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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 キッチンを楽しもう!ちょっとの増築で広くするコツ

1 キッチンを楽しむ!

毎年新しい年を迎えてうれしいことは、昨年のいやなことがリセットされたり、仕事が途中であってもとりあえずの区切りとなるなど、よき年に期待できそうな気分になれることです。新年が始まってなんとなくだれて来たころ今度は節分があります。まさに立春を前にしての季節の節目で改めて新しい春の幕開けと言うことでしょう。

「鬼は~外!福は~内!」などと家族全員で大きな声を張り上げて息を吐き、本当に鬼か魔物がいるかのような気分となって見えない敵?に戦慄を持って豆をぶつけて追い出すような気分となるのです。面白いことにほとんどの人がなぜかリビングダイニングのそれもキッチンの奥から玄関に向けて鬼を追い出そうとするのです。そして福はまさに玄関から「福は内!」と迎え入れようとするのです。なるほど、昔から家の縁起は空気がよどみやすい「台所」と外界に広がる「玄関」がもっとも重要な部分であることが改めて分かるのです。これは家相でも言えることで、鬼門をはじめ凶方となるのはこの台所と玄関に多いことからもいかに重要なことかがよく分かります。そのためにもこの台所と玄関は住まいの中で方角の良いところを選ぶのです。

こうした節分や彼岸などの季節感さらに日常行事の中からも多くの生活の中に住まいの間取りに関する縁起が多いのです。そしてあまり気にしない人も何か事件や災いが起こると急に弱気となって突如方位や家相を気にするのです。そして災いを除き厄を払うとたちまち元気になりその表情はもとより健康まで取り戻すから不思議です。

家相盤
家相盤(画:天野彰)

2 家族の団らんはやはり鍋が一番?!「現代版炉端」~キッチンを楽しむ

キッチンのリフォームについてはなんどもお話ししていると思いますが、このキッチンがなんと家族の運命を左右し、世界へ通じる架け橋となっているのです。重要な役目があろうなどとは今まで夢にも考えても居なかったことです。

ご存知でしょうか、古来わが国の住まいは囲炉裏などを囲み、炉辺や火鉢を中心に輪になって食事を頂いたのです。これすなわち団らんとも言うのですが、そのほとんどはDKが中心でそこにドラマがあったのです。今、多機能なキッチンも多くなりました。しかしよく見るとキッチンの壁に向かって料理をしていては子どもたちに料理やマナーを教えることができません。しかも求心力のないキッチンは奥さま専用となってしまいます。

かと言ってまるでカウンターのような対面式キッチンは、作る人食べる人のラーメン屋さんのようにもなりかねません。

そこでまず家族の中心である炉辺を現代的にアレンジ。キッチンから続いた炉辺テーブルを設けたり、食卓テーブルがキャフェテリアのように伸びてまるでジャンボテーブルのようになるのです。ここで食後もそのまま家族全員がそれぞれ勝手なことをするのです。

リビングに家族が集まるジャンボテーブル、バーベキュー暖炉
ジャンボテーブル(画:天野彰)/写真:バーベキュー暖炉(小手川邸:筆者設計)

一緒につくる「テーブルキッチン」~キッチンを楽しむ

食卓テーブルにキッチンを組み込み“テーブルキッチン”をダイニングルームの真ん中にでんと据えるのです!するとどうでしょう!今まで見向きもしなかった夫や子どもたちが、このテーブルの可憐さ、楽しそうな会話に吸い込まれるようにやって来るのです。

DKを炉辺テーブルに
DKを炉辺テーブルに(画:天野彰)

このテーブルに組み込まれた流しやレンジで子どもたちが自然に料理をし始めるのです。近所の人も夫婦のそれぞれの友人たち、あるいは子どもの友だちなどと、落合さんの言うとおり「人を招いて食事会」をするのです。このテーブルキッチンで多くの「趣味の講習会」を開いたり、近所の「子どもを集めて塾」を行う、のです。親子のお料理教室のようなものとなり、さらに多くの料理講習会も拡大し、普段はこのテーブルキッチンで夫も子どもたちも勝手に好きなものを作ることも可能なのです。

洋式のダイニングを小上がりの畳食卓、アイランドキッチン
天野彰設計:洋式のダイニングを小上がりの畳食卓(左)、アイランドキッチン

3 開店!狭さを楽しむ「わが家のスナック」?!

