早坂淳一 保有資格:AFP(日本FP協会認定)/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/一般社団法人生命保険協会認定/シニア・ライフ・コンサルタント/
工務店支援プロジェクトに従事したのち、工務店にて営業を経験し、現在はハウスネットギャラリーを運営する第三者機関ネクスト・アイズ(株)にて、住宅コンサルタントとして活躍中。
執筆・監修:ハウスネットギャラリー事務局 早坂淳一
更新日:2024年6月11日
高気密・高断熱住宅には明確なルールはありません。そのため20年前の基準でも高気密・高断熱の家と言えます。
最近よく耳にするZEH住宅は広い意味で高気密・高断熱住宅のカテゴリーには含まれますが、ZEH住宅=省エネ住宅・快適住宅・健康住宅ではありません。たとえ、ZEH住宅でも気流止めなどの施工がずさんだと室内の温度差が大きくなります。設備の経年劣化やメンテナンス不足により、本来の性能を発揮できない例もめずらしくありません。つまり、家をつくるハウスメーカーや工務店の技術によって、最終的な性能が決まります。
今回は、そんな高気密・高断熱住宅の特徴から注意点のほか、依頼するハウスメーカーごとの比較ポイントなどをご紹介します。
「高気密」とは、外部と家のすき間が少なく、気密性が高いこと。つまり、ウインドブレーカーやダウンジャケットなど、風を通しにくい素材の服を合わせるイメージ。風を通しにくいので体から熱が奪われることなく、暖かい状態を維持できます。
「高断熱」とは、家の壁に外気からの影響を受けにくい断熱材などを入れて、家の中の温度が外気の温度に影響される度合いを減らすこと。家の中から熱が逃げる、外から熱が入るのを減らします。
高気密・高断熱住宅にするメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?
家全体が暖かい状態に保たれるので、ヒートショックが起きる可能性を減らせます。ヒートショックとは、急激な温度の変化がもたらす体へのダメージ。特に注意すべきは脱衣所。寒い脱衣所から暑い浴室や浴槽へ入ることで血圧が急激に上昇と下降します。その変動で心臓や脳に負担がかかることから起こるものです。
参考資料:入浴時の温度管理に注意してヒートショックを防止しましょう(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター)
また、室内温度差が少ないということは、寝室環境も快適ということ。「住環境が睡眠・血圧・活動量に与える影響に関する大規模実測調査」(大学共同利用機関法人 国立情報学研究所)によると、高断熱住宅への転居後の室温上昇によって睡眠効率が上がったことがわかりました。また、冬期の住宅・介護施設内の調査では家を寒いと思う頻度が少ない人ほど健康寿命が平均4歳長い傾向にあることもわかりました。
室内の温度変化が少なくなるということは、結果として冷暖房の効きがよく、光熱費が抑えられます。光熱費が抑えられるということは、CO2の削減につながるので環境に優しいともいえます。
高気密・高断熱住宅は、名前の通りすき間が少ない住宅。したがって室内からの音漏れが少なく、外から入ってくる音も少なくなります。つまり、車の往来が激しい道路、または鉄道の線路沿いに面しているようなお住まいでも、大きな音が気になりにくく快適に過ごせるといえます。
家の寿命を縮めるもっとも大きな原因のひとつは、外壁の内側や屋根周り、床下に発生する内部結露。この内部結露を放置してしまうと、家の内部にカビが生えて木材が腐り、結果として家の耐久性が損なわれます。また、カビはダニが繁殖する原因となります。結果としてダニが原因のシックハウス症候群やアレルギーなど健康被害のリスクも高まります。
高気密・高断熱住宅は、その高い気密性・断熱性により建物内部の結露が少なくなります。
高気密・高断熱の住宅でも、もちろん注意点やデメリットがあります。上記で述べたようにいろいろなメリットがある高気密・高断熱住宅ですが、最大のデメリットは、建物本体価格が通常の住宅より高くなることです。
