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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 減築はわが身と国家を救う 減築はスマート住まい

1 増築よりも、わが身を救う「減築」のスマートさ

この度の熊本大分地方大地震に際し、多くの方が被災され、まだまだ避難生活を余儀なくされています。災禍がおさまり、これ以上の被害が出ないことを祈り、心からお見舞いを申し上げます。

減築をする前に地震は来てしまった!今回の悲惨な活断層直下型の熊本大分大地震の阪神淡路以来の直下型地震の教訓が生かされていない!と言うのが私の無念な気持ちです。減築は資源の無い、そしてこうした地震などの災害の多いわが国の住まいの基本理念なのです。それが某イギリス誌の、エコノミックアニマルの日本人の家はウサギ小屋発言に触発されてか。ある時から、浮かれたバブル期もあって大きな家の思想となり、合わせて子ども部屋ブームと相成り、宅造、新興住宅地での新築、増築の時代となったのです。

そして今、その住宅地は高齢化し、空き家だらけの歯抜けの街並となり、都心でありながら灯もまばらな住宅地となっているのです。減築はこうした未来を想像し、35年ほど前に増築ならぬ減築の時代だ!などとあちこちに投稿をし、自らの著書『図解・住まいのソフトウエア』(凱風社1983年刊)にも図柄で表記したものです。(イラスト3点:表紙写真)

減築の原画となったプラン、同断面、減築後のリビングパースなど(画:天野 彰)
減築の原画となったプラン、同断面、減築後のリビングパースなど(画:天野 彰)

図解・住まいのソフトウエア』凱風社1983年刊(筆者:天野 彰)
図解・住まいのソフトウエア』凱風社1983年刊(筆者:天野 彰)

なんてことはありません。増築した部分を取り去り、さらに使われていない部屋を壊してそこを中庭状にして採光と風通しを図る。と言うものだったのです。これによって今まで劣悪な環境の家のすべての部屋が蘇ってかえって広くなると言うものです。地震に備えて使われていない2階を解体し、軽くして耐震強化を図ると言うものでした。かえって面積が小さくスマートになった分、住まいの質も構造も強化されるのです。

そのころの石油ショックにも耐えられる省エネルギーとなるとも訴えたのです。それこそ今の超高齢化社会に生き残ることを見据えたスマートな住まい方の提案だったのですが、残念ながら時代は高度成長期さ中で、所得倍増、列島改造論に浮かれていたのです。

2 減築でわが暮らしをコンパクトに身軽にして活きる!

減築はわが暮らしをコンパクトにして超高齢化社会に生き残る手段でもあるのです。長寿命となったことはとてもめでたいことです。ところがそのために、誰もが持つのが老後の暮らしと健康の新たな不安となったのです。職を離れてあらゆることが長期間に渡り、長引く生活経済とさらには今住む家の耐久性が気になります。特に地震などの災害にも備えなければなりません。そこで2階を取り外すなど家全体を軽くして押しつぶされないよう効率よく耐震強化もできます。住まいの面積をさらに最小限に縮めれば片づけはもとより省エネルギーとなります。

減築は部屋や2階を取り壊して住まいを小さくするばかりではありません。今までこまごまと壁で仕切られていた家の中の間仕切りをすべて外してワンルームの広々とした住まいにすることが有効です。手を伸ばせばそこにキッチンがあり、トイレもある!といった住まいです。狭くても広い狭楽しく住む家になるのです。

写真:天野 彰著「狭楽しく住む法」(1980年:表紙は真鍋博氏作)
写真 天野 彰著「狭楽しく住む法」(1980年:表紙は真鍋博氏作)

長い時間をわが趣味を楽しみ、昔取った杵柄で趣味の教室や英語などの塾、あるいは喫茶店やレストランなどの店舗にするなど、老後の生きがいや暮らしの糧にもなります。今の家や生活をコンパクトにした分残りの土地を駐車場として貸したり、建て替えやリフォーム資金として売却も視野に入れるのです。3,40年もの残りの暮らしを考えて、意を決して土地担保に事業資金として借り入れて賃貸住宅に建て替えるのです。強靭かつ快適わが家と、残りをアパートとして人に貸して生活の糧にするのです。

これはマンションも同じことで、使わなくなった物や衣服を思い切って整理し、壁を天井までの収納にすればすべてのものが納まり水回り以外はワンルームにして大きく使うと今までの2LDKが驚くほど広々として、老いて車いすはもちろん這ってでも暮らせる私設介護療養室となるのです。

イラストは2LDKマンションのすべての壁を取り去って周囲を鏡張りの壁収納にし、ベッドや食卓や書斎デスクをコンパクトに畳んだ動くunit(生活維持装置=家具ロボット:開発中)にした間取り変幻自在のダンス教室の例です。

イラスト 2LDKを「ワンルームのダンススタジオに」プラン(画:天野 彰)
2LDKを「ワンルームのダンススタジオに」プラン(画:天野 彰)

イラスト:同上「ワンルームのダンススタジオ」パース(画:天野 彰)
同上「ワンルームのダンススタジオ」パース(画:天野 彰)

イラスト:「生活維持装置によるアイソメ俯瞰図(収納ロボット)」(画:天野 彰)
生活維持装置によるアイソメ俯瞰図(収納ロボット)画 天野 彰

イラスト:同上「収納ロボット詳細」(画:天野 彰)
同上 収納ロボット詳細 画 天野 彰

3 減築は国家さらには地球を救う!

