住宅関連記事・ノウハウ
秋の夜長を楽しむ 愛を育む照明
1 秋の夜長を楽しむ 愛を育む照明
大震災以来もあちこちで地震の揺れが人々を驚かしています。阪神淡路大地震でのあの直下型の揺れや、中越地震などの恐怖もいまだ冷めやらぬ間に、今回の大震災では経験したこともないような大きな揺れに増して凄惨な津波の被害、さらには原発事故と三重苦となり、電気や電燈さらには電話のありがたさを東日本に留まらず全国の人が改めて知ったのです。
そうした私たちの快適な生活はあの発明王トーマス・アルバ・エジソンのお陰と言っても過言ではないのです。電話や電池、そして蓄音機や映写機へと今ある暮らしの快適性やエンターテインメントの元はすべてエジソンが発明したとも言えるのです。その中でも特に電燈の発明は、たいまつ、ろうそく、カンテラ、さらにガス燈などと火を焚いて闇を照らしていた生活が、突如明るい夜となって、人類の生活は飛躍的に変わったのです。
その明るい安定した光を放つ電灯を完成させたのが1879年(明治12年)の10月21日。今から132年前の、まさしく「灯火親しむ候」のことでした。しかもその大発明の電燈が、奇しくも日本産の竹を焼いて作った炭素繊維を光源としたことが成功のきっかけとなったと言うのは案外知られていない事実なのです。この人類にとっての大発明にちなんで、日本電気協会と日本電球工業会が「あかりの日」を制定(1981年)したのです。
しかし夜があまり明る過ぎるのも風情がないものです。夜は暗いことが当たり前で欧米人は今でも煌々と電燈を着けず、ホテルなどでは日本人にとっては暗く新聞も読めず暮らしにくささえ感じるのです。人類は今さら古代の暗い夜の生活に逆戻りはできませんが、時には電灯を消してろうそくの灯りや月夜のあかりで夜の“暗さを楽しむ”など、普段にはない幻想的な生活体験をすることも必要です。
2 同じ空間が七変化する「あかり」を演出
そこで夜を単に明るくするだけではなく「あかり」を演出して楽しむことが大切です。同じ部屋にあえて蛍光灯やLEDさらには白熱灯の器具を配置し、回路も別にして、スイッチを多くし、調光機で明暗調光するばかりでなく照明の色調や質を変えるなどすると同じ空間が七変化するのです。全開では掃除や物を探すときに明るく、白熱灯で奥行きの深い温かい雰囲気としたり、さらに調光で光を絞って落ち着いた雰囲気を演出したりカラフルなLEDで華やいだ空間にもできます。
効果的な照明の配置(天野彰)
さらに暗くしてスクリーンを降ろしてTVやビデオを映すと、わが家がたちまち映画館に変身するのです。
3 照明器具の配置で贅沢な夜のシーンを演出
照明器具の配置も生活行動や展示物の照明と適宜使い分けるとこれも贅沢な夜のシーンを醸し出すことが可能となります。さらに安い裸の電球や薄いLEDの基盤を使って光源を随所に組み込んで間接光の建築照明を施すと安全で楽しい階段照明となったり(写真1)、床下の履物が照らされ選択が容易になったり(写真2)など生活にメリハリができるのです。
川崎K邸『階段板に組み込まれたLED照明で安全で明るい階段』(写真天野彰)
川崎K邸『床下のLEDで履物を照らす』(写真天野彰)
特に不幸にして長期の入院や療養などした場合の病院や老人施設での部屋の天井の間接照明を時間差で演出するだけで患者の目に優しくしかも楽しみとなりさらに心も活性化するのです。
町田ミオファミリア筆者設計『療養室の目に優しい間接照明』(写真天野彰)
4 あかりと暗さは心の安らぎと無限の空間に
こうして舞台の演出のようなライティングのテクニックによって家族の表情も豊かになり、奥さまも優しく美しくなるのです。今までの室内がドラマチックになり、そればかりか夫婦や家族のまとまりが良くなります。まさしく、あかりは今も昔も囲炉裏や暖炉で家族の団らんの中心なのです。秋の夜長、あかりと暗さは心の安らぎであるばかりか、室内の床・壁・天井を超越した無限の空間ともなるのです。
筆者山荘『療養室の目に優しい間接照明』(写真天野彰)
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