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建築家 天野 彰 「二世帯住宅」は鬼の住みか?~子どもと住む

「二世帯住宅」は鬼の住みか?~子どもと住む

 夫婦は一つ家族も一つが本来の姿で、またそうでなくてはいけません。ところが住まいの設計では残念ながら夫婦は一つではない?のです。なぜならいざ家を建てようとなると、夫と妻それぞれの意見や希望があって、それが10ずつの異なる希望があれば夫婦で10×10=100で、なんと100通りものプランが生まれることになるのです。
 これが親子の二世帯の家となると親子夫婦それぞれ100通りずつで100×100!まさかの1万通りのプランが生まれることになるのです。実際にはそこまで煩雑になることはなくとも、親子夫婦4人の要望に副ったプランなどとうていできないのです。

 これは大変と一つの家を親子別々の家に分けようと上下階をそれぞれ別の家にしようと言うことになります。それが「二世帯住宅」となるのです。前回もお話ししましたが、確かに親子が同じ屋根の下に住むことにはなるのですが、果たして「同居住宅」と言えるかどうか?いささか疑問も残るのです。

 「二世帯住宅」はなるほど同じ土地を使って土地の有効利用ができて、建設コストも割安となり、ローンや税金も優遇されます。が、実際は、この二世帯が同じ屋根の下に別々に住んでいることは、同じマンションにたまたま住むよその家族と同じことで、その光熱費や生活費のメリットなどはあまり期待できません。そればかりか小住宅での上下1、2階では余り近すぎて親子だけにその音や気配が伝わり、互いの交流が積極的でないと「音はすれども姿は見えず」で、ちょっと顔を見せないだけで、疑心暗鬼となることも多いのです。   さらにその状態で父親が運悪く倒れたり亡くなったりすると母親は孤独となりさらに疑心暗鬼は強くなり些細なことでいがみ合いとなったり住み難くなってしまうのです。このことを私は「二世帯住宅は鬼の住処(すみか)」などと言っているのです。

 「二世帯住宅」は互いが自由に暮らせる半面、そのバランスが崩れた瞬間にかえって不自由となるのです。このあたりを誰もがしょせん親子だから言いたい放題でかえってやりやすいと思っている反面、嫁や婿が加わると子どもたちの様子も変わってくることを親たちも思い知らされ、また子どもたちも母親の変わりように驚くのです。
 こうして母と嫁、すなわち嫁姑は、1、2階に分かれて住むよりも、例え些細ないさかいがあろうとも、疑心暗鬼とはなりにくい一体同居の方がかえって良い関係になりやすいのです。
 反対に、やりやすいと思われている娘同居こそあえて完全分離の二世帯住宅にして、独立させた方が、実の母娘だけに互いの甘えがなくなり、さらに娘の夫である婿の付き合いや自由が疎外されることもないです。娘とは別々に住んでいても、しょっちゅう行き来し、例え喧嘩しても母娘だけにすぐにケロッとして仲直りできるからです。これが嫁だとそうそう簡単にもとには戻れないのです。

息子と一体同居・娘とは別棟プランが二世帯住宅には最適です
■イラスト:一つ敷地に親、姉・弟家族  ■写真:T様邸 奥が母と息子さん手前姉の家(天野彰)

 そこで改めて「二世帯“同居”住宅」ですが、いったい二世帯住宅とどこが違うのかと言うと、親子一体の同居ようにして、互いの寝室を極力離し、玄関も二つ設けて互いのプライバシーを確保し、さらに二つのキッチンを設け互いの大切な食器や食材を置いて好きな時間に料理が出来るようにし、双方の間にリビングダイニングを設け、そこを干渉ゾーンとしながらもたまには一緒に食事をすることです。
 すなわちこの親子夫婦「みんなの場と役割」が確保されると、前回お話しのもっと生産的な「同居“共働”生活」となるのです。

 ★毎週土曜日 最新コラム公開中!   次回お楽しみに♪

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表