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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 「夫婦の寝室」のあり方

長い人生から見ますと子育てなどあっと言う間に済んで彼らは出て行ってしまいます。家づくりは子どもを忘れ夫婦の家を考えることが得策です。住まいのプランニングをしていて、何度も打合せをしてきて、実施設計に移ってから大幅なプラン変更を余儀なくされる問題点が3つあります。

1つ目がお金です。行け行けどんどんで面積や設備が増え、予算が沸騰して最終の予算をどうするかです。

2つ目が家相です。突然親たちから「玄関が鬼門に入っている」などと、プランのやり替えの要求があるのです。「家相なんてナンセンス」と言っていた若い建て主も、「家相に従わなければ資金援助をしない」などと親からの“経済封鎖”で、この件あっさりチョン!とあいなるのです。結局プランは一からやり直しとなるのです。

3つ目は、厄介で不可解なのが夫婦です!ま、家づくりでは当たり前のことなのですが、これが当初お互い言い出しにくくて、と言っても、これは建て主夫妻と設計者である私どもとの間のことなのですが・・・、そうです。「夫婦の寝室」のあり方なのです。

1 バストイレは創造的空間

住まいにおいてバスルームは狭い空間ですが、トイレや入浴をすることは今までの生活や思考の流れをリセットし、ときには人生を大きく変えることさえあるのです。実際に議論の最中や事態が窮地に落ち入ってもトイレタイムやバスタイムを取るとびっくりするほど考え方や状況が変わることもあり、日常生活からわれに帰り、未来を見すえ、さらに過去を振り返ることが出来る不思議な空間でもあるのです。

狭い個室によって自身が開放されて邪念がなくなり、すべての神経が集中されて新たなアイデアや創造を生み出すからです。特にトイレはこれからの人生をも変えかねない重要な思考の場となることが多いのです。このトイレを単に“用を足す”だけの空間にしてしまわず、清潔でゴージャスなサロンにするのです。

トイレを創造的空間に
トイレを創造的空間に(天野彰)

浴室の脇の洗面脱衣室がヒントです。洗面であり、洗濯室の機能しかないのですが、この空間こそリビングの一部と見間違えるほど広く快適なサロンとするのです。鏡も壁一面の大きなものにし、ここにトレーニングマシーンも置いて健康で美しい体を“創る”のです。これはもしかの介護の際も広く安心です。バストイレはまたの名を「化粧室」とも「パウダールーム」とも言われます。トイレのコーナーを小さな化粧台にして壁面を鏡にするだけで広々とします。トイレとバスルームそして洗面脱衣室をエッチングのガラスの仕切りにして、開放的にし、化粧カウンターを大理石などとし、間接照明で柔らかな光と心地よい音楽でリラクゼーションサロンとなるのです。家族も来客もトイレやパウダールームに行くのが楽しみとなります。

狭い家こそバストイレを広く贅沢に

狭いマンションやアパートこそ、このトイレ空間やバスルームを第一に考えることが大切です。その反対にどんなに大きく立派な家でもこのトイレが貧弱だと、豪華な家もそこに住む家族も貧弱に見えてしまいます。しかし実際は狭いマンションだからトイレも狭く玄関も狭い。従って仕上げや設備もそこそこでいい、と言うのがマンションやアパートの設計の考え方です。最小空間であるビジネスホテルなどよい例でそのコストから経済効率優先で、うんと安普請につくり、ついには耐震構造までを偽装するような悲しい現実もあるのです。

この経済感覚がとんでもない間違いなのです。同じビジネスホテルでもトイレや浴室などの設備を極力広くしゴージャスにし、ベッドも硬いしっかりしたものとすると宿泊費が2、3千円高くなってもいつも満室となること請け合いです。マンションも賃貸のアパートも建売りなどの小住宅も同じです。わずか一坪もない玄関や浴室・トイレをどれほど贅沢にしたところで狭いがゆえに施工費も一戸あたり4、50万円と変わらないはずです。
これで高級ホテルの豊かさになれるのなら安いものです。

しかし、かと言って過剰設備にするのも問題です。最近のマンションや展示場では、テレビがあったり、電話を付けるなどの設備が目立ちますが、やはり狭く、仕上げもクロスやプラスチックの域を出ていないのです。せめて本物の素材を多用し、豪華な御影石や大理石などの石張りとし、壁も自然の珪藻土や檜貼りなどにしたいものです。珪藻土の無垢のパネルも発売され、湿気や臭気対策も心がけたいものです。

マンションでもバストイレのリフォームは可能

マンションでは水回りなどのリフォームは難しいものとされてきましたが、最近は設備機器のメーカーなどがリフォーム界に参入して、新しい機器やシステムなどを開発し、かなりのことができるようになりました。空間を広くしたり、ユニットバスに取り替えたりなど斬新なリフォームも可能となりました。マンションなど集合住宅の場合はトイレの太めの排水管(直径10センチほど)がコンクリート床(スラブと言う)を貫いて下に落ちて行き、これが階下を通って流れているのです。従ってこの配管自体をやり直すことは不可能なのです。トイレの配管の位置さえ大きく変えなければ便器の交換や浴槽は床上で可能なのです。最近は便器がコンパクトされ、その分空間も広々とできて斬新となり、リフォームも可能となっています。

ベッドからトイレに腰を動かして行けるベンチ
ベッドからトイレに腰を動かして行けるベンチ(設計K邸・写真 天野彰)

トイレからさらに浴槽まで伝って行ける
トイレからさらに浴槽まで伝って行ける(設計R邸・写真 天野彰)

