住宅関連記事・ノウハウ
わが家の狭楽しさ実例
今年もあますところあと僅かとなりました。コロナ禍が過ぎあっという間の一年でした。筆者の事務所ある渋谷のまわりや都内や主要都市の街は今再開発ラッシュでうるさく、お陰で?施工費も上がり、物価も上がって、さらに異常な円安のせいで街の賑わいの割に憂いも多く、家でテレビを着ければ世界のきな臭い映像ばかりです。振り返れば異常気象に加え、覇権主義と利益優先のエゴの応酬ばかりの一年でした。これは筆者だけの厭世的な老いた感覚からか?と若い世代に聞くと、なんと同様で、しかも諦めのような答えさえ返ってくるのです。
都市でどんな家?住まい方?筆者の場合
恥ずかしながら筆者の都市での住まいの変遷を少しお話ししましょう。田舎の広い家で育った筆者は東京に出てきて四畳半ほどの下宿を借り、そこに製図版を一つ置くとスペースがなく、幅一間ほどの押し入れの上段をベッドにし下の半分に押し入れタンスを入れ、引き出しの前半分に衣類を入れ後ろに季節外やストックを入れてコンパクトに過ごしたのです。
その後、設計や製図のアルバイトで得たわずかな資金を持ってバックパック一つで欧州へと無銭旅行に出かけたのです。各地を移動するこの荷造りでいかにコンパクトに収納するかの習練?をしたのかも知れません。
写真1左:バックパック一つでヨーロッパ無銭旅行ローマテルミ二にて(写真:旅人)
写真2右:はがきスケッチブックにレポート教授に毎回送付(画:筆者)
さらに各地で街や建物のレポートをスケッチはがき一枚にびっしり書いて主任教授に送ったのです。おかげで半年にわたる空白でも留年をすることなく卒業できたのです。まさに時代と教授のおかげと感謝しているのですが、この時時間を有効に多重に使う技?を習得したのです。
空間の立体利用と多重利用そして視覚心理の演出?
こうして限られた空間を立体的に使いさらに何度も多重に使う利用法こそ狭さの“苦”を取り去り、そればかりか楽しくもする!まさに“狭楽しさ”をわが家に実践してみたのです。下宿から1LDKのアパートでの事務所と住まい、さらに結婚して子どもが生まれてからの狭い中古の2LDKのマンションのリフォームなどで身をもって体感したのです。
その空間の立体利用と多重利用の際、さらにあの京都龍安寺の石庭のトリックの錯視(写真3・4)を含めた空間心理を遠近や対角、明暗、さらには色彩や虚像までも含めて演出をしてみたのです。
写真3左:京都龍安寺石庭広く見えるのは?対角視と錯視
写真4右:同上なんと塀の高さが次第に低くなり遠近感を演出!
それらを言葉では説明しにくいので、次にスケッチや画像で紹介します。
1LDKでの立体と多重利用
イラスト1左:1LDK事務所に来客2段ベッド、昼間はソファ(画:筆者)
イラスト2右:応接のテーブル、イスが家事コーナーに早変わり(画:筆者)
写真5左:台所との仕切りハッチ、実は書斎になる(設計:筆者)
写真6右:このライティング・ビューロー鍵がかかる(設計:筆者)
2LDKマンションでの鏡(虚像)と対角線(ダイアゴナル)演出
イラスト3左:欄間を鏡すると天井が映り続いて行き、広さを感じる(画:筆者)
イラスト4右:玄関から対角線(ダイアゴナル)プランで広く感じる(画:筆者)
空間の立体利用と多重利用さらに演出と、やや姑息なわが住まいでしたが・・・、やはり高くて狭くても都心の便利なところに住むことはよかったと思っているのですが、皆さんはいかがですか?
さて、今年も拙いコラムをお読みいただきありがとうございました。新年もまた引き続きご愛読いただければ幸いです。
次回は「子どもと住む」などをお話ししたいと思います。
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