住まいを愉しむコツは「街のスナック」の狭さを楽しむことです。都市の住まいは狭いのです。その1LDKや2DKなどに住むと狭いからもう何をしてもダメとばかりあきらめてしまいます。

そんな都市の狭い住まいの一番の悩みは玄関から即DKとなり、キッチンが丸見えとなるのです。これは狭さもさることながらむさ苦しく家事をする奥さんも落ち着きません。そんな事情から夫も子どもたちも同僚や友だちを連れてくることもありません。

そこで間口が一間歩かないかの狭い「街のスナック」を思い出してみましょう。玄関ドアを開けたら目の前にカウンターがあり、バックヤードにはグラスやボトルなどが綺麗にディスプレイしてあります。客もカラオケを歌ったりママさんと楽しそうに飲んでます。この「街のスナック」に比べたらわが家の1LDKや2DKの方がはるかに広いのです。このスナックを見習ってわが家の「スナック」にしてしまうのです。

 店のママさんは奥さんです。客は子どもたちでありご主人です。もちろん彼らの友だちや同僚も常連のお客さんとなります。そのためにバーの腰掛けは家族の4脚だけではなく8脚も10脚も入るだけ用意するのです。

開店!わが家のスナック計画
(左):わが家のスナック計画図(右):開店!わが家のスナック(画:天野彰)

普段はいわゆる「対面式キッチン」ですが、食卓に物を出すのも片付けるのも楽になり家族との疎外感もなくなります。カウンターの内側にはキッチンのシンクやレンジがあり、バックには食器棚と冷蔵庫を埋め込みます。客がキープするボトルこそありませんが、グラスや食器をきれいに並べます。これでカウンターの外からは内側のシンクなどが見えず、玄関からの視界もすっきり広くなります。

カウンターの外はスナックの雰囲気同様に高めの椅子となりますが、イラストのようにカウンターを延長してテーブルを取り付けて家族が取り囲めるようにすればダイニングテーブルとなり、前回キッチンでもお話しした炉端のような鍋のテーブルやステーキハウスのようにもなります。

わが家のスナックバー
わが家のスナックバー(画:天野彰)

4 「わが家のスナック」キッチンの移動は排水と換気が重要!

マンションでの「わが家のスナック」のリフォームは、まずキッチンの移動が必要ですが、それは排気と排水を注意すれば可能です。つまりレンジは換気扇の位置を注意すればダクト(煙道)を多少横引きすることで移動ができます。さらにレンジを電磁調理のIHなどにすれば湯気の排気だけで済み、大型のフードだけでもガス中毒や酸欠などの事故は避けられます。

 厄介なのはシンクの排水ですが、水が自然に流れる勾配(こうばい=傾き)が1/50以上取れる範囲、つまり50センチの距離ごとに1センチ以上の高さなら移動可能です。その移動距離に対する高さ分をキッチンの床を上げてつくることもできますが、床の段差が危険となります。キッチンの元の排水口までキッチンの下か壁の中で配管できる位置を探すことがコツです。それに合わせてガス配管や水道管も移動します。

ママさんのセリフは「いらっしゃい」ではなく「お帰りなさい」ですが、夫も子どもたちも友だちを連れて来て気軽に立ち寄りたくなるのです。こうしてわが1LDKはアットホームで魅力的なスナックに変身し、奥さんも毎日が愉しみとなり、その分若く美しく?なるのです。そうです、子育てが終わってからも家族のキッチンは、こうして“外に向かって”赤提灯か暖簾?を掛けたくなるほどでいいのです。

キッチンをカウンターで隠すT様邸、本格的なバーK様邸.jpg
右 キッチンをカウンターで隠すT様邸 左 本格的なバーK様邸(天野彰)

5 たった10センチの増築?でキッチンが広くなる?!~ちょっとの増築で広くするコツ

今の家を大きく増築するのではなくわずか10センチほどの「ちょっとの増築でうんと広くなる」と提唱しているのです。

これを今住んでいる家のキッチンを見てみましょう。柱の芯すなわち台所の幅は壁と壁の中心で1.8メートル。そこから壁の厚さを引くと実質1.7メートル。その台所の作業通路の幅は、キッチンの奥行60センチ、その後ろのバック棚の奥行き40センチほどを差し引くと、なんとその残りはわずか70センチしかありません。これは狭い!そこで夫や子どもたちが手伝おうとするとかえって邪魔となります。そこで今のキッチンの外側に多少の空地さえあればわずか10~20センチほどの“増築”をして壁を移動してシステムキッチンをそのまま外に押し出すのです。すると作業通路の幅が10~20センチ広くなり、80~90センチまで広がります。70センチがわずか80~90センチとなるだけなのですが、台所ではこのちょっとの広さが重要で、これ以上広い作業幅だとバックの棚から食器などのモノを取るのに一歩余分に歩かなければならずかえって疲れてしまうと言うのです。

