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建築家 天野 彰 秘伝!収納にも間取りと動線があるのです

1 秘伝!収納にも間取りと動線があるのです

住まいの建て替えやリフォームの最大の原因とは一体なんだとお思いですか?それも奥様方のです。そう、子ども部屋、子どもにせがまれてもう一部屋多い一回り大きい家にしたい。あるいはシステムキッチンを・・・確かにこれも大きな理由のひとつですが・・・、なんとしても最大の原因は・・・収納です。

収納がない!収納が絶対的に足りないのです!ちょっと大げさですが、この収納が足りないと部屋が片付かないばかりか、奥さんはなぜかイライラとして、毎日の生活そのものがいやになってしまうのです。それも恐ろしいことにその収納が原因であることに気が付かないまま、なぜか憂うつになっている奥さんも多いのです。

収納と言えばわが国ではもともと押し入れが主流でした。あの奥行きの深い押し入れは布団を押し入れるのにはちょうど良いサイズですが、そこに小物や衣類などを入れようとすると大変です。奥に押し込んだものは物の陰となって死蔵されてしまうのです。そればかりか、その上からさらにぎゅっとものを押入れればいくらでも「押入れる」ことができさらに煩雑となるのです。

「押し入れ」の本当の意味は、布団を「えいやっ!」と投げ入れるように放りこみ「押入れる」ことなのです。これは不便と中段を下げ、その上にもう一段棚をつくり、下段にマットレス、中段に敷布団、さらに上段に掛け布団と、3段にした建て主がいます。
その結果、マットレスはともかく、重い敷布団は狭い棚に収まりようがなく、何かの棒で突っついて押し込むようなこととなり、布団はビリビリに破れ、上段の掛け布団も奥さんの背たけでは入れられずに大失敗! しかも、その上段でおでこを傷つけた奥さんは怒り心頭。押し入れは布団を押し込むどころか、“投げ入れる”ものだったのです。

最近は布団を出し入れすることもなく、中途半端な奥行きの押し入れを、クロゼットにしたり、その奥行きを利用した奥行の深い引き出しにし、前後に夏と冬の衣服を入れたりするなど、かなりの容量が入りようにしています。

2 わが国の収納の原点は「蔵」

押入れの有効利用の断面
押入れの有効利用の断面(画:天野彰 )

イラストのように中段を取り去り、奥の20~30センチほどを棚とし、その手前にハンガーパイプを取り付けて奥行き50~60センチのクロゼットとすると、奥の棚にはハンドバッグや帽子、箱に入った履物などを入れ、洋服を左右に広げて出し入れできます。さらに下部は奥行きの深さを利用した前後2升(ます)の引き出しとし、玄関なら靴を前後に入れ、季節の物は前後に入れ、季節毎に引き出しをひっくり返して使うのです。使いにくい上の天袋ですが、普段出し入れしないスーツケースや絵画などを入れ、隣の部屋から使えるようであれば真ん中を仕切って、半分ずつの収納にしてもいいのです。

角館の角館武家屋敷の蔵
角館の角館武家屋敷の蔵(写真:天野彰)

わが国の収納の原点は「蔵」で、この押し入れはほんの当座の寝具入れで、季節ごと行事ごとに防火性能の高い蔵に収納し、必要なときに取り出し、またしまう。まさに生活の合理的なユーティリティーだったのです。この“ユーティリティー”を「家事室」と言うようですが、もともとはUtility roomで、ま、「何でも部屋」といったような意味です。むしろわが国では、家の中の納戸や予備室のような意味です。もちろん家事全般も行われる部屋となったのです。蔵といえば秋田県は角館の武家屋敷にはこうした蔵が上手に配置され、石黒家や青柳家など、蔵に物をきっちり収蔵し、室内はすっきりと片付けられているのです。

3 “収めて出せる”「収出」が理想

角館商家安藤家のれんがの蔵
角館商家安藤家のれんがの蔵(写真:天野彰)

安藤家のような商家では蔵座敷もあり、物と主人も保管される例もあります。いずれも土壁と漆喰で固められた蔵の屋根は方杖でを浮かし上げ、その通気で湿気対策をし、いざとなれば屋敷とその屋根は燃えても家財は助かるという考えなのです。

こうした住まい方から見ても収納は多ければ多いほどよいと言うものでもなさそうなのです。まさに適材適所、「おーい紙!」「おーいパンツ」などと言わないで済むよう、欲しいところにある収納がよいのです。こうしてみますと本当に収納がうまく配置されている家は少ないのです。ただ大きな納戸やクローゼットをつくってもその面積の割りに片付かなかったり、床から天井までをすべて収納にしても身長より上はガラガラで結局物に溢れるのです。

収納はこうした手もとの物さらにはそのストック、毎日使う物たまに使うものと遠ざけて配置するのです。物を雑多に押し込むだけではなく,欲しいときにすぐ出る!“収めて納める”「収納」ではなく、“収めて出せる”「収出」が理想なのです。

収納の頻度とその配置プラン
収納の頻度とその配置プラン(画:天野彰 )

収納は生活の「衣」・「食」・「住」・「遊」・「育」の用品と道具が、その間取りに合わせて欲しいときに、欲しいところに配置されていることが大切です。こうして今の家の「収納の間取り」を見てみるのです。その使用頻度と使用場所に合わせて収納がうまく自分を家族を包み込むように配置されているかどうかが大切です。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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