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時世に合った家 コンビニ「方丈庵」
能登半島地震からはや2か月が経ち、いまだ多くの人が不自由な避難所生活をされています。安らぎの住まいが突然なくなり、しかもその凄まじい破壊によって多くの命を奪われたことに胸が痛みます。
さらに各地で起こる紛争によって罪のない市民の家や生活が一瞬で破壊される事態を日々目にして、家をつくる建築家として憤りを抑えられません。いったい家とはいかにあるべきかを根底から考えさせられる時世となりました。
1 しかし家は時世に左右される?
本来、家や暮らしはそう簡単に変わるべきものではないのですが、古来洞穴の狩猟の家から定住の家と変遷し、地域の気候に合わせ形を変え、やがて都市に住むようになり、社会や地政学によって住まいのカタチは変わりました。
洞穴住居から共同で住む耕作の集落や、敵の襲撃から身を守る石の家や城壁の中に住む積層の集合住宅、やむにやまれず地下に住むなどの家もありました。
一方でわが国のように多湿の風土では竪穴から高床式や、都市に住んでも京の町家のように通風を重点の開放的な木造が主流となり、大切なものだけは土蔵にしまい、いざというときは逃げてまた再興する。そのため再建や部材交換しやすい柱と梁による木組みの家となったのかも知れません。
結果、仕口が柔軟で地震や風に対しても持ちこたえる軸組構造が主流となり、さらに雪の重荷にも耐えられる柔軟な縄による仕口も生まれたのです。
2 時世のコンパクトな「方丈庵」
今回の能登半島のように、何度もの揺れや、大地もが割れ、歪み、さらに隆起するなどにはいくら新耐震基準構造の家であろうと土台から割れ、とうてい持ちこたえようもないのです。そこで住まいをもっと軽便な造りにするか、さらには弾力のあるゴムマリか、ネットのような柔軟な家にするか。まさしくあの平安末期の鴨長明が記した、大火、つむじ風(台風)、遷都、飢饉、そして大地震の「五大災厄」から逃れて、さらには長明自身の厭世の性格からか山里に潜む「方丈庵」こそが、現代の時世の家となるのかもしれません。
確かに何度も揺れる地震などの災害や、各地で起こる紛争の明け暮れの時世では、悲しいかな、すでに車やテントや、さらにはビニールハウスの方が押しつぶされることなく、いざとなればすぐに逃げられ安心なのかも知れません。つまりはこの軽い家に断熱や設備などの機能を持たせた軽便な「方丈庵」こそが、まさにコンビニエンスの“時世の家”となるのかも知れません。
皮肉にも前回お話しの頑丈な“大黒柱”のある格式のある重い家の発想からむしろカジュアルで、さらにもっと軽便なトレーラーハウスの動く「方丈庵」こそが、時世の家なるのかも知れません。あるいはまったく違う発想の家のカタチ、もしくは住まい方が新たに創生されるのかも知れません。
それは次回またご一緒に考えましょう。
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