適切な断熱材を適切な量、使うことはもちろん、その断熱材の施工・配管や配線などの小さなすきまに至るまで気流を留める工事が必要なため、通常の住宅と比べ多くの工程が必要になり建物本体価格が割高になります。
一方、メリットでふれた光熱費や建物メンテナンス費用を抑えることができるので、ライフサイクル(住宅維持管理)コストを踏まえると、長い目で見れば高気密高断熱が必ずしも高いとは言い切れません。
高気密・高断熱住宅は、屋根や壁の断熱材をいくら増やしても、どうしても窓や玄関といった開口部から多くの熱が放出されてしまいます。せっかく壁や床、天井が高断熱でも、断熱性能が低いサッシや玄関ドアを選んでしまうとそこから熱が失われてしまいます。設計段階から窓や玄関の性能もしっかりチェックしておきましょう。
強制排気管のない石油ストーブ、石油ファンヒーターなどは、燃焼で室内に放出される水蒸気により結露を引き起こします。また、高気密・高断熱住宅の性能が上がれば上がるほど、ガスコンロすら途中で消えてしまうこともあります。
つまり、高気密・高断熱住宅でどうしても開放式暖房器具を使いたい場合は、複数の窓を開けて換気しながら使用する必要があります。
ただし、十分な換気をしようとすると、高気密・高断熱であるメリットは得られません。
気密性が高い住宅は、特定の箇所に空気がよどまないよう、設計段階から綿密な換気計画の設計がなされます。したがって、重要な気密性能や断熱性能と同じように換気計画も重要な設計指標です。
高気密・高断熱住宅の気密・断熱性能を表す指標としてUA値、Q値、C値という言葉があります。この指標は専門用語の多い住宅建築業界の中でも、特に分かりにくい用語かもしれません。しかし意味の理解ができれば、高性能で一年中快適な家の実現が近づいてきます。
住まいの室内環境の快適さに関わる性能値について解説します。
熱損失係数。UA値と同じ断熱性能の基準です。家全体での熱の逃げにくさを示したもので、Q値が小さいほど断熱性が高く、省エネ性能が高いと言えます。
Q値は【総熱損失量÷床面積】で求められます。UA値との違いは、熱損失量に換気も含むことと、床面積で割るということ。
Q値は現在では国の基準としては外れてしまったものの、知名度の高い基準であることから、ハウスメーカーによってはQ値で表すところもあります。Q値は「換気による熱量の損失」も考慮するため、冷暖房を含めたトータルの断熱性能を知りたいときには有効な計算方法です。
断熱性能を計るものとして「UA(Ua)値」があります。これは「外皮平均熱貫流率」のことで、家の中と外に1度の温度差があるときに、家全体で外皮1㎡あたりどれくらい熱が逃げるかを示したものです。
つまり、UA値は数値が低ければ低いほど、住宅の断熱性能が良いことを示しています。
UA値は【総熱損失量÷外皮表面積】で求められます。外壁や屋根、窓や床などの、いわゆる家の中と外の境界線となる外皮から逃げる外皮熱損失量を、外皮表面積で割ります。このとき、外皮熱損失量に換気熱損失は含みません。
現在、国交省が推奨している断熱基準は地域によって異なりますが、東京や名古屋、大阪などではUA値≦0.87W/㎡・Kとされ、0.6W/㎡・Kであれば高性能といわれています。
気密性を表す言葉として「C値」があります。C値とは「相当隙間面積」というもので、延床面積1㎡あたりに、すき間が何?あるかを表したものです。「数値が小さければ小さいほど、すき間が小さい」ということになり、気密性が高いと言えます。
一般的な『高気密住宅』で目安とすべきC値は以下の通りです(100m2の住宅の場合)。
・高性能な高気密住宅が目指すべき基準:0.2cm2/m2(目安面積:20cm2)
・一般的な高気密住宅が目指してほしい基準:0.3cm2/m2(目安面積:30cm2)
・高気密をうたう住宅が目指さなければならない最低基準:0.5cm2/m2(目安面積:49cm2)
