住宅関連記事・ノウハウ
これからは自然を生かし自然に暮らす「家」を
1 これからは自然を生かし自然に暮らす「家」を
果たして高気密高断熱の家は「いい家」なのか?「まるで“ビニール袋”の中に住んでいるみたいで・・・」最近家を建てた人が一夏とそして厳しい冬を越しての嘆きの声です。
今年の冬はまたことのほか寒く感じます。東日本の大災害以来、景気は落ち込み、何よりも市況や経済の先行き不安などで心無しか寒さ感も倍増と言ったところです。
2、300年も住まれて来た豪雪地帯の合掌造り(写真天野彰)
今も被災地の仮設住宅では天井まで結露したり、朝起きるとサッシが凍りついて開かないなどの過酷な生活をされているのです。その一方で今年も豪雪の、寒いのが当たり前の白川郷ではサッシどころか、妻側の障子と戸板だけの合掌造りの家では例年通り2、300年にも渡って厳寒の冬を迎え越しているのです。
しかし大勢の家は・・・、冬は暖房が効いて暖かい。そして夏は冷房が効いて涼しい、高気密高断熱で熱ロスの少ない家がいいと言う時代へとなっているのです。そしてこの原発の事故以来、関東圏を中心に停電の恐怖と電力供給の制限を身にしみて体験し、冷房の温度を上げて暮らして来て出たのがこの息の詰まるような“ビニール袋の家”発言なのです。
合掌造りの妻側は障子と雨戸だけ(写真天野彰)
自然住宅とはわが国古来の当たり前の家のこと
こうして全国に電撃のように広がった脱原発と節電騒ぎは、今までのCO2削減に端を発して設けられたポイント制の報奨金目当てのエコ感覚に比べ、人々が改めて本気で省エネルギーの家や自然エネルギー利用のスマートな住宅への関心を持ちはじめたのです。このことは電力供給の問題にとっても、地球環境にとっても良いことです。
私の家づくりの発想は、家中の風の通り第一義とし、外壁や屋根は断熱を分厚く充填し、窓は縦横に極力大きく開放するのです。さらに家のあちこちに風抜きの窓を設けます。それも手の届く、開け閉めしやすい窓にします。雨の日も窓が開けられるように小庇(ひさし)を付け、時には中庭をつくって出かける時も風が通るように工夫し、各窓には網戸も忘れません。
通気性の良い家(天野彰)
しかしいくら高気密高断熱で断熱効率がいいと言っても窓が開かない家や、申し訳程度の小さな窓だけでは息苦しくなります。しかし大勢がこうだと、私が今まで行ってきた開放的な住まいづくりが間違っていたのでは?と思うほどです。
2 「家族の間取り」をつくる。それは「生活の間取り」
近年の都市型の集合住宅の構造と水回り設備の制限による単純で画一的な「間取り」は、利便性を優先してしかも限られた高額の土地で、一戸でも多くの家を積み上げ最大容積を確保せざるを得ないマンションや賃貸住宅ではしかたがないことだと思われます。が、これらの家で果たして住む人や家族それぞれを幸せに住めるのか疑問ですが、この2LDK、3LDKなどのマンションの合理的な間取りが一戸建ての間取りにまで及んでいることも気がかりです。
こうした中、施工性を多少犠牲にしてでも「家族の間取り」を優先したマンションも提案されているのです。子育ての家族は子ども部屋を与えるのではなくその反対に仕切らずに開放し、寝るだけの部屋?コーナーを与え、ワンルームにして、リビングかダイニングに家族皆の書斎(イラスト2)とするのです。
リビングの家族皆の書斎(天野彰)
子育ての終わった夫婦には玄関に広い土間空間を設け、趣味や仕事のスペースをつくるのです。さらにバスルームを思い切ってベランダ側に持って行って、夜景を見ながら入る露天風呂のような楽しいプランにするなど「生活優先の間取り」も考えられて実現もしているのです。
これこそ古来私たちが住んできた昔の住まいの形です。壁のない開放的な風通しの良い家で、冬は合掌造りのように囲炉裏の暖房もひとつで済む、自然エネルギーと省エネルギーの家なのです。これに電灯や給湯などのためにさらにソーラーパネルを設置することで太陽光利用の、まさに低炭素でエネルギー・ゼロの住まいとなるのです。
合掌造りの火の見窓 唯一の暖房の囲炉裏の火を夜中見張る(写真天野彰)
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