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建築家 天野 彰 改めて「家相」~家相なんて本当にあるの?

1 「家相」~家相なんて本当にあるの?

私の家づくりの体験ですが、住んでいたマンションが売れたら土地代の残金と家の建築費を支払うと言う、まるで綱渡りのような私の家づくりでした。しかも鉄筋コンクリートの家です。到底予算が間に合わないために、とりあえず鉄筋コンクリートで躯体(くたい=家の外殻)だけを造りそこに住む覚悟でした。読者の方には意外と思われるかも知れませんが、打ち放し、ならぬやりっ放しの躯体だけなら鉄筋コンクリートの方が当時は割安となったのです。屋根防水とサッシさえ取り付ければとりあえず雨風は凌げる家になるからです。問題は設備と内装工事ですが、取りあえず床だけを貼ってもらって住もうと言うものです。今考えればまさに若さゆえのことでしたが、そんなことを家内や親たちは知るはずもなく、ただ「大丈夫?」と聞くだけでした。

「秀吉の一夜城」ではないのですがなせば成るのです!そんなことで、実際にはその後いろいろな援助もあり、大工さんもこちらの意欲に負けて(哀れんで?)くれてとことん協力してくれてコンクリートは順調に打ち込まれて夏の盛りには何とか外形ができて来たのです。

そんな頃、家内が思わぬけがをしたのです。外傷もなく我慢強い人で、病院に担ぎ込んだときは意識がもうろうとするほど内出血がひどく、危うく一命を失いかねないほどの大けがだったのです。ちょうど家づくりの途中でもあり、親たちが「家相」が悪いのではないか、などと言い出し「まさか!」と “新進気鋭”の建築家としては強がったものの、子どもたちを実家に預けて1人になると何となく気になり、知人の家相家に相談をしたのです。それまでも家相を気にされる建て主も多く、それに対抗すべくできるだけ多くの家相家と会い、東西の家相家の意見の違いなどを集めていたこともあり、わが家も一応の障りが無いように設計していて自信はあったのですが、なるほどこうして身内が怪我をしたり、病気にでもなるとこうも人は弱気になるものかと、身を持って体験したものです。イヤ、特にこれと言った障りはないですが・・・?と言われひとまず安心したものの、この土地に古井戸か池はありませんか?と尋ねられてぎょっとしたのです。

しかもこれが鬼門の方位にないかと言うのです。言われてみれば古い大きな家が建っていた土地の真ん中あたりが私の区分でした。「まさか…」

躯体のコンクリートが打ち上がりつつあるわが家
わが家の躯体終了(天野彰)

私が購入した土地は古い屋敷が建つ敷地の一部、しかもその中ほどで、その辺りに古井戸や池などはなかったか?急ぎ帰って大工さんに聞き、土砂を片付けて驚いたのです。元の屋敷の中ほど、つまり私が選んだ三つに分けた敷地の真ん中、そのちょうど鬼門(北東)に相当するところに古井戸があったのです。それも旧屋敷を解体するときにそのガラ(廃材)や土砂を無造作に埋めていたのです。これは大変!と、さっそくきれいにさらい、井戸の底から息抜きのパイプを設け、神妙にお祓(はら)いをしてもらい丁寧に埋めたのです。その際井戸がちょうど隣の敷地との地境にあったため、相談して井戸の息抜きのパイプを方位的に障りのない(むしろ吉相となる)隣側に上げさせていただいたのです。その後家内は順調に回復し元気になったのです。

鬼門重視の家相プラン、神妙にお祓いをする私と長男
町家の家相重視。グレー部北東の鬼門南西の裏鬼門 左 やっと躯体が打ち上がった 右 神妙にお祓いをする私と長男(画:天野彰)

近代建築家であるはずの私自身が今なぜこのような事実を明かすかというと、私自身がそんな最高に(最低に?)弱気になったとき、なにか不思議な力が働いたように思えたのです。一瞬たりとも“弱い自分”になったときにはじめて 何か不思議な力?“家相”?を感じたのです。

以来何かあっても、周りからなにを言われようとも「家相」を意識するのです。そこで困るのが、どんなに合理的で若い建て主に対しても“家相の存在”を説くようになったのです。そのお陰かどうか分かりませんが、その後“くだんのマンション”が、そこそこの、価額で売れたのです。と同時に家ができていないのにかかわらずに引っ越しをせざるを得なくなったのです。そこで、マンションの買い主に、引き渡しを3カ月ほど延ばしてもらうなど大変なことになったのです。

2 家相に従ったプランにやり直してください

家相はある」のです!若いエンジニアで近代的な考え方の建て主の家を設計したときのことです。プランも決まったある日、実施設計もほぼ終了するころです。「あのー。今から家相に沿ったプランにやり直せますか?」と言うのです。

以前からも両親から家相に従え、とさんざん言われていたらしく、それを「ナンセンス」と言って突っぱねていたと言うのですが、今になって家相に従った家に修正してくれと言うのです。今さら家相に従ったプランにすると、すべてのプラン構成と設計図面がすべてパーとなってしまうのです。私自身も、若さから、新進気鋭?の建築家として、縁起かつぎのプランなどナンセンスと思っていたのですが、住まいづくりを始めて、この家相を気にする人があまりにも多いことに驚き、一応の家相のルールを考慮しながらプランづくりはしていたのですが、なんとそれを“いち”からとは!