※全棟にわたり気密検査を実施している会社は非常に少なく、数値が示してあっても条件の良い実験棟の数値を載せているケースあるので注意が必要です。
木造住宅の断熱工法としては、主に「充填断熱工法」と「外張り断熱工法」の2つに分類されます。
・充填断熱工法は主にグラスウールなどの繊維系断熱材を使って、柱など構造部材の間に断熱材を充填する工法。現在、国内では最も一般的な断熱工法として使われています。
・外張り断熱工法は、名称の通りボード状の断熱材を躯体の外側に張っていく工法を指します。
外張り断熱工法では、発泡プラスチック系断熱材やグラスウールが利用されます。また、近年は、高気密・高断熱住宅を中心に充填断熱した上で外張り断熱を行う「付加断熱工法」も数多く施工されるようになりました。
・柔らかい繊維系断熱材が使われることが多い
・断熱費用は比較的安い(断熱材の仕様によって大きく変わります)
・柱などの熱橋を加味した断熱厚にできる
・繊維系断熱材の場合は防湿気密フィルムなどを使用
・建物内に施工するので敷地面積に影響することなく、建物形状の自由度が高い。
柱のすきまに断熱材を入れる充填断熱(内断熱)工法は施工が難しくないので、リフォームなどでもよく使われます。 ただし断熱材が湿気を吸ってしまうと、効果が落ちたり、カビ・結露が生じたりします。キッチンや浴室などでは特に壁の中に水蒸気がたまらないよう、防湿施工をしっかり行なうことが大切になります。
・硬い発泡プラスチック系断熱材が使われることが多い
・断熱費用は充填断熱(内断熱)と比較して高いことが多い
・熱橋の影響が少ないので充填断熱(内断熱)より断熱厚が薄くなる
・断熱材の継ぎ目に気密テープなどを貼って、建物の気密性を確保する必要がある
・充填断熱(内断熱)工法と比較して外壁の気密化が容易
・床下・小屋裏(屋根充填の場合も同じ)・壁内空間が利用可能(配線・配管などの施工が容易)
・建物外側に施工するので内部意匠の自由度が高い。
家の外側を断熱材で覆う「外張り断熱(外断熱)」は工程が多いため、充填断熱(内断熱)に比べると1~2割ほど工事費が高くなる傾向があります。 また、断熱材と外壁がしっかり固定されていないと、経年劣化・地震の揺れなどを受け外壁が下がったり変形したりする恐れがあります。断熱工事の施工状況は建物検査で必ず点検される項目になります。検査が不合格になると施工のやり直しになります
同じ建物に充填断熱(内断熱)と外張り断熱(外断熱)の両方を施工する工法もあります。内断熱・外断熱の特徴がそれぞれ現れます。なお、同じ建物で両方の断熱工事を行うことから、断熱工事にかかる費用は両方の断熱工事をほぼ加算した金額になります。
住宅に使われる断熱材は、素材で大きく分類すると以下の3種類にわかれます。
【繊維系】【発泡プラスチック系】【天然素材系】
ガラスや岩石を繊維状にしたものを凝縮させたものになります。繊維と繊維の間に空気を含むことで、空気層をつくり断熱します。
繊維系断熱材については、さらに【無機質系断熱材】と【木質繊維系断熱材】の2つに分かれます。
繊維系断熱材の中では最もポビュラーな断熱材です。原料はガラスで、綿状になっています。また、現在では建築現場や家庭内で出る資源ゴミを利用したリサイクルガラスが主流になってきました。再生利用が効き、環境保護やゴミ減量などの環境に対しての配慮がなされている点でも注目を浴びています。
素材はガラスですので、シロアリなどの害虫被害もなく火災の延焼防止などにも効果があります。その特性と経済性から、住宅用はもちろん、ビルや音楽ホールなどでも使用されています。
つまり、繊維系断熱材の中では最も使われている断熱材とも言えます。
ロックウールは玄武岩、鉄炉スラグ、石灰などが原料となる人造の鉱物繊維です。
※アスベストは蛇紋石(じゃもんせき)や角閃石かくせんせき)といった地球の地殻の約90%を占めているケイ酸塩鉱物が繊維状に変形した天然繊維の鉱物です。ロックウールが大食細胞(マクロファージ)によって体内で吸収排出されるのに対して、アスベストはマクロファージによって分解できず周囲の細胞を死滅させます。
