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「オール電化」料金割引プランの廃止要請へ
1 「オール電化」料金割引プランの廃止要請へ
経済産業省の電気料金審査専門委員会は、7月2日に家庭のエネルギーをすべて電気でまかなう「オール電化」の料金割引を廃止するよう東京電力に求めました。オール電化住宅の家庭だけを優遇する料金制度は不公平だと判断。東電の家庭向け料金の値上げの査定方針に盛り込みました。
特定の機器購入を条件とせず、より幅広い家庭に「昼は高く夜は安い」料金プランを提供することで最大使用電力を抑えられると判断。オール電化割引を続ける意義が乏しいという見解に達したようです。東京電力の発表によると、東京電力管内だけでオール電化住宅は102万件。ただちに廃止すると混乱を招くため、既存の契約者には十分な周知期間を設けることにするとのことです。
オール電化住宅向けの電気料金プランは、昼間の電気料金が通常プラン(従量電灯B)の約1.5倍にまで高くなりますが、夜間(23~7時)は通常の半分以下の料金に。
一方、東京電力は今回の家庭用電気料金の値上げにあたり、「昼は高く、夜は安い」料金プラン「ピークシフトプラン」を設け、6月1日に導入しました。「ピークシフトプラン」は夏季(7~9月)の夜間(23~7時)は9.17円と安く、昼間(7~13時、16~23時)は26.53円、さらにピーク時(13~16時)には44.60円と、夜間に比べて約5倍高い料金(1kWhあたりの電力量料金単価)になります。
ところが、このプランの場合、電気の利用状況によっては逆にいままでより高くなる場合もあり、普及は遅々として進んでおりません。
※5/28時点で8月上旬までに15万件の加入目標に対し、110件の申し込み
現時点では、経済産業省の電気料金審査専門委員会から東京電力に対する料金割引廃止要請であり、決定事項ではありません。家庭向け電気料金の値上げは、経産相と消費者担当相が閣僚会議に諮り、最終的には経産相が認可。査定段階で消費者庁との調整がかかります。また、消費者庁は家庭向け電気料金の値上げにあたり、独自の検証項目にて値上げ幅の圧縮を求めています。
よって、東京電力をはじめとする電力会社の電気料金値上げについては、話題となった『オール電化割引の廃止』を含む大幅な値上がりにすぐに結びつくわけではありません。
2 これからオール電化住宅をご検討される際の注意点
現時点で予測できることは、このような廃止要請があった事実を受けて、エコキュートや電気温水器、蓄熱暖房器などの夜間蓄熱式機器をこれから導入する場合は、ある程度は慎重に比較検討したほうが良い、ということです。
たとえば、導入して製品寿命には余裕がある数年程度の稼働で、電気料金が値上がりし、泣く泣く設備機器を更新する、というのもナンセンスな話。したがって比較検討にあたっては、当然のことながらLNG調達価格や原油価格、為替相場に影響を受けるガス(都市ガス・LPガス)との料金比較・設備機器導入コストの比較検討も含まれます。
月々の光熱費は季節や住まい方、家族構成などによっても大きく変動するものです。もっとも効果的なことは、住宅そのものの省エネ性能を高めること。ならびに、省エネや節電に配慮したくらし方を心がけることなのです。
あわせて、すでにオール電化住宅を導入してある程度の年数が経過したみなさまについては、一般的にはオール電化機器の実用寿命は長めといわれておりますが、各種設備機器の交換サイクルに準じて、電化機器からガス機器への交換も検討材料のひとつに置いた場合が良いかもしれません。
オール電化住宅は、住宅そのものの省エネ性能が良い=住宅の躯体性能が良い住まいが一般的にはよく見うけられます。もともとの性能が良い住宅だけに、省エネの工夫・効果が短期間に顕れることが多いことから、すでにオール電化住宅にお住まいのみなさまは、何時訪れるかわからない、オール電化住宅料金割引廃止を心配する前に、日々の暮らしで省エネ・節電を積み重ねていくほうが、よほど理にかなう暮らし方です。
※一般的には、オール電化機器、ガス機器、灯油利用機器とも、設置から10年以上経過している機器については、随時点検、必要に応じた部品交換、または本体交換の検討を始めたほうが良い場合もあります。
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