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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 杉浦充 JYU ARCHITECT充総合計画 一級建築士事務所2世帯住宅のすすめ!積極的に進める理由徹底解説

1. 2世帯住宅の主なパターンについて

2世帯住宅と一昔前のドラマにあるような、嫁姑問題までを想像しないにしろ、ネガティブなイメージをもたれる方は未だに多いのではないでしょうか?欧米並みに個人主義が進んだ現代では、自身の親との同居であっても抵抗をもつ方もいらっしゃることでしょう。高齢化への一途をたどる現代ですが、晩婚化傾向は一定の歯止めがかかり、団塊ジュニア世代の静かな出産ブームとも捉えられる現在です。

これらの社会背景と景気対策である相続時精算課税制度などの住宅取得にまつわる税制優遇処置が相まって、それでも世帯住宅の建築を検討される方は多いと思います。

近年では経済的なメリットを最大限生かし、親族間のみならず独り身となったご年配の方々や、未婚者同士が適度な距離で助け合える新しいスタイルの2世帯(多世帯)住宅も増えていますが、ここではごく一般的な2世帯住宅から扱います。これを読み終わる頃には、“仕方なく2世帯”という気持ちが払拭されて、“積極的に2世帯住宅を建てよう”と思えるようになっているかも。世帯間がほどよい距離加減で暮らせる2世帯住宅のヒントになることでしょう!

幾つものタイプに分類されるものですが、家族のライフスタイルが千差万別であるように、世帯間の距離やかたちも千差万別です。これらの型の要素が混ざった唯一の建物となって実現するものです。自分たちに最も合うと考えていた型式が、設計段階のプロセスにより、当初全く予定していなかった型式による建築に至るケースもあるものです。基本的な3タイプを解説して参りますが、あくまでも自分たちの理想型を模索するうえでの参考資料として読み進めましょう。

2世帯住宅を検討されている方にも、将来もしかしたら2世帯かも?と漠然と考えている方も、ぜひ参考にしてみてください!

2. 完全共有型 家の諸機能と諸設備を全て共有するタイプ

生活に必要な浴室やキッチンなどの諸設備や玄関や階段などの建築の機能を共有しているため、建築コストに対しては最も有利なタイプです。緊急時や子育て時期に助けが得られるなどのメリットや、どちらかの世帯が在宅している割合が高いため、防犯面でも有利な型式といえます。世帯間の気兼ねない関係が保てる場合は最も理想的な型式です。このタイプは更に生活共有型・生活分離型の2つに分類できると考えます。

生活共有型

世帯にとらわれずに同じ家族として日常生活を完全に共有するタイプ。サザエさん一家のような古き良きスタイルが当てはまります。一昔前の一般的な家庭は、今でいうところの2世帯住宅であることが分かります。この逆転思考により2世帯住宅という言葉は、核家族化や世代間のライフサイクルのずれが生んだ現代の特殊な言い回しであると解ります。例えば、外部でのお勤めでなく自営業の場合など、両世帯の基本的な生活リズムがほぼ同じであるケースに多く見られます。共に過ごす時間が長い分、必要に応じて世帯や個人のプライベートな時間が持てるような、個室の位置や世帯間の動線にポイントが置かれます。各々の生活音がストレスにならないように、諸室の用途や使用時間を考慮した上で部屋の上下階の関係や配置を充分に検討する必要があります。

年配世帯の個室はプライベートリビングでもあり、比較的長い時間在室する場所です。直上に、子供部屋や小さな子供のいる世帯のリビングが重なるような配置はできれば避けたほうが良いでしょう。しかし、かわいい孫が出す「成長の過程の音」とでも思えれば、この期間も我慢にならないかもしれません。また、年をとるほど深夜や早朝のトイレの回数が増えるものです。トイレの個数や位置は年配者の動線に配慮され且つ、トイレの流水音等で深夜や早朝に他者の安眠を妨げることのないような位置を検討しなければなりません。

3 完全分離型 家の諸機能と諸設備を全て分離するタイプ

完全共用型の生活分離型 2世帯住宅
完全共用型の生活分離型 2世帯住宅

生活分離型

家の諸機能(ハード)は共有するが生活のサイクル(ソフト)は分離するタイプ一方の世帯に子供がいない、又は子供から手が離れた単身者である場合など、比較的住まう人数が少ない場合や、仕事柄不規則で外出時間が長く世帯間の日常生活のサイクルが元々ずれている場合等、浴室やキッチンなどの諸設備を使用する時間帯が重ならないために共有できるケースが挙げられます。