古紙や製紙に用いる素材をリサイクルして耐熱、撥水加工を施して作られた断熱材です。無機質系断熱材と異なり天然の繊維が細かく絡み合っているので、空気層だけでなく繊維の中にまで自然の空隙があります。繊維のなかまで空隙があることから、無機質系断熱材より多くの熱や音などを遮断します。また、木質繊維特有の調湿性で適度な湿度も保ちます。また、セルロースファイバーには害虫駆除などにも使われるホウ酸が含まれていて、害虫被害防止にも役だっています。
ただし、セルロースファイバーの施工方法は特殊、かつ専門的になるので、基本は専門業者でないと施工できず、価格も高いことから、コストだけ考えてしまうと高価な断熱材になります。
木の繊維から製造した板状の断熱材です。木のチップと水を加熱処理して繊維状になるまで混ぜ合わせ、接着剤など必要素材を混ぜて型にはめて形成し乾燥させたボードです。使用するチップとして、廃材などのリサイクル素材を利用する例もあります。
インシュレーションボードは木質繊維なので、多孔質であることから音の反響を抑える効果が期待でき、音楽ホールなどでの使用はもちろん、室内音が響きやすいリスニングルームなどで使う例が多いようです。また、意外な使われ方として、床下に足音が響かせない目的で畳の芯部分にも多く使われています。
ただ、インシュレーションボードは水や湿気には弱く、そのデメリットを補うように開発されたシージングボードというものがあります。これはインシュレーションボードにアスファルトを塗ったり、染み込ませたりしたもので、耐水性が改善して幅広い箇所で使えるようになりました。
名前の通り、プラスチックを発泡させて細かい気泡をつくり、空気を含む断熱材。発泡プラスチック系は高性能なものが多く、断熱性の高さが重要となる高気密・高断熱住宅ではよく利用されています。また、素材が軽量であること、施工が簡単になったお陰で、現在では最も数多く利用されている断熱材でもあります。
発泡プラスチック系断熱材には、いくつかの種類があります。
ポリスチレンを連続して発泡させた断熱材です。
業界用語としては【XPS】とも呼ばれ、断熱材の商品名でいうとスタイロフォームなどが一般的です。耐水性に優れているのが特徴で、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドが入っていないので安全性もあります。
粒状のポリスチレンを型にはめて発泡させる製造方法です。いわゆる発泡プラスチックの一種であるポリスチレンフォームです。こちらは【EPS】と呼ばれます。耐水性があり、軽量で厚さや長さなど、自由自在に形成が可能なので、現場でもカッターなどで切断して簡易に施工できます。
ハイドロフルオロオレフィンなどの発泡剤を加えて製造します。軽くて、柔らかく弾力性もあります。
上記の断熱材と比較して値段は高めになりますが、高い断熱性と省エネ効果があること、耐久性や透湿性に優れていることから、トータルコストでは最もコスパの良い断熱材の一種になります。
発泡剤とポリエチレン樹脂を混ぜて発泡させてつくった断熱材。柔軟性もあり、耐水性もあります。燃えた際にも有害物質を出しにくいことから環境に配慮された材質とも言えます。見た目は発泡スチロールと似ているように見えますが、発泡スチロールとは違い、割れにくく、欠けたりすることもありません。
フェノール樹脂と言われるものに発泡剤を混ぜて、硬化剤なども加えて形成したものです。耐火性にとても優れているのがメリットで、燃えたとしても有毒物質がほとんど出ません。そのため、不燃材料の認定も受けている断熱材もあります。
※フクビ化学工業:フェノバボードフネン ※旭化成建材:ネオマフォームUFなど
グラスウールの上にフェノールフォームを施工するダブル断熱も可能です。ただ、性能は抜群ですがコストも2倍になる可能性があります。
天然素材系は、素材本来の特性を生かした断熱材になります。環境に優しく、自然派を好む方には人気があります。しかし、天然素材が由来なので他の商品に比べると材料価格は高額になります。
