住宅関連記事・ノウハウ
子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)
1 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)
環境省では、来年1月から、全国10万人を対象とした『子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)』を開始するそうです。環境省:『子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)』この調査の背景としては、小児ぜんそくなどの免疫系疾患や小児肥満などの内分泌系異常、先天奇形などが過去20年~30年のあいだに増加していることがあります。この調査スキームは、かなり大がかりで、かつ期間が長いもの。調査仮説として、『胎児期から小児期にかけての化学物質暴露をはじめとする環境因子が妊娠・生殖、先天奇形、精神神経発達、免疫・アレルギー、代謝・内分泌系等に影響を与えているのではないか?』と設定。脆弱であるとされている子どもたちの、胎児期から小児期にわたる成長・発達に影響を与える環境要因(化学物質の暴露や生活環境など)を明らかにすることが目的です。
調査に先立ち環境省が2008年に実施した公募に寄せられた、一般の方・専門家の方々の意見分析を調べてみると、一般の方が『子どもの健康に関連して不安を感じている環境要因』のが挙がっています。
不安に感じる子
- 1位 アトピー
- 2位 ぜんそくとアレルギー
- 4位 シックハウス
- 5位 化学物質過敏症
- 8位 化学物質
これらの症状は、すべて“シックハウス症候群”に関連するものです。この調査でも“シックハウス”にかかる問題が、大きな注目を示すことが予測されています。ところが、住宅業界においてはほんとうに残念なことに、シックハウス症候群の原因が“ホルムアルデヒド” が主な原因物質であり『F☆☆☆☆』制度によりシックハウス問題は終わったという認識をお持ちの方々がまだいらっしゃるようなのです。
場合によっては、現在家づくり・リフォームをお考えの方々でも同様なお考えをお持ちの方々がいらっしゃいます。しかし『F☆☆☆☆』制度で使用が規制されているホルムアルデヒド以外でも、たとえば“トルエン”など、さまざまな化学物質によるシックハウス症候群、シックスクール症候群の事例もあります。厚労省では、13の化学物質について室内濃度値を設定しているほか、2000年にトータルVOC(TVOC=揮発性化学物質の送料の目安)を設定しています。それ以外でも、フタル酸エステルや有機リン系殺虫剤なとのSVOC(準揮発性化学物質)もシックハウス症候群を引き起こす可能性がある、と指摘されています。シックハウス症候群・化学物質過敏症のメカニズムとは、私が知る限りの有力な説では、生涯にわたって健康影響をもたらさない化学物質の総量が、人それぞれ決まっていて、その総量を超えると『コップから水があふれるように』一気にシックハウス症候群、または化学物質過敏症を発症してしまうメカニズムと考えられています。
本来の調査仮説とはやや異なりますが、これから生を授かる子どもたちが、おなかのなかから、そして、その子どもたちが大人になってから、シックハウス症候群で苦しむことがないように、その基礎となるデータを2025年まで追跡調査するというほんとうに息が長いものです。
このような取り組みは、民間で行うにはハードルが高く、かつシックハウス症候群の根本原因がいまだに議論されている現状において、この調査経過、ならびに2025年に発表される『中間発表=子どもの成長・発達に影響を与える環境要因の判明』が、これからずっと発生が予測されるシックハウス症候群・化学物質過敏症の解決に向けた基礎データとなることを願ってやみません。
2 エコ設備が使いやすく
政府が9月10日に閣議決定した緊急経済対策のなかで、規制改革による経済対策のひとつとして、太陽光発電など新エネルギー・省エネルギー設備を導入する目的で各種エコ設備の建築基準法上の取り扱いを明確化することが盛り込まれました。
意外に知らない方々が多いのですが、太陽光発電パネルを屋根に設置する場合、『屋上の部分』と観るか『屋上の突出部』と観るかで建築基準法上の取り扱いが全く異なります。現状では建築基準法上での明確な規定がなく、太陽光発電パネル取り付け方法は審査側(建築地に所在する各自治体)の裁量で判断されます。各自治体によって太陽光発電の取り付け基準がバラバラで、結果的に太陽光発電システムの取り付けにあたり、制限をかけられるケースが散在しています。
次に、高効率の熱交換型換気扇などの省エネ設備については『機械室緩和』の適用条件(容積率緩和)になるという特例制度がありますが、国の技術的助言に具体的な設備の例示がないなどの理由で、この『機械室緩和』の適用条件を認めない自治体も存在します。今回の規制改革による経済対策では、これらの事例について例示を増やしたり、具体的な判定基準を設けるなどの明確化、そして、その周知を図っていく、という各自治体の審査側と調整を図るそうです。消費者側(家を建てる側)とすれば、住んでいる地域によって太陽光発電パネルの設置条件がバラバラだったり、大型の熱交換型換気扇を押し込めるために収納を削ることを呑むはめになったり。住んでいる場所で条件が違うことが、とても不公平だと感じてしまいます。せっかくエコ設備を導入しようにも行政からダメ出しを頂いてばかりでは、エコ設備を導入する意欲がどんどん薄くなってしまいます。
せっかくの国の経済対策だけに、この施策で行政サイドからの後押しによる住宅へのエコ設備導入が加速していくことを、心から願ってやみません。
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