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建築家 天野 彰 生きるためのリフォーム(5)住まいの安全は「柔構造」- 3 -

生きるためのリフォーム(5)住まいの安全は「柔構造」- 3 -

―巨大建築も従自然、千年の「柔」の思想!―

 相手の巨大な力を利用して受け流す・・・そればかりか敢えてその力を利用して相手にダメージを与える…まさしく柔の道、日本古来の柔術なのですが・・・、治水あるいは建築構造にわが国唯一の構造的手法を編み出している。地震や強風さらに耐久性に強い伝統「木組み」木造の匠の技なのです。

 その唯一のものに楔(くさび)の妙があるのです。あの尖った三角鋭角のようなくさびは互いの部材の隙間に差し込み、両者を固く繋ぎ留める働きや、反対にその隙間にくさびを叩き込み、大きな岩石などを割るためにも用いられるのです。
 その特性を生かしてまさしくわが国独自の柔の構造をつくったのです。鋭角のくさびは木組みの隙間に差し込み、叩いて徐々に締め付けるのですが・・・、驚くべきはなんと木組みの部材にさらなる荷重が掛った時は、ぎしぎしと言う応力に、締め付けたくさびが徐々に緩み始め、くさび自身が破損したり、抜け落ちて互いの部材を傷つけることなく災禍が過ぎ去るのを待つのです。

 その最たるものが神社の入口に必ずある鳥居です。二本の丸太と笠木による単純な門ですが、肝心なのは両方の柱を繋ぐ貫です。貫の上の柱の左右に耳のように刺されたくさびです。これでしっかりとした門構えを造るのですが・・・、
地震などの揺れに柔軟に対処し。その後また玄能(げんのう=金づち)などで閉め直せるのです。さらに巨大な揺れには、くさびが外れてバラバラに崩れるのです。これは部材に損傷がないため、またなにごともなかったかのように組み立てられるのです。

 そんな方式で造られたのが、清水寺の舞台で有名な懸崖構造(写真)で、あらゆる巨大建築の寺社の柱梁の構造に使われ、揺れや経年変化の乾燥にさらにくさびを締め直すのです。

写真1(左):清水の舞台を支える柱・梁・貫・楔の懸崖構造(写真:天野 彰) 写真2(右):同じ清水寺の三重塔 (写真:天野 彰)
<写真1(左):清水の舞台を支える柱・梁・貫・楔の懸崖構造(写真:天野 彰)>
<写真2(右):同じ清水寺の三重塔 (写真:天野 彰)>

 この「柔」の構造は世界に席捲した超高層の柔構造に応用されていると言い、五重塔や三重塔の芯柱による天秤(てんびん)バランス構造なのです。まさしく四隅の柱で建物全体を支え、重層屋根の重みを芯柱がなんと、下に引きずるようにバランスし、ゆらゆらと柳腰のように揺れて、揺れを吸収してしまうのです。(写真:清水寺の三重塔の芯柱)この思想が堅い構造から高層ビルにおける柔構造や、現代の制震構造のヒントともなっているのです。まさしく千年の柔の精神と言えるのです。

写真3:同上 内部「芯柱」(撮影:天野 彰)
<写真3:同上 内部「芯柱」(撮影:天野 彰)>

 蛇足ながら私自身はこれらの柔の精神から、揺れを避ける「免震」や、制する「制震」よりもっと、建物全部が揺れを吸ってしまう「吸震構造」を考えているのです。(写真)これについてはまたいずれの機会に。次回は「生きるためのリフォーム(6)―老いたわが身を支える家-」

写真4:試験場で「吸震」効果をチェックする筆者:天野 彰
<写真4:試験場で「吸震」効果をチェックする筆者:天野 彰>

★毎週土曜日 最新コラム公開中!   次回お楽しみに♪

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表