羊毛はウールブレスとも呼ばれ、原料の70%以上が羊毛(ウール)になります。昔からウールは人々にとって保温のために衣類や布団などに使用されてきました。
断熱性もあり、羊の身を守る天然コートだけに調湿効果もあります。羊毛は国産では少ないのでほとんどが海外からの輸入品となり、他の断熱材と比べると価格は高くなります。
天然素材ですので自然派の方にはおすすめです。
ワインのコルクやバージンコルクを製造する際に出る廃材を加工して作られた断熱材です。コルクは断熱性、調湿性、防虫効果もある天然素材。ただ、生産する上でコルクをとれる樹木は決まっていますし、コルク素材は海外のものになってしまうこみとから、高価な断熱材になってしまいます。
2020年のハウスメーカーが新築する注文戸建住宅において、約56%がZEHとなりました。このレベルは関東以南でも快適さを実感することができます。また現在ではZEH を上回る HEAT20 の基準もあります。
高断熱・高気密を重視する場合、その仕様で対応できる住宅会社・建築事務所などで建てるほうが良いでしょう。それらの住宅会社はハウスメーカーと比較して豪華な展示場を構えているわけではありませんが、ハウスメーカーより低コストで高性能な住宅を建てられる住宅会社・設計事務所は、全国に多数ございます。
ここでは、主要なメーカーや工務店8社をピックアップしてご紹介します。高気密・高断熱の住宅会社を探す際の参考にしてみてください。
会社名 | 断熱材など | UA値 | C値 | ZEH実績 |
---|---|---|---|---|
三井ホーム | 天井:ビーズ法ポリスチレンフォーム 140mm 壁:ロックウール 140mm 床:ビーズ法ポリスチレンフォーム 80mm アルミ樹脂複合サッシ アルゴンガス充填f34r | 0.41 W/m2・k HEAT20 G2基準 | 1.5cm2/m2を切る程度は期待できそう | 53%(※北海道除く) |
住友林業 | 天井:高性能グラスウール16k 220mm 壁:高性能グラスウール16k 100mm 床:押出法ポリスチレンフォーム 60mm アルミ樹脂複合サッシ アルゴンガス充填 | 0.46 W/m2・k HEAT20 G2基準 | 1.0cm2/m2前後を実現しているようです | 2020年度 56%(北海道・沖縄を除く) |
旭化成ホームズ | 天井:ネオマフォーム・ポリスチレンフォーム 65mm+25mm~ 壁:ネオマフォーム 75mm 床:ポリスチレンフォーム 60mm アルミ樹脂複合サッシ | 0.4~0.6 W/m2・k ZEH基準 | -- | 2020年度 66%(北海道除く) |
積水ハウス | <3地域:グリーンファーストゼロ仕様断熱施工の例> ・天井:セルロースファイバー(ブローイング) ・壁:高性能グラスウール 16k 100mm+100mm ・土間床:押出法ポリスチレンフォーム ・外気に接する床:高性能グラスウール16k または細繊維グラスウール 14k 100mm+100mm | 0.46 W/m2・k HEAT20 G2基準 | -- | 2020年度 91%(北海道除く) |
ヤマダホームズ | <ウレタン吹付断熱仕様の場合> ・屋根:現場発泡ウレタンフォーム 200mm~215mm ・壁:現場発泡ウレタンフォーム90mm~95mm ・床:フェノールフォーム 80mm <グラスウール断熱仕様> ・天井:高性能グラスウール14k 155mm ・壁:高性能グラスウール14k 105mm(寒冷地仕様は20k 05mm) ・床:フェノールフォーム 80mm | 0.43~0.50 W/m2・k HEAT20 G2基準 | -- | 2022年度 25% |