前者の場合は、単身者世帯の個室空間がもう一方の世帯から受ける生活音があまり気にならないような空間的配慮や配置がポイントになります。浴室や洗面室、キッチンなどの住設備機器の使用時間が重なってしまう頻度によっては、準住設備としてシャワーユニットや洗面台、ミニキッチンなどを必要に応じて増設することで、よりスムーズな関係が保つことが可能です。後者の場合でも世帯間の配慮は基本的に前者と同じですが、一方の世帯の朝が早いとか深夜に帰宅するなどの異なる生活の時間帯による生活音に配慮して、普段在宅の多い世帯のプライベートな空間と、共有する玄関との配置関係は特に考慮する必要があります。時間帯のずれによっては調理音や匂いにも配慮が必要です。

これらの完全共有型は、公共料金や電話代などの通信費の基本料金が1世帯分で済むという利点がありますが、支払いの割合や分担などの世帯間に生じる事項について、あらかじめルールを決めて、より円滑な関係を育むうえで重要なポイントです。

完全分離型に比べてデメリットである世帯間のプライバシーや生活音の問題は、十分な部屋の配置計画の他に、防音壁や防音床などの仕様によっても緩和が可能です。これらの具体的な仕様については、設計や構造、技術に関する内容になりますので、詳しくは専門家へ相談することをおすすめします。

お母さまの寝室から一番離れた地下にある、ご主人のオーディオルーム 兼 書斎は、帰りの遅いご主人が深夜にくつろいでも迷惑にならない位置
お母さまの寝室から一番離れた地下にある、ご主人のオーディオルーム兼書斎は、帰りの遅いご主人が深夜にくつろいでも迷惑にならない位置

若夫婦のためのセカンドリビング
若夫婦のためのセカンドリビング

不規則で残業の多い若年世帯と、規則正しい安定した日常生活を送る熟年世帯というような、全く生活サイクルの異なる世帯が同じ場所に住む、現代の姿に沿った都市型2世帯住宅であり、現代長屋といえます。玄関からキッチンや浴室などの住設備がそれぞれ戸別にあるために、2世帯住宅のなかでは建築費用が割高傾向にはなりますが、2軒を建築するよりは経済的であることと、形状的に世帯間の生活時間のずれによる問題が生じにくいために、都市部で最も推奨する型式です。今回は2階建てに絞って話を進めていきますが分離の形状により下記の3つに分類して説明したいと思います。

・上下階分離外階段方式
・上下階分離内階段方式
・左右分離メゾネット方式

完全分離型 外部階段形式
完全分離型 外部階段形式

上下階分離外階段方式:外部階段型式

上下の階を完全に分離し、上階の世帯の2階にある玄関まで外部階段で移動するタイプです。このタイプでは生活時間帯の相違がもたらす上階の下階への生活音をできるだけ解消することや、お互いの生活音がストレスにならないように上下階の用途同士の関係や配置を充分に検討する必要があります。音のことを優先すれば、不規則な若年世帯が下階で、滞在時間が多く子供のいない熟年世帯が上階にあることが本来は理想的です。しかし、年配者の上下の移動やエレベーター設置などの費用を考慮すると、上階が若年世帯とする場合が一般的です。

この場合には年配世帯の寝室の直上や近くに、2階の玄関や外階段を配置してしまうと、深夜の帰宅音が下階の安眠を妨げてしまいかねません。子供部屋や小さな子供がいる場合はリビングの位置も充分注意して計画する必要があります。

外部階段にすることの最大の利点は建築面積の緩和が受けられるため、2階に上がるための階段室により1階世帯の面積が犠牲にならず、1階もフルに面積が活用可能なことです。都市部の狭小地などでは威力を発揮します。将来の状況によっては一方の世帯を丸ごと他人に貸すことも可能であり、ドライな都市に相応しい型式といえそうです。

完全分離型 外部階段形式(左:1F部分の玄関『カドの家』 右:外部階段の例『本の栖』)

