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建築家 天野 彰 都市での家づくり 広くしない狭楽し法

住まいの設計現場でよく出るお話が、コロナ禍が治まり、やや賑わいが戻ったかのように感じられる一方で、なぜか不安感を抱く人もいます。確かに気象も世相同様に荒れ模様で、暮らしや子どもたちの将来についても見通しが難しい状況です。そんな中、友人の家や住まいの広告、そしてネット情報を見ると、どれも似たようなもので、飽きてしまうと感じる人もいます。

1 家も暮らしも街も定型化され暮らしもか

街も同様で、どの駅を降りても同じような駅前を見上げれば再開発されたガラスビルと、押し込まれた商店が立ち並び、かつての賑わいや風情はなくなったと言われています。確かに、そこには"生きた街"の雰囲気が感じられないかもしれません。

また、各地にある再開発された広場も、テーマパークのように一度行けばそれで十分と言われています。自分がまるで完成予想図にはめられた「点景のピース」のように感じ、バーチャル・メタバースにいるかのようで、現実の自分とは違う虚しさを感じると言われています。これは開発者や建設業者の考えによる、定型化と定量化の産物かもしれません。

高騰する都市の中で、狭い住まいが一戸建てもマンションもこればかりになるのはやむないかもしれませんが、それによって暮らし自体が定型化されることは好ましくありません。

2 “狭さの三竦み(すくみ)”と定型化から逃れる

そんな都市の中に暮らす、狭い家に住む家族たちの住まいは、住まい方はいったいどのようなものにしたらよいのでしょう?このコラムでも何度もお話ししているのですが、都市の住まいはその利便性から必然的に狭くなります。都市部の家はどこも郊外に比べ狭いのです。

その“狭い”家から逃れて広い家に住めば家賃が高くなり、経済と暮らしが“狭く”なります。これは大変!と郊外のそのまた郊外へ移ればなるほど家は広くなりますが通勤時間にとられ、人や家族との時間、交流と社会が“狭く”なります。この追っかける狭さのことを筆者は“狭さの三竦み(すくみ)”と呼び、都市での住まいの永遠の宿命と唱えているのです。だからと言って今の与えられた定型の狭い箱のような住まいでじっと暮らしていていいのでしょうか?

3 “狭楽しさ”の発見!

筆者は小さな子どもたちを抱えながら、この狭さの三竦みから逃れるために挑戦し、一つの“方法”を見つけました。それが「狭い空間でも楽しく住む法」です。大げさに聞こえるかもしれませんが、実際には単純です。「狭い」という状況からはじまり、それが「狭苦しい」と感じさせるのか、逆に「狭苦しい」と感じるから狭いのか、という問題です。狭さそのものは変わりませんが、その狭苦しさを取り除けば、より楽しくなる可能性があると考えたのです。

そこで、その狭苦しさの原因を探りました。最初に気づいたのは、狭い家に物や家具が多いことです。これらの物を捨てるか、すべて積み上げることを決断しました。そして、子どもたちに部屋を与える代わりに、二段ベッドや三段ベッドなどを「積み上げる」ことにしました。これによって、高さ、つまり立体的な空間を確保し、子どもたちが学び、遊ぶスペースを広げることができました。

1 今の3LDKに3~5,000冊の本棚

イラスト:3LDKの壁の中に5,000冊の本?!(図:天野 彰)
イラスト:3LDKの壁の中に5,000冊の本?!(図:天野 彰)

例えば3LDKのプランの間仕切りの壁を見てみます。すると、延長が10mほどもあります。これも幅10cmほどの「貴重な」スペースを使っているのです。これはもったいない!これをすべて10cmほどの奥行の本棚にしてしまうのです。すると、なんと、3LDKの住まいに10mほどの壁面に10段に約3~5,000冊もの単行本が収まるのです!

イラスト:家具家電をことごとく積み上げる(図:天野 彰)
イラスト:家具家電をことごとく積み上げる(図:天野 彰)
イラスト:家具を積み上げると部屋がこんなに広くなる(図:天野 彰)
イラスト:家具を積み上げると部屋がこんなに広くなる(図:天野 彰)

このような考え方を用いて、今の家に無造作に置かれているすべての家具や家電を、奥行を揃えて天井まで壁面いっぱいに立体的に積み上げ、人が居る空間を少しでも広げるようにします。これは新築の際も同じ考え方で、壁=収納という発想です。もちろん、重要な構造要素はその中に上手に取り込むことが大切です。

1 6畳を2つの子ども部屋に

2人の子どもに面積を増やさずに各自の部屋を提供する方法があります。イラストに示すように、6畳の部屋の中央に従来の二段ベッドを設置し、6畳一間の真ん中に今までの二段ベッド置いて、上下の段を交互にパネルで仕切り、これを間仕切りとして活用し、2つの子ども部屋を作成します。

狭い部屋とはなりますが、子どもたちはまるでコクピットにいるかのように大喜びし、、創造的なプライベートルームの完成です。

イラスト:6畳一間を2人の子に立体的に仕切る(図:天野 彰)
イラスト:6畳一間を2人の子に立体的に仕切る(図:天野 彰)

現在の2LDKから部屋が一つ多い3LDKのマンションに移る場合、さらに1千万円以上もかかってしまうかも知れません。この方法なら、わずかな費用で部屋を一つ増やすことが可能です。こんな考えで家具を使って新たな間仕切りをつくるのです。

この方法なら、賃貸アパートでも床や壁を傷つけずに日曜大工でも簡単にできる“リフォーム手法”なのです。音や気配はありますが、家族間であれば、落ち着いて互いのプライバシーを守ることができます。そして、子どもたちが成長し、いずれ家を出るときには、また元の6畳間に簡単に戻せます。これは、狭い都市生活での「やりくり・からくり」の典型的な“狭楽し手法”です。

次回は年末の締めくくりとして、筆者自身の狭い空間からの脱却に関する“狭楽し”の工夫をご紹介します。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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