ヤマト住建 | <エネージュUWの場合> ・屋根:硬質ウレタンフォーム 上50mm/下100mm ・壁(外側):硬質ウレタンフォーム50mm ・壁(内側):ビーズ法ポリスチレンフォーム 特号65mm ・基礎:硬質ウレタンフォーム 立上り100mm/底板50mm ※断熱樹脂サッシ/Low-Eトリプルガラス/第一種換気が標準仕様 | 0.27~0.41 W/m2・k HEAT20 G3~HEAT20 G2が目安 | 0.5以下は期待 | 2020年度 78% |
会社名 | 断熱材など | UA値 | C値 | ZEH実績 |
---|---|---|---|---|
ファースの家 | ※断熱材の施工厚は地域等によって変わります。 ・屋根:ファースボードK(硬質ウレタンフォーム)/エアクララ(現場発泡ウレタンフォーム) ・壁 :ファースボードK(硬質ウレタンフォーム)/エアクララ(現場発泡ウレタンフォーム) ・基礎:ファースボードK(硬質ウレタンフォーム)/エアクララ(現場発泡ウレタンフォーム)/タイトプレート(蓄熱材)/ ・Low-E樹脂複合サッシ | 非公開 | 限りなく0cm2/m2となり、最低限の水準でも0.5cm2/m2は余裕でクリア | -- |
リクシルSW(スーパーウォール) | ※断熱材の厚みはパネル仕様によって変わります。 ・屋根:硬質ウレタンフォーム ・天井:硬質ウレタンフォーム ・壁:硬質ウレタンフォーム ・床:硬質ウレタンフォーム(基礎断熱仕様も硬質ウレタンフォーム) | 0.46 W/㎡・k HEAT20 G2基準 | 1.0cm2/m2が基準 | -- |
ツーバイシックス工法(プレミアム・モノコック)が標準であることから、壁の断熱材が厚く他のハウスメーカーより少し高い断熱性能になっているのが特徴。また気密性能も確保しやすい工法です。
ただ、屋根の断熱性能が標準ではやや劣ります。
熱交換型第一種換気、冷暖房に除加湿と空気清浄を含む全館空調システムを長年の売りとしています。2019年から「スマートブリーズワン」といってエアコン1台による安価な全館空調システムも採用できるようになりました。
在来軸組工法を代表する住友林業。主にBF(ビッグフレーム)構法で建てられますが、標準仕様では建物の外周部分に断熱材が入らなくなることもあります。(*北海道仕様では付加断熱材が入ります)。ただ、温暖地でも「寒冷地に求められる性能と同水準」とのこと。
2017年5月から「ヘーベルシェルタードダブル断熱構法」が標準仕様となり、ほとんどの商品でZEHの要件を満たすUA値を確保しています。
なお、気密性能については公表しておりません。その理由は、鉄は温めれば膨張し冷やされれば縮まるといった特性を持っていることから意図的に隙間を作らなければ製品として成り立たなくなります。そのため鉄骨は木造よりも気密性を確保するのが難しく、鉄骨を取り扱っているハウスメーカーにおいては、どのハウスメーカーも基本的にC値を公表していません。
積水ハウスには、以下3種類の工法があります。
・軽量鉄骨のダイナミックフレーム・システム
・重量鉄骨のフレキシブルβシステム
・木造のシャーウッドハイブリッド構造
2023年2月には『グリーンファーストゼロ・プラスアルファ』という断熱性能とデザインを両立させた仕様がデビュー。どのような構造でも高性能かつデザイン性に優れた仕様を選ぶことができます。
なお、2020年度の大手ハウスメーカーなどを含む戸建住宅会社のZEH建設実績では、累計棟数が国内1位となっています。(住宅産業新聞および自社調べ)
ラインアップでは中核仕様となるFelidiaは、高性能のグラスウールや吹付断熱を使用しています。さらに外装下地材として遮熱シートも施工するため、夏涼しく冬暖かい遮熱性能と躯体の劣化や腐朽を防ぐ透湿・防水性能が長続きします。
特筆すべき点は、Felidiaにおいて、大手ではオプション対応となる高性能樹脂サッシが標準仕様。ガラスはアルゴンガラス入りLow-Eガラスが標準仕様となっていること。
ただし、2022年度のZEH住宅販売比率は25%。ZEH補助金以上にヤマダポイントが付与されるため、ZEHにはさほど力を入れていないようです。