6 ちょっとの増築で広くするコツ

図のようにキッチンの外側に新たな基礎をつくり、柱を立てサッシを取り付け庇までの新しい壁をつくる。その上で今までのキッチンを取り外し、壁を内側から壊して新たな給排水工事をして内装を仕上げます。後はそこに元のキッチンを戻すか、この機会にお気に入りの新しいキッチンにやりかえるのです。

わずか10~20センチの増築?で広々キッチン、10センチほどの増築?で台所収納
わずか10~20センチの増築?で広々キッチン 実例KO様邸:10センチほどの増築?で台所収納(天野彰)

このキッチンの作業性の感覚のようにちょっと動きがよくなると広く感じる部屋も多いのです。例えばあの狭いトイレやお風呂ですが、わずか10センチほど広くするか出窓を付けるだけでも、おっと!と思うほど広さを感じるのです。反対に、キッチンの作業幅同様、トイレの空間などむやみに広げてもトイレットペーパーホルダーの位置や洗浄のコントローラーなどに手が届きにくいなどかえって無駄な拡張となることも多いので注意が必要です。

出窓で広々トイレ、三角の僅かな増築で広々トイレ
出窓で広々トイレ 実例S様邸:三角の僅かな増築で広々トイレ(天野彰)

どうでしょう!わずか壁の厚み分ほどが広くなっただけなのですが見た感じも、動きもまったく変わるのです。蛇足ながら隣りの敷地との空地幅は、隣地後退規制などの条例がないところでも壁まで距離が50センチ以上と民法で定められており、隣りの家が出張って来ているなど互いの状況やその同意がない限りむやみにはできません。さらにこの僅か10センチ幅の増築であっても建物の建築面積や合計床面積が建蔽率や容積率オーバーとならないよう注意も必要です。

7 ちょっとの壁の移動か壁を取り去ると広いキッチンに~ちょっとの増築で広くするコツ

戸建てのわずか10センチほどの有効なキッチンの“ちょっとの増築”は住まいそのものが多少でも広くなるのですが、限られたマンションの区画の中ではそれはできません。そこでキッチンが接する隣のダイニングかリビングなどの壁をちょっと押して広くするのです。言わば今の間取りの中で、区画の壁を壊してそれをわずか10センチでも押して新たな間仕切りの壁をつくりその分広くするのです。すると動く作業通路そのものがちょっと広くなるだけですが広く感じるのです。

不思議なことに、その反対側のリビングやダイニングスペースなどは10センチほど狭くなってもそれほどの“狭さ”感(残念ながら“広さ”感ではありませんが・・・)は変わらないのです。

これこそ空間の広さ狭さのバランス感覚で、私はこれを“空間の相対性理論”などとアインシュタイン気取りで大げさに言っているのです。言いかえれば視覚的錯覚です。狭いトンネルや廊下を出るとあまり広くもない空間でも広く感じるあの錯覚と同じなのです。このバランス感覚は、広く贅沢な玄関ホールなどをつくると・・・せっかくの広いリビングやダイニングであっても狭く貧弱に感じてしまうからバランスが大切です。LDK全体が狭いマンションなどでは思い切って間仕切りを取ってあの「わが家のスナック」のカウンターかキャフェテリアのようにすると互いが広く感じます。これも単に広いLDKにすると区切りがなく物が散らばってかえって狭く感じます。

間仕切り移動でマンションの快適リフォーム、間仕切りを取るだけで広々キッチンI様邸
間仕切り移動でマンションの快適リフォーム 間仕切りを取るだけで広々キッチンI様邸(天野彰)

ちょっとの壁の移動は玄関も広くドアも大きく新品に?!~ちょっとの増築で広くするコツ

キッチンのちょっとの壁の移動は住まいながらではリフォームがしにくい玄関にも応用できます。玄関は壁を壊すと工事中の用心がよくありません。ましてや冬は寒くてできません。そこで、今の家の玄関の外側にキッチンの増築同様もう一つの玄関ドアの壁をつくるのです。

今の玄関を覆い被すように新たな壁をつくりそこに気に入ったドアを取り付けられるようにします。その壁の外装工事が住んだら今までの玄関ドアを外して新たなドアを取り付けます。同時に元の壁を解体し、内装の工事を初めてするのです。これでリフォーム終了です。

外部に十分なスペースがなく、旧のドアが開けられない場合はそのドアが開くように大きめのドアを選んで同じ位置ほどに枠を造れば新しい壁が近接しても中のドアの開け閉めをしながら工事をすることができます。新たなドアには鍵もかけられて用心もよく、寒さ暑さも仕切られ、虫一匹入りません。知らぬ間に玄関リフォームをしたかのように見えるのです。

玄関の居ながらリフォームプラン、居ながら玄関リフォーム実例
玄関の居ながらリフォームプラン KU様邸 居ながら玄関リフォーム(画:天野彰)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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