少し官僚的な話しになるのかも知れませんが・・・私たちの暮らしと国家のあり方、さらには地球規模での環境保全が問われる時代となっているのです。省エネルギーの環境学の分野では「コ・ベネフィット」なる総合的相乗効果を上げる試みが言われているのです。コ・ベネフィットなど余り馴染みの少ない言葉ですが、ところがどっこい私たちの暮らし方生き方によって大いに都市や国家、それ以上に地球規模の環境保全と人類の生存につながると言うものと私なりに解釈しているのです。

私たちの住まいを断熱工事することは夏涼しく冬暖かく快適になるだけではなく光熱費が割安になるのは当然として、心疾患や脳梗塞の軽減やさらにはリウマチや癌など冷えからくる健康障害などを抑え、健康に暮らせるばかりかその為の医療費の削減となるという効果も挙げられます。そんな経済効果どころかもっと地球規模での資源を守り、二酸化炭素削減ともなるのです。一石二鳥どころか三鳥あるいは四鳥の相乗効果があると言えるものです。

そんな用語は知る由もなく、私は住まいの設計をしていてふと大きな疑念を抱いたのです。大きな住まいの不条理な設計思想でした。戦後復興から必死で立ち上がった高度経済のさ中、経済摩擦の反感を呼ぶに至り世界から「ワーカホリックの日本人の家は『ウサギ小屋』」と言われるまでになったのです。これを敏感に感じ取ったわが国は住宅政策を押し進め急激な住宅開発を推奨し優遇し大きな家のロジックとなったのです。しかしこれが私にとっては大きな不条理となったのです。建築家として建て主の望むがままに大きな家を望みどおりに建てればよいものを敢えて小さめに提案したのです。その作業はちょっと変わっていて議論しながら少しずつ広げると言うものでした。

2LDKを3LDKと住み替えようとする人にマンションは利便性が一番、そのためによいところ住む!そこで狭楽しいロジックが生まれたのです。一戸建てでは増築よりは減築が生まれたのです。住む人その家族の住まいの変遷を顕わした『人生時計』が生まれたのです。アナログ式の時計で見る限りは広く必要な子育て時間は僅か人生の“四分の一”にもみたらず。あとは狭い方がはるかに快適な老後の暮らしができると。

イラスト:同上「収納ロボット詳細」(画:天野 彰)
左 改めて「減築」の略プラン(画:天野 彰)
改めて「減築」の断面イメージ 画 天野 彰

この減築思想こそがコ・ベネフィット型の家づくりだと思うのです。そして意に反して子育て優先の大きな家が全国に蔓延し、都心の高級住宅地はおろか当時の人気新興住宅地にはすでに灯が消え、たまにポツンと老夫婦か独居老人が住んでいるのです。老いて寒く、すでに誰も住まない二階の重さに地震が来るごとに怯え、掃除はおろか雨漏りすら直せないので居るのです。こうして誰も住まない空き家は700とも800万戸とも言われ、いずれ「空き家」となる高齢者の家は全国でさらにその倍以上とも言われているのです。

4 減築はコ・ベネフィット型リフォームで人口減を救う

減築は今の家を減らすことだけではなく、他の大きな効果を生み出すことです。それはわが身だけではなく都市をさらには国家、地球までをも救う!と確信するのです。これこそ「コ、ベネフィット型のリフォーム」と言えるのです。家を壊して新築すれば簡単そうですが、今までの投資価値は抹消されることは当然として、多くのごみが廃棄され、さらに新資源が必要となります。要は今の家を一部壊すか、間取りをやりくりして耐震補強をして“夫婦だけの住まい”に最小限に縮めるのです。残ったところを人に貸したり、店舗や駐車場にするのです。

これでリフォーム費や老後の資金の捻出にあてられるのですが、効果はこれだけではありません。まずは貸すことだけではなく同じ屋根の下に一緒に住む家族ができて寂しくありません。駐車スペースも近くのアパートに住む人にはよろこばれ、コミュニティーが生まれ寂しくありません。いざとなったら通報や手伝いを期待もできます。今日の社会問題はこうした高齢独居老人の不安と危険で、その解消となるのです。

一方で若い夫婦は便利な都市の住宅地に住め、しかも庭付きでペットも飼うこともできるのです。若い人たちが通勤に便利なところに住めるばかりでなく旧市街地のインフラが活き、商店も賑わい都市が活性化します。これをもっと積極的に2LDKや3LDKにしてある条件を付けて割安に貸すのです。草取りなどの手伝いや万が一の時の通報も願い、その条件によって家賃を下げるのです。街の不動産屋さんと相談して賃貸契約をし、家賃を相応にするのです。まさしくこれは新しい形の同居、契約同居と言えるのです。

いざと言う時に安心な契約同居の家 画 天野 彰
いざと言う時に安心な契約同居の家 画 天野 彰

わが老後不安も警報ベルを付けて救助を願えれば、わが家が居ながら養護老人施設となります。一方で若い世代は都心の戸建の家に割安に住め、時には子どもを大家さんに一時預けたり見てもらうこともできるかも知れません。わが家が私設保育所となるのです。こうして契約ながら親のようにわが子を預けて働け、通勤時間も短縮されれば、第二子、三子も生むことも可能です。

実は大家さんとなる自分たちも元気なうちは孫のような子どもたちと住め、生活に張りが出てますます元気になります。これはマンションでも下宿のようなスペースをつくり、不特定の民宿ではなく、地方から出て来ている学生を住まわせて自慢の腕を生かし賄いをすることもできます。これは地方の親御さんたちにも喜ばれ。新たな親戚もできるかもしれません。

写真:M様邸 外観・書斎">
M様邸 外観左端の1、2階が2DK2戸、書斎(写真:本木誠一氏)

こうして新たな家族をつくり、親せきをつくる。都市の活性化ばかりではなく、高齢不安もなくなり、子どもたちも生まれ育つ!国をも活性化させる。これこそ国をも救う「コ、ベネフィット型のリフォーム」と言えるのです。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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