2世帯住宅-完全分離型-上下階分離 内階段形式

世帯間を上下の階で完全に分離する形態のうち上階の世帯の玄関は1階に設け、2階までは内部階段で移動するタイプです。基本的には上下階分離-外階段方式に準じますが、上階世帯の1階にある玄関と2階へ上がる階段の位置が、1階にある年配世帯の寝室の近くにならないように配慮する必要があります。1階に世帯間を行き来できる、施錠可能な入り口を設けておくことで、普段はプライバシーを保ちつつも、年配世帯の介護が必要になった場合や、1つの世帯として上下階を一体で使用したい場合等にフレキシブルな使い方が可能です。このように将来の様々な生活形態の変化に対応しやすく、比較的安価で改築までも可能なメリットがあります。

上下階分離-外階段方式に比べ、一階部分に上階用の玄関と2階へ上がる階段スペースをとられてしまうという欠点はありますが、下階の面積などの条件が合う場合には上下階分離-外階段方式よりもコストを抑えることが可能です。これらの上下分離型に共通する世帯間の音に関する問題は、充分な部屋の配置計画の他に、防音床などの仕様によっても緩和が可能です。具体的な仕様については、設計や構造、技術に関する内容になります。

完全分離型 内階段形式の間取り例
完全分離型 内階段形式の間取り例

2世帯住宅-完全分離型-左右分離メゾネット方式

両世帯の環境を平等に世帯を左右に分離してそれぞれの世帯が2階までを使用する長屋型式です。両世帯に階段があるために戸建て感覚で生活することが可能です。世帯が上下階で分離されないために、歩行音など消すことの難しい重量衝撃音など、世帯間ストレスが生じないことが最大のメリットです。廊下や階段などの移動のために一時的に使用する空間を世帯間の界壁側に設けることで、更に音に対する諸問題を解消することが可能です。このように遮音、防音を優先したい場合には最も有効な形態だといえます。

また、上下階分離内階段方式同様、世帯間の界壁に施錠可能な入り口を設けておくことで年配世帯の介護が必要になった場合や、一つの世帯として一体で使用したい場合等にフレキシブルに対応でき、将来の様々な生活形態の変化に対する改築も比較的容易なのがメリットです。形態上、両世帯の採光や通風などの住環境を概ね平等にすることが可能なので、敷地が周囲よりも低く囲まれている等で、一階の条件があまり好ましくない場合にも有効です。しかし他の方式よりも階段スペースに面積がとられてしまうため、狭小地にはあまり向きません。

完全分離型 中庭による世帯間の距離『本の栖』
完全分離型 中庭による世帯間の距離『本の栖』

以上が主な完全分離3タイプとなり、戦後の世代間の価値観の相違や、世帯間の生活時間の違いを考えると最も無難な型式といえます。元来2世帯住宅に生じうる金銭絡みの些細な問題や手間は最初から生じませんので、ガス・水道・電気などの公共料金があらかじめ分けられていることは、意外と気付かないメリットかも知れません。

他のタイプでは、それぞれの世帯で使用した量を明確にすることができないこともあってか、電気の消し忘れなどの些細なことを必要以上気にしてしまったり、逆に気にされてしまったりと、あつれきが積み重なることで、本来リラックスしたい唯一の我が家にいながらも気が抜けないという、世帯間ストレスが生じ易いともいえます。折角同じ場所に住むのに全く分けてしまうのは忍びない…という気持ちから、充分に討議のないまま共有率の高い住まいを建てたばかりに、生活を開始してみると不測の世帯間トラブルが多々生じ、あらかじめ完全に分けておくべきだったというケースが大変多いようです。

時代や価値観の変化以上に、生活時間のずれは親しき仲や礼儀をもっても太刀打ちできない現実があるようです。完全分離型であっても外部の吹き抜けなどの外部空間の造られ方によって適度な世帯間コミュニティを保つことは可能です。自分たちに合った適度な世帯間距離これは2世帯住宅の主要なテーマであり、設計期間に充分話し合うことが大切です。

2世帯住宅-部分共有(分離)型:家の諸機能と諸設備を部分共有(分離)するタイプについて

部分共有(分離)型とは、文字通り建物の設備や建築機能の1つ、もしくはいくつかを、その世帯間に一番合うカタチで共有(分離)する型式です。結果としてコストメリットも得られる総合バランスをはかった型式といえます。配慮する点は、完全共有型と完全分離型でこれまでに述べてきたことが、共有割合に合うかたちで反映されます。ライフスタイルによりいろいろなパターンがありますが、一般的に共有することの多い項目を下記に挙げてみます。

