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建築家 天野 彰 生かすか壊すか?(2)~日本の家はなぜ継承されない?

生かすか壊すか?(2)~日本の家はなぜ継承されない?


―わが国の家は伝統を生かされることなく違ったものとなった―

 「国立競技場はリフォームですべきだった!」
 なぜ躊躇することなく壊してしまったのだろうか?そんな声が今あちこちから聞こえて来るのです。なるほど席数が6万そこそこでしかも覆う屋根もない。そして再度のコンペ案でも競技場の周りに列柱のような支えがあって壁面緑化のような外壁の構想となっている。

 なるほどこれなら増席のスタンドを列柱で支えてせり出し、しかも軽量な木構造の庇をかければ今の予算の半額以下のリフォームでもできた。これがおおかたの意見となっているようです。おまけにエンブレムについても招致のためのバッチのデザインをさらにデフォルメして生かせば良かった!などとも。

 今となってはすべてあとの祭りなのだが、もしそんなテーマで発注者が協議して広く公募をしていればどれほど国民の関心と理解を得られたか計り知れないのです。
 はるか昔のわが国の高度成長期の名残でもあるスクラップ・アンド・ビルドの時代からすでにビフォアアフターの時代となっているのです。今こうして考えてみると私たちも古き良き時代の骨太の旧家をいとも簡単に壊しベニヤの家に建て替えてきたことかと改めて苛まれるのです。

写真1:ビルの中の町家
<写真1:ビルの中の町家>

 こうした話に私が常に例えるのが、あの白川郷のぶ厚い萱葺き屋根の合掌造りの家と、京の中庭の町家です。厳寒多雪地帯故の合理的な合掌の妻側(三角形側)は風通しの良い開放できる涼しい“夏の家”の設計思想でありながら、冬は熱ロスが少ない暖かい家で炉の炭火一つの暖房が効いて暖かい。町家もしかりで、建具を閉めれば陽だまり、開ければ中庭から空気が抜けて風洞のように涼しい。つまりは屋根と柱だけの、自然環境を生かした「傘の家」なのです。

写真2:合掌造妻側
<写真2:合掌造妻側>

 誰もがそんな家が良いと思うはずですが・・・。なぜか実際は高気密高断熱の「壁の家」となっているのです。しかし断熱効率がいいと言っても厳寒の比較的乾燥した北海道など一部の地域を除いて、壁の家は蒸れやすく暑苦しくもなります。

 こうして古来わが国の家づくりは、なによりも一番に風の通りを考えることです。この家の発想はまさしく「夏の家」であり、柱と屋根の、すなわち「傘の家」なのです。この家の形はまさしく柱だけの家で、唯一用心のため、塗り籠め(ぬりごめ)と言う木舞壁(こまいかべ)の土壁と板戸で囲まれた言わば納戸(寝室)がある程度で、のちに都市の家となり町家のように隣家に接するところや、北側が土壁で覆われたものが有るものの、元来「傘の家」なのです。

イラスト:傘の家 壁の家
<イラスト:傘の家 壁の家>

 実はこうした家の設計思想は、いくら西欧文化が浸透し、近代化されようとも昭和の時代まで営々と続いてきたものです。私が生まれ育った家も、始めて設計した家もこうした思想が大勢で、その建て方と思想でデザインをしていたのです。私の“師匠”とはまさしく建て主と棟梁たちで、伝統工法や生活思想を実地で学んだのです。

写真3:実家に再現したYさんの大黒柱のある週末住宅
<写真3:実家に再現したYさんの大黒柱のある週末住宅>

 しかし高度経済成長にともない輸入材や輸入技術がわが国に浸透し、家づくりは工業化され、この伝統的な和の住まいの思想は薄れ、次第に「壁の家」となって行くのです。住まいの工業化は近代化の流れとしても、この“和の思想”が継承されずに来たのは残念でなりません。しかも急激な都市化で鉄筋のマンションとなり、密集して通気も悪く、クーラーが必要不可欠な「壁の家」となったのです。
 “和”はすでに思想ではなくイメージかフォルムの一つとなったのです。教育の現場でも伝統的思想は教科になく、単に茶や花の作法となっているのです。

写真4:母と住むSさんの大梁と土佐漆喰の家
<写真4:母と住むSさんの大梁と土佐漆喰の家>

 今、経済成長を終え高齢化し,心のふるさととして伝統文化に魅かれ、心の行きどころを見つけるのです。また同時に身体も冷暖房に弱く、自然の通気を求めるようになって“和の思想”が今、心の安らぎとなってもいるのです。
 今こうした面影のある家は壊さず、あえて生かして設備だけを新しくと言う“生かすリフォーム”がいいのです。

★毎週土曜日 最新コラム公開中!   次回お楽しみに♪

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表