これからのサニタリーのリフォームはただ機器を取り替え、仕上げや空間を贅沢にするだけでなく、老いに対処して温かく、そしてやさしいリフォームとし、いざ倒れたときなどの緊急時の通報や、ベッドからトイレまで自力でベンチを伝って行けるよう、ベッドルームとの位置関係など全体配置を考えて行なうようにしたいものです。

ベッドから即トイレにいけるプラン配置
ベッドから即トイレにいけるプラン配置(天野彰)

2 「夫婦の寝室」のあり方

「夫・婦寝室」は「夫寝室」と「婦寝室」

「あのー、二階の間取りがちょっと・・・」で始まり、「もう一つ、部屋が欲しいのですが・・・」となるのです。奥様からの「もう一つの寝室」の要求です。これが案外設計の終盤になってから出るから厄介なのです。

たいていのご主人方は「な、なぜだ?」となるのですが、明らかに部屋を別々にして欲しい、と言う奥さんが多いのです。理由は奥様の安眠のためなのですが、住まいの設計でこうもリアルな話題となるとやりにくいものです。この件、ある程度は分かっていても、「こうして、ご主人と奥様の別々の寝室にしました」などと言うわけにもいきません。

あるとき奥様の要望を誤解して、この「もう一つの寝室」を提案しましたら、「あら?どうして?私たちは一緒よ!」などと肩すかしに会い、なんともやるせない思いをしたこともあるのです。以来、この“犬も食わない”夫婦の寝室を「どうでもいいことですが、ご主人のいびきで・・・」などとやんわり他の家の例などを上げながら話を進めるのです。設計する当方にとっては、とても「どうでもいいこと」などではありません。あとで「夫寝室」「婦寝室」の要求などがあると、二回も実施設計をすることになりかねないのです。

離れすぎない「夫・婦寝室」

夫婦が別々の部屋で休む、その理由が、いびきや寝言がうるさい(騒音)。寝る時間と起きる時間が違う(時差)。そしてクーラーをつける、つけないなどの互いの温度が違う(温度差)で、意外や意外、子どもが成長して出ていくとそこにどちらかが移って夫婦別室になってしまうことが多いのです。この「夫寝室」「婦寝室」は廊下などを隔てていると、もし深夜突如心筋梗塞などを起こしたり、賊などが侵入するなど、お互いになにかあったときに気が付かないなどの悲しいことにもなりかねないのです。そこで「夫・婦寝室」の提案です。

簡単に夫・婦寝室
簡単に夫・婦寝室(天野彰)

「夫婦寝室」ですが「夫・婦」の間の「・」がミソです。この「夫・婦寝室」は時々「夫/ 婦寝室」ともなるのです?「/」は夫と妻とのベッドの間の隔て(へだて)です。隔ては簡単には分厚いカーテンでも良いし、大きなカーテンレールを天井に取り付け、じゅうたんをタペストリーのように吊るしてもいいのです。こんなことでお互いのいびきや時差も何とかカバーすることもできるのです。

もちろん本格的に襖(ふすま)や引き戸を立てて、温度差までもしっかりコントロールする隔てもできます。まさしく夫婦の寝室を冷たく別室にすることなく「・」から「/」の臨機応変の隔てで互いのプライバシーも万全となるのです。

簡単に夫・婦寝室
岐阜N邸、手前が夫奥が妻の寝室。真ん中の梁下に引き込みの襖(写真:天野彰)

「夫・婦寝室」で帰って夫婦仲良く?!

もともと夫婦の寝室が1階であったり、なぜか夫は早い時期から一階の和室で寝起きしているご夫妻が多いのです。そんな1階と2階に別れて寝ていた夫婦がある日、今日は休みとは言え、なかなか起きてこないと1階の夫の部屋に行って震撼としたと言うのです!寝ているのとまったく変わらない状態で冷たくなっていたと言うのです。再三にわたる心臓マッサージなどの甲斐なく帰らぬ人となってしまったのです。「そう言えば明け方なにか物音がしたような・・・胸騒ぎがしたような・・・」と、「こんな小さな家で、なん で・・・?」と泣き崩れる奥さん・・・。

確かに夫が隣りか、せめて2階の部屋で一緒に寝ていれば苦しむ声や音が聞こえていたかも知れないのです。いずれにせよこのようなリスクが高まる年頃に夫婦が離れて寝ていること自体が危険です。実際に1、2階で別々に寝ていて侵入者があり、妻が危害を受けた例もあるのです。

こうして家づくりは夫婦が試されるときでもあるのです。先のように「おまえ、そんなことを考えていたのか?」で始まる家づくりやリフォームは、夫婦のホンネのぶつかり合いとなり、結果夫婦が住みよい家となるのです。

住宅雑誌などで情報を仕入れる妻と、仕事が忙しく置き去りにされる夫が、「妻に任せています」などと言っていては、将来住みやすいホンネの家にはなりません。家づくりはまるで夢と現実のせめぎ合いともなるのです。そんなときこそ建築家は、家の設計はもとより、「犬も食わない夫婦喧嘩」の仲裁役となるのです。

簡単に夫・婦寝室
夫の畳の座敷の寝室と妻のベッドの「夫・婦寝室」(天野彰)

簡単に夫・婦寝室
横浜T邸(筆者設計)夫の畳と妻のベッドの洋室(写真:天野彰)

イラストや写真のように引き込み式のふすまで互いのベッドを仕切ったり、夫は和の座敷、妻はベルサイユ宮殿のベッドルーム?となるのです。これなら寝室は一部屋ですみ、時差も温度差も気になりません。どちらか風邪を引いたときにも仕切って寝られて便利です。

あるとき、「いやぁ、すーと、ふすまが開いてね。妻に呼ばれてどっきり!」ですと?!やはり“犬も食わない”方が良かったかも知れませんね。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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