・玄関
・リビング
・キッチン(ダイニング)
・客間(多目的室)
・浴室
・納戸
・階段

これらの単独共有だけでもいくつか形がありますが、複数共有することで更に色々なカタチが広がります。

なかでも建築機能にあたる玄関やリビング、ダイニング、建築設備にあたるキッチンは世帯間のコミュニティーゾーンになりますが、リビングの共有は玄関の共有よりも世帯間の距離が近づくように、建築部分や設備の種類によって世帯間の距離が計られ、更にはその大きさや配置などで、その距離が調整されることになります。それではどのように共有可能事項を検討すればよいのでしょうか?

このことを検討するにあたっては、それぞれの世帯や個人の生活サイクルを時間ごとに書き出すことが非常に役立ちます。お互いの生活サイクルの状況がつかめることで、新環境のデモンストレーションになり、生じうる問題が予想できるのです。浴室は共有できそうだ!玄関はやはり分けたほうが良さそう…など、判断がより明確にできるので、ぜひ書き出してみることをお勧めします。

2世帯住宅は特に、十分に検討されないままコスト重視で建築してしまうことで中途半端な結果を招いてしまう恐れがあります。後での手直し工事ほど割高なものはありません。設計者等の専門家や第三者を交えて充分検討することも成功の秘訣の1つでしょう。

完全分離型 ポーチ兼屋外デッキスペースによるコミュニティゾーン例

4 建築コストと優先事項の関係について

2世帯住宅 『カドの家』のスケッチ

こちらに関してはとにかく意見交換が重要です。2世帯住宅のメリットである経済性は、タイプによって幅が生じることが理解できたと思いますが、ここでは1回り大きな視点で、結果的に無駄な出費が抑えられるポイントを述べたいと思います。

当初は住めば都とばかり、住んでしまえば何とかなるものだと経済性に重点をおいて建築を進めてしまいましたが、実際に住んでから世帯間のいくつかの不具合が生じ、それらの問題をその都度直していくことになり、結果的には優先したはずの費用までも高くついてしまったというのは実際耳にするものです。普段、表立たずに済んでいることは、各々が無意識に都合の良いように解釈している、というのが普通の人間であります(笑)あえて意見を伝えることで、時には言い合いにまで発展してしまうこともあるかもしれませんが、家を建てること=家族をより深く知る絶好の機会であるとポジティブ思考に切り替え、双方が実直な意見交換を楽しむ気持ちのゆとりをもつことは大切なことです。

5 2世帯住宅の建築における意見交換の重要性

2世帯住宅 『カドの家』

2世帯住宅の場合は自身にとっては、息子(娘)世帯であったり、親世帯であったりと家族内にとどまりません。それなのに、親や息子(娘)ということで「遠慮や甘え」もあって十分な意見交換がなされない恐れも生じます。古き良き日本の習慣でもありますが、少々険悪なムードになっても、よりよい未来への意見交換として望んでいただきたいと思います。将来ストレスレスな生活のためにコストを抑えたいという気持ち以前に、世帯内そして世帯間で十分な話し合いの上で、最優先すべき項目を整理し把握しておくことは、家づくりで結果的に費用を抑える最も重要です。項目を増やすと費用もかさんでいくと思われがちですが、事前の話し合いにより、プランの合理化がより計れ、結果的に優先したいことに費用を投じることができ、後からの不測な事態による追加工事の出費も抑えることになります。

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建築家 杉浦充建築家 杉浦充

建築家 
杉浦充
JYU ARCHITECT充総合計画 一級建築士事務所

1994年 多摩美術大学 美術学部 建築科 卒
1994年~97年 ゼネコンにて施工と設計に携わる
1997年~99年 多摩美術大学 大学院 博士前期課程 修了
1999年~01年 建設会社に復職 (計8年在籍)
2002年 JYU ARCHITECT 充総合計画一級建築士事務所 開設
2010年 京都造形芸術大学 非常勤講師
『建築家は単なるデザイナーではありません。与えられた諸条件のなかで、建築主が最大限利益を得られるように、建て主の「代理人」としてコンサルティングする任務を負います。今後も設計者の目の届く範囲で一棟一棟の可能性を探りながら、質の高い適正価格建築の実現に取り組んで参ります。』
デザイン、機能性、コストなど総合的なバランス力に定評がある建築家。