「高性能グラスウール断熱」と「吹付断熱」から選べるハイグレード断熱仕様は、3階建ての場合、「高性能グラスウール断熱」のみとなっています。「吹付断熱」は建物内側からウレタンを吹き付けていくので、あとから穴をあけない限りすきまはできません。結果として、すきまがない高気密・高断熱かつ、優れた遮音性能も期待できます。
施工実績は先に紹介しているトップクラスのメーカーと比べると少ないのですが、住宅性能を気にする方のほとんどの方が一条工務店と比較検討するのがヤマト住建です。
ヤマト住建は外張り断熱工法や樹脂サッシを採用するなど、断熱性・気密性にはこだわりを持った家づくりを行っています。ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー大賞を受賞した「エネージュUW」の「UA値0.28」「C値0.5以下」は、ZEHの基準も軽くクリアした高性能住宅です。
なお、2020年度のZEH住宅販売比率 78%の実績は中堅ビルダーでは高い比率です。
国内の高気密高断熱系工務店フランチャイズでは唯一の、湿度をもコントロールする高性能住宅を開発。全国の工務店ネットワークにて設計施工、長年にわたるメンテナンスを行っています。
Fas工法は、住宅で発生する熱を適切に調整するため、断熱・気密・換気・開口部など、指定部材があり、指定された施工方法・メンテナンスを行う限り、長期間にわたり住宅性能を保証する体制を構築しているのが特徴。現場発泡ウレタンフォームを使っていることから、理論上のC値は限りなく0cm2/m2となりえます。
株式会社LIXIL
高性能なスーパーウォールパネルと高断熱サッシ・ドア、計画換気システムが生み出す、高気密・高断熱・高耐震構造を総称しています。スーパーウォール工法では、高気密住宅の目安となるC値1.0cm2/m2が基準。住宅の構造体と開口部(サッシ・ドア)の工事が完了した段階で、一邸一邸、気密測定を実施。
近年は断熱への意識が高まり、どの住宅会社もそろって「うちは高断熱です!」とアピールしています。しかし、実態は法律で定められる断熱等性能等級4(最高等級)の基準をクリアしているものの、現在の水準では特に高断熱といえない住宅会社も混在しています。
最後に、ハウスメーカー・住宅会社を選ぶ際のポイントをご紹介します。
実際に建てた施主が公表している数値であれば、参考にはなります。また、検討されている住宅会社の標準的な Q 値や UA 値が推奨値とかけ離れているのであれば、その住宅会社は温熱環境を重視していない可能性がありますので、その判断もできます。
ただ、施主ブログのなかにはステマの可能性がある記事もあります。
ステマとは「ステルスマーケティング」の略称。広告と明記せず、非営利の好評価の口コミと装うなどする広告手法で、掲載している住宅会社に好意的な内容しか掲載されません、特定の住宅会社の絶賛ばかりしている施主ブログには注意が必要です。
また、政府が推奨する高性能住宅の基準が年ごとにグレードアップしています。そのため、数年前に公開された「高性能住宅」の仕様が、現在では陳腐な仕様に過ぎない可能性も十分にありえる話です。ハウスメーカー各社の性能比較や施主ブログについては公開された年度にも注意して、できるだけ鮮度の高い記事で比較検討することが大切です。
気になる各社の自社Webサイトを確認してみましょう。現在は各社とも住宅性能を重視した構成にされているので、各社が手がけた高気密高断熱の家を建てた棟数やZEH比率は公開されています。
各社とも住宅性能を重視している現在、高気密高断熱住宅を手がけた担当者は続々と増えています。特にハウスメーカーでは各社の担当者レベルに至るまで高気密高断熱住宅の仕様について研修をうけているので、高気密高断熱仕様のオプションに至るまで提案ができます。
ただ、仕様によってはオプション価格が高額になる可能性もあります。
ここでのコツは、複数の住宅会社での比較検討することが重要です。その会社の担当者が本当に実績豊富かを判断するためにも、最低3社ほどは話を聞いてみましょう。