「ご主人、一体何があったと言うのです?」
と聞けば、なんと両親の言い付けどおりの家相プランにしなければ、足りない建築費用を出さないと言うのです。“経済封鎖”です。なるほどこれにはさすがの私も参りました!

「経済封鎖」の後変更したプラン(左)
プランを反転修正して「家相」に沿ったT様邸(画:天野彰)

今までの過ごしやすい合理的なプランをもとに鬼門だけを避けて修正案として、家族に紹介された家相の専門家に見てもらったのです。もちろん1人の家相家の診断だけでは心もとなく、同じプランで私の知る何人かの家相家の指南も受けたのです。するとどうでしょう。同じ図面でありながらある人はすべてOKと言ったり、さらに厳しくあちこちを直させられたりとさまざまであることが分かったのです。それぞれの家相家に思想と流儀があることが分かったのです。

こうして出来上がったT様邸
T様邸外観(天野彰)

これは大変です。いちいち何人かの家相家の意見など聞いていては住みやすいプランなどいつまでたってもできないのです。

3 人に人相 家に家相 天野流家相スタート!

根本からプランをやり直さなければならなかったにがい体験から、素直に2,3の家相家を訪ねて診てもらったところ、なんとそれぞれに流派のような違いがあることを知ったのです。そこでさらに多くの家相家に同じプランで診てもらったのです。なるほど地域によっても、またその家相家の世代によっても違いがあることを知ったのです。

天野流?「家相盤」
多くの家相家に会って集大成した家相盤(画:天野彰)

この多くの家相家の診断をもとにそれらをすべて重ね、15度毎の方位ごとにその障りの色の濃さを度合いとした家相盤をつくってみたのです。なるほど各家相家とも真っ黒になるところは最凶となったのです。あとはでグレーの濃いところが凶、さらに薄いグレーは小吉で真っ白は吉、丸印は中吉で、さらに二重丸は大吉で大いに幸運と言うことにしたのです。ま、私が発案と言うよりは平均したと言った家相盤となったのです。この家相盤に従ってどれほどわが家わが暮らしを適合させるかが家を建てる覚悟のようなもの、あるいはこの先の生活の予測、再確認と言った要素となることを実感したのです。

こうして人それぞれに人相があるように家にも家相があるのです。潔癖なほど家相に従ったプランや、デザイン優先で大きな“障り”だけを外した家、さらには都合の良い方位だけ優先した家もあるのです。

しかし私がここで言う「家相」とは風水や易(えき)による家相ではなく、古来わが国で言い伝えられて来た住まいづくりのガイドとして、間取りの手法、さらに長年にわたる居住の体験をもとにした古典的家相術の最大公約数としての家相法を編み出したのです。結果、家相重視の家は、なるほど家全体が明るく風の通りも良く家族も住みやすそうなのです。その後の家族の様子を見てみてもなんとなく幸せそうに見えるから不思議です。

家相盤に従ったくるくる回れるひまわりの家プラン
家相盤に従ったくるくる回れるひまわりの家プラン 外観:くるくる回れるひまわりの家(天野彰)

家相や方位学などの易を風水と言うように、居住学において最大の要素、いやもっと、居住生活の本質は「風」すなわち通気と、「水」すなわち湿気対策だと思うのです。風がよく通ることと、湿気を避け通気が良いプランの家は涼しく健康的で長持ちするのです。それらの家相の方位の共通点を調べその原因を調べてみますとなるほど、おおむね次のような体験的で科学的なことが底辺にあることが分かるのです。

  • ・ 間取りがシンプルで住む人が動きやすい(動線)が確立されてスムーズ
  • ・ どの部屋にも光と風が通るシンプルな間取り(居心地)がよい開放空間
  • ・ どの間取りにも懐(ふところ)=余裕がある
  • ・ どの家族にもたまり場となる(居場所)=家族重視の空間がある
  • ・ 風の流れを意識して迎える「張り」と、抜く「欠け」でさらに風を呼び込むプラン(張りと欠け)
  • ・ 骨組みと壁のバランスがよく地震・台風の災害にも強い(安全)
  • ・ 狭くても広々として開放的な間取り(狭楽しさ)
  • ・ 家族との関係がよさそうな部屋のつながり間取り(配置)
  • ・ 最後までわが身を支えてくれる間取り(自助自立)
  • ・ 敷地、土台、床下に水周りに湿気が回らず(水はけ)が良い

以上のようにおおむねこのようなプランとなるのです。なんとこれは「いい家」の条件にも共通するのです。人にその人柄をあらわす人相があるように、家にもその人相のような「家相」があるのです。良相の「家相」は科学的で合理的であり、風の通りやすいシンプルな間取りで外観の家となるのです。これこそ「夏涼しい家」となるのです。まさしく目元涼しい家こそ良相の家となるのです。そこで写真のような方位のないぐるぐる回る家の提案をします。

天野彰・講談社+α新書『建築家が考える良い家相の住まい』

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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