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建築家 天野 彰 老いの準備 老いない家とは?足腰だけじゃない老いの体験!

1 五感を楽しめる家

忙しいさ中、苦しく辛い「“老い”の体験」をしました。私の設計活動の重要なテーマでもある“老い”について、まさしく他人ごとではなく、自ら身を持って経験をしたのです。それまで毎夜遅くまで執筆や作図などをしているとやはり目がかすむようなことがありました。そんな時、これは疲れたと寝れば次の朝には回復したものでしたが・・・あるコンサートに行った時のことです。いつものようにそのホールの音響を確かめながら心地よい音の響きを聴いていたところ何か変なのです。雑音が入るというか、音が妙に反響したりこもったりするのです。ところがしばらくすると今度は耳鳴りがしだし、そのことを意識すると今度はめまいさえ起こったのです。

これは大変と次の日耳鼻科の医院などでいろいろ調べたのですが鼓膜も三半規管(さんはんきかん)、さらに脳にも異常がないと言われたのです。しかしもっとショックだったのはその担当医師に「老化でしょ?」と言われたのです。まさか!とんでもない!こんな楽しみのオーディオやコンサートをまともに聴けなくなったらこの先いったいどうしよう!と、居ても立ってもいられなくなり動悸も激しくなり気力が一気に低下したのを覚えたのです。まさに「老化」を体験したのです。

2 老いの準備とは?

その後自分で暖めたタオルを耳や首に当てたり、マッサージをしたり、めまいをこらえながら慣れたオーディオシステムのスピーカーバランスを調節しながら試したのです。むしろオーディオと言うより、わが耳の聴く為のリハビリテーションを必死で行ったのです。そんな時 「“老いる”とはこんなことだ」と感じたのです。次第にあるいは突如耳が遠くなり、目が不自由になり足元が心許なくなる。当然のことに気力も体力も低下する…。しかし結果は診療内科にて三叉神経周辺の帯状疱疹であると判明し、即入院とあいなり“老化現象”ではなかったのですが・・・、その後は痛く長く苦労し、今でも梅雨時などは痛むのです。

しかしおかげで、失われて行く能力や体力に対処した家とはいったいどんなものか?さらにどのようなことに注意をすべきか?を深刻に考えたのです。そして次第に失われて行く五感を、元気な今、いっぱい味わって楽しむことだ!と思ったのです。そんな老いのための「老いない家」がこれから必要だと思ったのです。

昔の柱梁を記念に残す勾配(斜め)天井の家・R様邸(天野彰)
昔の柱梁を記念に残す勾配(斜め)天井の家・R様邸(天野彰)

そうです。それこそ五感を楽しめる家です。バリアフリーをテーマに単に平面的な家ではなく、あえてフロアーに変化があり、勾配天井(写真2)など立体的な空間をはじめ、色彩、灯り、そして音、さらにはもっと遊べる刺激的なおもしろい家です。

空間の遊びは刺激的 勾配天井 佐賀O様邸(天野彰)
シアターリビングI様邸(天野彰)

3 バリアフリーよりリハビリ?

路地裏などの込み入った敷地や、目の前に高い建物や敷地よりも高い道路があるなど、プライバシーがない場所で家を建てる場合、高みの見物ではないのですが・・・、緩い階段と掴まりやすい手すりを付けるなどして、2階にリビングを設けることをお勧めしています。

外観アプローチY様邸(天野彰)
外観アプローチY様邸(天野彰)

プライバシーも抜群で、夜間窓を開けて寝てもそれなりに安心です。いったん二階に上がってしまうとあまり降りたくありませんが、日常生活や来客などでどうしても降りる必要もあって、日に何度か上がり降りをしている間に足腰の鍛錬にもなります。

2階リビングY様邸(天野彰)
2階リビングY様邸(天野彰)

しかし、いくら大空間と言えども、2階がダインニングキッチンとリビングだけでは一階にすべての部屋が収まりません。そこで元気なうちは寝室も二階に上げてしまいます。さらに家事コーナーや書斎を二階のDKの傍にします。家事コーナーを二階のDKの近くに置くことで、主婦が日中、快適な場所で洗濯をし、そのままベランダに洗濯物も干せて便利です。

一階はさしずめ納戸や和室さらには客間などとします。また子育て中なら子ども部屋だけは二階にします。子ども部屋は一階にあるより落ち着き、知らないうちに外出したり、勝手に友だちが来ていることもありません。

天井の高い2階リビングS様邸(天野彰
天井の高い2階リビングS様邸(天野彰)

2階が手薄となると用心が大変です。面格子や背の高いフェンスに囲まれた中庭やガラリシャッターなどで防御することが大切です。モノはできるだけ二階に持ち込まず、出来れば一階の大型のシューズクローゼットや納戸を設け、コートなどの外出着を置いて、いちいち二階に上がらなくても着替えられるようにします。食材を2階の台所まで持ち運んだり、生ごみを出したりするために、勝手口用の階段があればごみ袋の漏れも気にならず、非常階段にもなるのです。老いのプランニングの際、思い切って二階リビングを考えてみてはいかがでしょう。いよいよ階段が上がれなくなったら一階に移ればよいのです。

2階リビングの家外観(夜景)S様邸(天野彰)
2階リビングの家外観(夜景)S様邸(天野彰)

4 スキップフロアの家

右が1,2階 左が中二階のスキッププラン(画:天野彰)
右が1,2階 左が中二階のスキッププラン(画:天野彰)

まさに一気に二階に上がるのではなく階段の半階ごとに部屋がつながるようにするのです。各階がちょうど目の高さほどにあり、立体的にも空間が√1に広がって上に下へと広さ感が増すのです。そればかりではなく閉鎖的な1,2階に比べて視覚が上下に開けて生活や情感に変化があって楽しく、知らず知らずのうちに半階ごとを上がり降りをして足腰のリハビリとなるのです。

手前中2階、階段下が1階リビング 写真(右):階段上がリビング下が寝室T様邸(天野彰)
手前中2階、階段下が1階リビング 写真(右):階段上がリビング下が寝室T様邸(天野彰)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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