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消費税と復興の現場で露呈した「福祉の価値」~本気で「住まい」の消費税を上げる?!
消費税と復興の現場で露呈した「福祉の価値」~本気で「住まい」の消費税を上げる?!
もとはと言えば消費税議論が活発化したのは、この大災害復興のための“復興税”だったはずです。今、政権が変わりもしたものの、なぜかそのことにかこつけたようにスタートした増税としか思えないことが悲しいのです。
さらにこれにより消費は低迷し、結果として復興の意欲をも喪失しかねないのです。既に品不足?を理由に値が上がりし始めた建材などで工事費が上がり、加えてそこに駆け込み需要やオリンピック需要の期待感や“消費税+アルファ?”で建築コストがさらに上がり、復興や景気回復の足かせとなるどころか、今後の高齢者の福祉政策までもが先細りとなることが大いに懸念されるのです。
このことは復興の現場でも言えます。あの壮絶な津波に慌ておののき即、高台移転と結論付け、移転に伴う費用負担などのことの本質を見極めることなく街全体の移転を論じたり、その一方で完ぺきとは思えない万里の長城のような防潮堤建設の巨額の予算を閣議決定するなどの矛盾が起きているのです。
今、被災地で必要なのはこうした生活の拠点である働く場所と安全で安心な住居群づくりです。それぞれの生活の場、つまり今までの農地や漁港の近くに住まいをいかにつくるかです。できればスポット的であってもできるところから防潮堤や防災壁などをつくり、そこに恒久的な住まいや働く場所をつくることが理想的でなのです。
取りあえずは仮設住宅であってもその利便性を最優先することです。津波を避け遠隔地や高台に移転してもその地域においての職場や商店は存続させ、老人にも優しい送迎バスやケーブルゴンドラなどの簡易の交通システムなどで職住を直結するなどです。
こうした配慮や計画がないまま避難所生活や療養生活を続けることは人々の生きる希望を失いかねません。荒涼とした被災地に一刻も早く一軒毎の区画の確認を急ぎ、具体的な線引きを行い、同時にもとの集落を基調に新たなコミュニティをつくることが急務です。その上でそれらをつなぎ合わせて新しい街や村にするのです。できもしない復興都市の青写真などの絵を描いたところでその実行には何年もかかりさらに多くの被災者の犠牲を生みかねません。
震災以降、改めて表面化して来た年金福祉財政など、社会や国のあらゆる無駄を徹底的に省いて国家の危機を救うべきときで、それを消費税アップで一挙に解決しようと言う考え方が問題です。今までも、20数年以前の人口動態で、少子高齢化どころか年金や医療保険そのものが危機となることは誰にも分かっていたにもかかわらず、ハイリスクの投融資や大赤字の国民休暇村など無策放任を続けた行政の原因や責任の追及がなされないままなのです。
今、震災後二年半経ってもいまだに生活の場もなくそこに住む家も、修復可能な家もそのままで、その構想も持てず、やりきれない仮設住宅生活を送っておられる多くの被災者の皆さんのことを思うと「わが家の必要性」と家が持つ「福祉の価値」を改めて思い知らされます。
■復興住宅案: 左・津波を減衰させる「簡易な防潮堤」、右・いざと言うとき駆け込める「囲われた家」(画:天野彰)
イラストは私どもが行った「2011年リフォーム&リニュアル展」にて復興案コンテストの作品の一部、津波を減衰させる「簡易な防潮堤」、いざと言うとき駆け込める「囲われた家」の案です。
今改めてこれらが見直されているようなのです。
なお全受賞作品は『月刊リフォーム』誌のサイト(外部リンク)で見られます。
次回は「10%の消費税アップで建築コストがメタボになる?!」です。
★毎週土曜日 最新コラム公開中! 次回お楽しみに♪
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