標準仕様ではアルミ・樹脂複合サッシ+Low-Eペアガラスでも、オプションで樹脂サッシ+Low-Eペアガラス/Low-Eトリプルガラスを選べることか多いようです。ただし、ガラスの仕様については、建てる地域や周辺環境、間取りによって大きく変わるので、ある程度の希望仕様をもとに、建てる地域や周辺環境、間取りによって変更していくようになります。
室内の快適さを大きくする原因は、室内の温度ムラと室内湿度。この室内の温度ムラをなくすためには、効果的な空調・換気を検討する必要があります。
ただ、最適な冷暖房方法の問題を複雑にさせる理由は、断熱レベルや家の向きと窓の量、周辺 環境に左右される日射取得、間取りによっても最適な空調・換気方法が異なる、ということです。
換気方式はハウスメーカーによって仕様が決まっているので、換気システムを替えるには検討しているハウスメーカーそのものの変更が必要になることがほとんどです。
これらを採用しているハウスメーカーは、セキスイハイムの快適エアリー、三菱地所ホームのエアロテック、三井ホームのスマートブリーズ、ヤマダホームズのZ空調、積水ハウス・シャーウッドでも選ぶことができます。三菱地所ホームのエアロテックや三井ホームのスマートブリーズなどの全館空調は、この換気システムに冷暖房装置を組み込むことで冷暖房も併せて一元管理するシステムです。
第三種換気は第一種換気と違って熱交換ができないため寒そうに思えますが、北欧や北海道などの寒冷地でも第三種換気が多く採用されています。給気口から入る空気をすぐに暖めるように給気口の配置などを工夫すると問題にならないようです。
関東以南の温暖地では、高性能・高コストの第一種換気と仕様次第は性能を落とすことなくコストの削減ができる第三種換気のどちらが良いかは悩ましい問題です。コストだけを考えれば第三種換気で十分ですが、第一種換気のもつ快適性も捨てがたい点。
いずれにしても、一番問題なのは適切な換気が行われないことです。
建築基準法では換気設備の換気量の規定はあっても、各部屋で実際に換気が行われているかまではチェックされません。気密性能の低い住宅は適切な換気が行われません。
住宅用の第一種換気システムでは、いくら熱交換ができるといっても夏の湿度はエアコンを使わなければ抑えることはできません。したがって、能力が不足している第一種換気システムで熱交換するより、適切な気密性能を備えた住宅に第三種換気システムを設置して冷房と除湿をすべてエアコンに任せる、または春や秋も弱くエアコンを稼働させる必要があるならば、エアコンによる熱交換の補助として第一種換気システムを入れるほうが効率的ではないか、といった考え方もあります。
コストをかけすぎずに暑くない・寒くない住宅を実現するのであれば、Q 値や UA 値、C 値を基準として住宅会社を絞るのが近道ではありますが、快適な住まいは数値だけでは判断できません。
住宅のスペックだけにとらわれず、上記で述べたいろいろな要素はもちろん、快適な間取り・住宅設備をはじめ、思うように身体が動かなくなったとしても室内転倒事故を起こさない生活導線、家族構成の変化にも対応できる工法、そして新生活に大きな負荷をかけない総額予算にいたるまで。家づくりはいろいろな切り口を踏まえ、家族で十分に検討することがたいへん重要です。
ハウスネットギャラリーでは、業界経験20年以上の住宅のプロが、高気密・高断熱の家を建てる際のポイントや進め方、注意点などをアドバイスいたします!無料でご利用いただけますので、これから注文住宅を検討されている方はぜひ、お問い合わせください。
高気密・高断熱の家で長く快適な家を手に入れましょう!
早坂淳一 保有資格:AFP(日本FP協会認定)/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/一般社団法人生命保険協会認定/シニア・ライフ・コンサルタント/
工務店支援プロジェクトに従事したのち、工務店にて営業を経験し、現在はハウスネットギャラリーを運営する第三者機関ネクスト・アイズ(株)にて、住宅コンサルタントとして活躍中。