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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 災害に強い家 防災の前にまず減災の心を

1 今や防災とは防ぐ前に取りあえずの「減災の心」を持つことが必要

異常気象、そして大震災・暴風雨の可能性が?

確かに温暖化のせいか海水温が上がり異常気象が!とまで言われることが多いのです。21年前になる正月1月17日午前5時46分、淡路島北部、震源の深さ14キロのマグニチュード7.2の地震が発生しました。神戸市、西宮市、芦屋市などで震度7を記録。人口密集地を直撃したのです。高速道路高架橋が倒れ、日本の土木技術の信頼性が失墜し神戸市の港湾施設は壊滅状態となったのです。そう、阪神・淡路大地震です。この地震で、自宅を失って避難した人は23万人をゆうに越え。死者は、震災が原因で亡くなった人を含めると6500人となりました。負傷者は約42,000人、倒壊家屋は約40万棟。被害総額は10兆円!にも達したのです。

そしてまたその10年後に新潟県中越。さらにあの東日本大地震と続き、なんと今年に入って熊本大分地震が立て続けに起こったのです。

阪神大震災、中越、東日本 撮影天野彰)
阪神大震災 上 中越 左下 東日本 右下 撮影:天野彰

リフォームのチャンスに耐震補強を!

地震になると必ず登場するのが木造や古い家は地震に弱い!などの意見が浮上するのです。木造にしても在来に比べ工業化住宅は軽い箱だから安全?と言い意見も、今度は湿気が心配かも知れません。しかしどんな家を選ぼうとも家を持ったその瞬間から家の「リスクマネージメント」が必要です。メンテナンスに加えて住む人の防災意識が何よりも大切となるのです。あの直下型の阪神大震災でも、古い家であってもつッかい棒のような、ちょっとした耐震補強で倒れなかった家もあります。いくら筋交いを入れた新築でも愛車のために広い駐車場をつくって、家の角の柱一本のため、バランスを崩して壊れたり。

イラスト1:つっかい棒で助かった古い家(画:天野彰
つっかい棒で助かった古い家 画 天野彰

写真4:柱一本で倒れたほとんど新築の家(撮影:天野彰)
柱一本で倒れたほとんど新築の家 撮影 天野彰

鉄筋コンクリートの家もかえって自重が重く、直下の縦揺れの地震では柱が押しつぶされるように折れたり、地震には助かっても窓に雨戸やシャッターが付いていないために延焼してしまった建物も多いのです。関東大震災でも阪神・淡路大震災でも70年以上の年代の差はあれ、ほとんどの家が住みやすい木造で倒壊が多く目立ったのです。しかしこれも雨漏りで柱や梁が腐っていたり、施工不良なので、古くても新しいものも防災の意識の目さえあればわずかな費用で耐震補強はできたのです。

いざリフォームのチャンスとなるとシステムキッチンなどの設備の改造やインテリアに費用はあてられ、この耐震強化」は二の次となりやすいのも実態です。

「減災」は命を守る防災意識のトレーニング!

阪神・淡路大地震でひときわ目立ったのが前述の、傾いた古い木造が簡単なつっぱりの丸太でびくともしなかった例もあり、筋交いをバランス良くいくつか加えただけで、1000ガルもの強い地震にまったく被害の出なかった例も多いのです。その反対に鉄筋であろうが鉄骨であろうが、杭や基礎から強度が出ていない建物は傾いたり倒れた建物も多いのです。災害は忘れた頃にやってくる!ではありませんが、まだ余震さえ起こりそうな、あの熊本大分の震度7の揺れの直後の「防災の日」でもその関心の低さには驚きます。災害は地震ばかりではなく頑丈な建物でも土砂崩れや河川の決壊で押し流されたりもします。

自治体も防災・避難・救助・消火経路の確保が重要で、その妨げとなる道路の強化はもとより立体交差橋や歩道橋や電柱、送電線などの撤去や耐震強化。さらに海浜地帯では高潮や液状化対策、ところによっては“原子力発電所”や石油の備蓄タンクコンビナートなどの耐震強化が必要で、その上での住民の避難所やそのルートの整備など積極的対策が具体的になされていないことが気になります。ここまでは中越地震直後のデジタル朝日での私のコラムコメント『いい家朝日でのコメントだったのですが)

地震は天災とは言え想定される危険を未然に防がないことは人災とも言えます。知事や自治体の責任問題ともなりかねません。もちろん都市に住むわれわれも日ごろからその安全避難のルートを歩いたり、わが家族の命や財産を守るために建物やその地形をよく見ることが災害を未然に防ぐ、いや被害を最小限にする「“減災”の意識」そう、メンテナンスは“目”ンテナンスで、これこそ「防災意識のトレーニング」となるのです。さあこの台風の後にわが家を、家の周りをよく見てみましょう。

イラスト2:今の住まいを見る[メンテナンスポイント](画:天野彰)
今の住まいを見る[メンテナンスポイント 画 天野彰

今の住まいを見る[家の周辺の危険度チェック](画:天野彰)
今の住まいを見る[家の周辺の危険度チェック 画 天野彰

2 減災はわずかな費用でも出来ることをやる!

一階がガレージや店舗などで家のコーナーが柱一本だったり、リビングなどの角を大きな出窓などにして、角の柱が一本だけのバランスの悪い家はことごとく柱が折れたり、なんと!柱が柱に食い込むように折れて二階が落ちていたのです。もうこれは壁の中に筋交いがあるなしの問題ではないのです。こうした視点で見ると、耐震補強は簡単なのです。リフォームの際など内壁をはがした時に、柱と土台と梁(はり)に構成される四角の面に構造用合板を多くの釘で打ち付けるだけで、なんと筋交いの倍ほども強い面の筋交いとなるのです。あの紙一枚の障子やふすまが狂いもせず、あれほど強いことと同じなのです。このベニヤ板一枚の耐震補強 家一軒で二十枚ほど、わずか4,50万円の費用で大地震に生き残れるのです。

造りつけの収納家具で建物をも支える?

