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2025年4月1日(火)
「家相」は新しい家を創れるか?
やはり「家相」はわが国の精神文化なのか?
日本に訪れた欧米の建築家たちから妙に感心されたことは、日本の文化の不思議だと言う。近代的な都市や建築の反面、その生活に精神性を感じると言うのです。
その理由に日常的な“裸足”の生活、その所作や作法を改めて日本の素晴らしい精神文化だと言うのです。内と外の生活を匠に暮らす若者や、特別ではない和服や浴衣の生活など、さらにその食の美に至るまで確たる「ルール」さえ感じたと言う。彼らのホンネの意見が、近代国家のわりに、なんと「伝統的で文化的な生活」を、スシ・テンプラ・スキヤキなどの「食」以上に、和の「衣」と「住」の自然な生活が「子育て」までを含めて奥の深い生活文化に見えると言うのです。
私たちが当たり前と思っていることを不思議なことと思っていることに驚いたものですが、中でも驚いたことは、建築家たちだけに住まいの縁起?の“キモン”などの「家相」までに興味を持っていたことのです。
「家相」は「方位」と「時」
そこで「家相」を彼ら海外勢の目線となって、客観的に考えてみますと、なるほど私たちの家づくりや生活には「方位」が深く関わっていて、それも単に物理的な方位だけではなく不思議な意味があることが分かります。そこには時があり色もあるのです。
相撲の土俵の吊り屋根の四隅からぶら下がる房に4色あって、赤房・白房・黒房・青房と言い、相撲の中継ではよく聞く言葉ですが、これこそ東西南北の方位です。
あの明日香村の高松塚古墳の彩色壁画の白虎や玄武の絵画がそれで、赤は南方位で朱雀(すざく)、白は西方の白虎(びやっこ)、黒は北方の玄武(げんぶ)、そして青の東方の青龍(せいりょう)となり、1300年以上も前の飛鳥の時代からの伝統的でしかも正確な方位なのです。
その方位は八方になり、さらに細分化され、12さらに24方位と細分化されるのです。全方位の360度の30度、さらに15度ごとに方位の意味があり、それがまた子・丑・寅・・・などの十二支と連動し「方位」と「時」を刻むのです。
真北が「子」で、時刻の子(ね)の刻、すなわち深夜0時前後で、その隣の丑と寅、丑三つ時などの3時4時で方位は北東、で丑寅(うしとら=艮)方は鬼が出入りする不吉な方角、すなわち鬼門(きもん)として古来忌み嫌われてきたものとなるのです。家の間取り、すなわちプランニングにも、またそこに住む人たちにもこれほど方位と時刻に深い係わりがあるとその存在を認めざるを得なくなります。しかもこの方位、すべて“家長”を中心に考えられていると言うのです。最近、家族とりわけ親子、夫婦に大きな異変が起きているような事件多いこともなにやら気になります。
家づくりに関わる者として確かに住まいのプランにも大きく影響を受けているように思えてならないのです。なぜか家に“家長”の存在がないのです。家族のありようが、与えられたプランに無理矢理合わせて暮らしている?そんな感さえするのです。
「家相」は家づくりの手引書で環境学
そこで改めて「家相」の起源をちょっと探ってみましょう。毎年師走から新年にかけ干支(えと)が話題に上がり、年賀状やカレンダーなどでの干支のキャラクターに関心が集まります。
わが国は古来、日常的な干支を中心としてそれを時や日付と年号、さらに方位の八方位と、さらに細かく24方位を表す表現にしているからです。その順位で年号までも定められているのです。
ちょっと難しくなりますが、今年は癸卯(みずのとうさぎ)で来年は甲辰(きのえたつ)の年となるのです。こうした歳回りや年月の干支は大自然の宇宙的な五行の「木火土金水」のそれぞれに兄(え)の陽と、そこで弟(と)の陰を順に当てて、甲乙丙丁・・・の十干(じっかん)とし、それに十二支とを組み合わせて干支(えと)まさしく兄弟(えと)の十母の十二支となり、60年周期で回って来年は甲辰(きのえたつ)の年となるのです。難し、ついでに、あの易の「五行説」の世界観や自然界の摂理は“前者が後者を生み出す”まさしく相生(そうしょう)の循環の意味と、その反対に後者が前者を倒す相剋(そうこく)と捉えられてもいると言う。まさしく相性や日時や方位の吉凶を占う易や八卦となって、スピリチャルな風水や家相ともなっているようです。
家相は昔から多くの人が気にし、家づくりでは必ず一度はその話題が上がる古来家づくりの手引書とも言えるのです。そのため時に合理的なプランを変更させられこともあるのです。
実際に病や事故など何か災いや障りでもあると「家相が悪かったのではないか?」などと、時にそのせいで家を建て直す人さえいるのです。われわれの大先輩である建築家の清家清氏をして「これは家の通気を旨とした科学!」「家相は住まいの設計の統計的な手引き書だ!」などと言わしめた健康や安全を考慮した古来「環境学」とも言えるのかも知れません。
今、親たちはそんな家や方位の摂理や価値観を子どもたちに教えているのでしょうか?「床の間」も無く、めったに家にいない父親の居場所を中心に構えると、子どもや妻とも接する機会が多くなり、家自体の風通しも家族の見通しもよくなるのです。それが「家相」の原点とも言えるのです。
次回はそんな新しい「家相」の家づくりを考えてみましょう。

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