取り去りワンルームとし、柔軟に可動間仕切りで仕切るのです。

8 狭い空間は可動間仕切りを活用して「可変住空間」

この連休にあまりにも物が多く狭苦しい住まいをどうするか都市の家での暮らし方を考えた人は多いと思います。改めて物を思い切って処分する勇断をし、立体的に物を積み上げる収納を考え、その計画をされたことでしょう。しかし、もしそのことを実行するなら、その前にすべての壁を取っ払い無くしてみることまで考えてみたらどうでしょう。もちろん家の構造によっては二階や屋根を支えている壁や柱もあります。特に壁は「耐震壁」として家の揺れを防いだり持たせる重要な役目もあります。特に木造などでは壁の中に筋交いなどもあり、下手に壊すと重大な問題も起こります。2×4(ツーバイフオーやパネル工法などのむやみに壁を動かせない家もあります。マンションなどの集合住宅の場合は柱だけではなく各階を繋ぐ配管や配線もあり勝手に壊すことはできませんが、これらも管理人や、専門家と相談すれば内装の間仕切りなどのほとんどは取り外せます。

イラスト:可動間仕切りの例(画:天野彰)

開閉間仕切りで空間の縮小拡大例(設計:天野彰)

こうして壁、すなわち間仕切りを外してみるとびっくりするほど広々とするものです。なるほどワンルームは同じ面積の2LDKに比べ驚くほど広く感じます。しかしこれではプライバシーが保てません。生活行動や家族の要望によっては目隠ししたり囲ったりする必要もあります。この愉しい家の冒頭でもお話ししたように、まずは個室化した子ども部屋の壁を取り去り、最小限にコンパクトにし、そこをカーテンやガラス戸で仕切る提案をしました。子ども部屋がまるでリビングにむき出しになるような感じもしますが、実際はカーテンで視界や光線を遮断し、ガラス戸をきっちり閉めると音や空気も遮断できます。子どもが通学や遊びに出かけている間などは開放すると家中に風も通り、子ども部屋の前のベランダから光も景色も入り明るく広々とします。何よりも今まで狭かった皆の団らんの間のリビングが広々とするのです。

9 壁を収納にすることで更に利便性を高める

これこそが私が提唱する、動く“壁”すなわち可動間仕切りなのです。この開閉によって間仕切りは生活や気分によって自在に可変できるのです。実際子どもはコンパクトになった部屋がまるで飛行機の操縦席?だと愉しく勉強にも集中できると言うのです。しかも当初きっちり閉めていたこの引き戸やカーテンも次第に閉めないようになり、寝る時以外は開放して勉強するようにもなると言うのです。これは受験時や将来の職場でも手元に集中することができてとてもいいことだとも言われるのです。何より家族が常に一緒に居る時間が増えるのです。

こうして壁が“動く”ことによって同じ住まいが何通りもの間取りになるのです。コンパクトな子ども部屋のように空間が広くなったり、閉じられたり、可変住空間となるのです。これこそわが国の伝統的な空間の設計手法であるユニバーサルスペースなのです。
そこでこの際、さらにもう一頑張り、前回のお話の床から天井までの立体収納を間仕切りの壁兼用にするのです。つまりその収納にコロ、戸車のようなキャスターを付けて可動にするなどです。なんと、その扉自体に物も収まり、可変の大きな空間までも得られるのです。

イラスト:動く収納家具でLDKがL+DKとなる(画:天野彰)
動く収納家具でLDKがL+DKとなる(画:天野彰)

家の中のすべての間仕切りを取って、その収納自体が動いて新たな間取りをつくる今まで壁であった空間を床から天井までの収納にして無駄なスペースをまったく無くす!高額な都市の住まいを無駄なく有効に住むばかりではなく、しかもその時々によって間取りが変わり空間が何通りにも使えるのです。空間を立体的に使うのみならず多重に使うのです。これで家自体を大きくすることなく悠々と住むことができるのです。何よりもまずすべての壁を取り払って見てみるとなんと広いことでしょう。マンションの柱梁だけのラーメン構造とはまさしく骨だけのスケルトンになるのです。このスケルトンリフォームは自由なプランニングをするだけではなく可動式の壁、すなわち建具を多用し、その建具自体を収納にして、しかもそれに丈夫なゴムタイヤのキャスターを付け、その家具が転ばないよう天井にもコロを付けて動かせばこれらの収納はすべて部屋の隅に追いやれるのです。

今までの2、3LDKが巨大な空間になるのです。もちろんすべてが動かずとも空間の大小や、本体の壁沿いをすべて収納にして集約するなどによって大きなワンルームとなるのです。

イラスト:2LDKを自由な間取りでワンルームのように変更(画:天野彰)

その真ん中に四方がベッドやテーブルなどの生活機能を持った回転し動く家具にするとイラストのような変幻自在の間取りができるのです。

イラスト:2LDKに生活維持装置で自由自在な間取りと全てしまえる収納ロボット(画:天野彰)

生命維持装置ならぬ「“生活”維持装置」これが自由にくるくると動けばもはや収納ロボットなのです。

イラスト:書斎親父デスク・ママデスク(画:天野彰)

ときには壁から二段ベッドが出て来て客間にも変貌するのです。こうして実際のリフォームで造ってもいるのです。

壁から出てくる客間(画:天野彰)
壁から出てくる客間?(画:天野彰)

10 さり気なく広さを演出するポイントは透かしと照明

家の間仕切りを取って広く、立体的にその壁や収納自体を動かして同じ空間を多重に使い、壁から二段ベッドを出して客間に扉を開いて机を出して書斎や家事室にして、間取り変幻自在に自由につくる!今の住まいをもっと愉しく演出して遊ぶことです。狭い部屋なら迫る壁を透かして“透明”に梁が目障りであればそれも透明にし、実際にはない部屋を壁の向こう側につくるのです。

自身が感じない高さの天井の近くの壁や、部屋の隅の壁、目障りな柱や梁そのものにも鏡を張って壁や天井を映り込ませて空間を抜く。

部屋の隅や梁を鏡で透明に?(画:天野彰)

私の設計ではよくこの“透かし”の手法をよくするのです。視覚や虚像までも使って住む人、そう自身を“騙す”のです。実際に一戸建てなら、二階までの吹き抜けや、中庭などで空間を抜いて広がりを持たせます。これは同じ面積の家に比べ相当広さを感じます。間取り自体を工夫をして、部屋の角から対角の部屋の角へと動線や視線を展開して行くのです対角線は実際の部屋の2辺の長さの√倍の長さとなりますからその分広々と感じるのです。私はこれをダイアゴナル設計手法と称して多用しているのです。

ダイアゴナルプラン(画:天野彰)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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