またあの直下型の阪神大震災でもマンションの倒壊でさえ助かった究極のリフォームがあります。それは各部屋の両側の壁を床から天井までの収納家具とするのです。この家具は倒れてくることなく、最悪の場合にでもこの収納と内容物がつぶれた上階の荷重を支え、そこに“生存空間”の空洞ができて助かるのです。またマンションや賃貸アパートでも造り付けの収納家具で助かった例もあるのです。これが置き型の箪笥(たんす)などが倒れると避難を危うくするのです。

写真:中越地震での室内の惨状
中越地震での室内の惨状>

イラスト:家具が倒れる原理と倒れない壁面収納
家具が倒れる原理と倒れない壁面収納

イラストのように家具が転ぶためにはどちらか一辺が持ち上がらなければなりません。天井までの家具は天井が持ち上がらない限り転ばないのです。そこで天井までの空間(隙間)を固い収納箱などをつくります。あのL型の金具やつっぱり棒などで壁や天井に留められたタンスなどは地震であっさり外れたり天井や家具にめり込んで倒れてしまったものも多いのです。

 やはりきっちりと箱を嵌め込み一体型の収納にします。天井までの造り付けの収納が容量も多く、建物をぎりぎりのところで支え、最悪でも生存空間、シェルターができ圧死から免れるのです。収納家具に強度を持たせるのです。

天井(梁)下までのがっしりした壁面収納
天井(梁)下までのがっしりした壁面収納

さあ、明日また大地震が来るかもしれません!“何もしない人”はくれぐれもタンスや冷蔵庫の脇に子どもを近づけたり寝たりしないようにしましょう。

3 命を守るべき家が命を守ったか?

一時期その発生が懸念されていた東海地震や東南海・南海地震の巨大地震について、政府の中央防災会議(当時小泉純一郎会長)がその規模は桁違いのもので、しかも明日来てもおかしくないと言うものです。それがなんと宮城沖どころか三陸沖全体の東日本大震災の大災害となってしまったのです。しかも東海地震とは全く別のものと言う。従ってこうした視点で見ると、東海関連の巨大地震の確率はまだまだ高いままと言うことなのです。連日テレビの実況で悲惨な惨状を目の当たりにし、各局で大地震の災害のシミュレーションを放映してもなぜか、相変わらずあれは対岸の火事か?あるいはもしあのような地震が来たら、もうあきらめるしかないなどと開き直ってしまっている人も多いようです。

とんでもないことです。防災はそこに住む人のちょっとした心がけ次第で、しかもわずかな費用で耐震補強もでき、家族の命を守ることもできるのです。まずは減災を考えるのです。補強でも案外簡単にできるのです。その辺りに筋交いのある壁を足したり、イラストのように2本の補強柱で今の通し柱を抱くなど、まさしく“三本の矢”のような補強で家は数倍強くなるのです。

2本の柱で今の通し柱を抱いて“三本の矢”の補強
2本の柱で今の通し柱を抱いて三本の矢”の補強

4 今の家がある土地と地盤を観る

熊本大分地震、阪神・淡路地震にしてもあの恐怖の揺れの体験と、長く続く余震による避難生活の不安や不自由さ、そしてその建て替えや修復予算の多額の出費を迫られ、ついにはその街と家を捨てた人も多いのです。今その都市直下型の阪神大地震の犠牲者の多くは圧死と類焼火災により、後の東日本大震災は巨大津波でした。そこでわが家が建っている街やその位置、そしてその地盤がどの部分に相当するかを知ることが大切なのです。

地盤によって揺れ方が違う   画 天野彰
地盤によって揺れ方が違う(画:天野彰)

その方法は、各市町村にあるハザードマップ、海抜を示した地形図を入手し、新興宅地であれば申請に使った造成図などを見せてもらうか、担当した施工者や役所に問い合わせることが手っ取り早いのです。造成が古い宅地の場合ではその団地や敷地周辺を散歩しながら、やや離れた対面の高台などから眺めて見ます、もとの山(地山)や原野の成りがおぼろげながら見えてわが家が削られたところか土盛りされたところかなどが分かります。古くから住んでいる人の話などを聞いて地盤の形成の歴史を探ることもできます。地盤そのものが地震に対して不安な場合は、まずよう壁を見て、ひび割れていればやり直し、さらに家本体の足回りが心配なら従来の無筋であった基礎の内側にぐるりと鉄筋入りの二重の基礎を造ることもできます。しかし地盤そのものが隣地や道路から下がっていて水はけもできないなどでは家が腐りやすく危険です。湿気やカビで健康にも良くありません。

イラスト:無筋の基礎にもう一重の鉄筋の基礎をつくる(画:天野彰)
無筋の基礎にもう一重の鉄筋の基礎をつくる 画 天野彰

思い切って今の家を壊して杭を打ったり新たな土を加えて顛圧(てんあつ)し、地盤にモルタルや石灰などを注入し地盤改良した上で建て替えるか、敷地に余裕があれば曳家やジャッキアップ(写真)によって、新たな高基礎を造り元に戻すのです。

写真:ジャッキアップと曳家で新たな高基礎をつくる(天野彰撮影)
ジャッキアップと曳家で新たな高基礎をつくる(天野彰撮影)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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