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住宅関連記事・ノウハウ

住生活コンサルタント 早坂淳一 ネクスト・アイズ株式会社断熱性能が高い住宅は健康維持で工事代金の回収ができる

1 高断熱・高気密などの性能の高い家はコストパフォーマンスも改善される

断熱性能が高い住宅では長期間にわたり健康が維持できるため、結果として、断熱工事のお金を回収できます。驚きの方も多いかと思いますが、要は、ハイブリット乗用車のように、一般的な住宅との工事費差額を余裕をもって回収できる仕組みと考えられます。高断熱・高気密化による工事費と暖冷房費削減効果だけ比較して検討すると、工事費を回収するには普通の新築でおおよそ29年かかる所を、高断熱・高気密の住宅では16年まで減らすことができます。

高断熱・高気密化工事の差額

一般的に、新築工事で100万円程度、リフォームの場合で200万円程度(平成11年省エネルギー基準 (通称「次世代省エネルギー基準」の場合)

住宅の断熱・気密性能の向上による暖冷房費の削減効果

東京などの地域では、おおよそ35,000円/年(1戸あたり)工事費と暖冷房費削減効果を踏まえ、割引率を考慮せず単純に投資回収年数を試算してみます。

*1世帯あたり年間35,000円の削減になるので、新築1世帯あたり29年、リフォームでは58年かかります。断熱性能が向上すると、前回解説した通りアレルギー疾患やヒートショックによる疾患の発生が抑えられることが予測できます。期待できる効果は、以下の2点。

  • 暖冷房費削減効果
  • 健康維持による医療費自己負担分の削減

間接的な便益を踏まえると、*1世帯あたり年間62,000円の削減が見込めることから、投資回収年数は16年まで短縮されます。あわせて、世帯所得に応じて高所得世帯は2倍の改善率、低所得世帯は0.5倍の改善率で試算した結果は以下の通りです。

*高所得世帯は1世帯あたり年間84,000円の削減が見込めることから、投資回収年数は12年*低所得世帯でも1世帯あたり年間46,000円の削減が見込めることから、投資回収年数は22年。医療費は自己負担だけではなく、組合保険や社会保険、国民健康保険による医療費負担もあることから、これら社会的負担も加味して投資回収年数を試算すると、回収できる期間は16年から11年まで圧縮されます。平均的な新築住宅価格からみて断熱性能向上にかかる工事費は、全体の5%未満。性能向上は高いコスパを示すと考えてもよいかと思います。

出典:日本建築学会環境系論文集 2011 年8 月
健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を考慮した住宅断熱の投資評価
伊香賀 俊治,江口 里佳,村上 周三,岩前 篤,星 旦二,水石 仁, 川久保 俊,奥村 公美

2 住まいのストレス 収納や家事動線以外に日当たりなども重要

主な住まいのストレスとして考えられることは、収納や家事動線はもちろんですが、普段家事に携わらないと考えられる子どもでも日当たり、風通し・空気質・温熱環境(夏・冬)」を重要視するようです。

特に子どもたちは、収納や家事動線といったオトナの事情の優先度が高い保護者と比べ室内温度を体感しやすいため、子どものほうが保護者より室内の温熱環境(夏・冬)を重要視している調査結果があります。※2

一方、子育て期の親子ではバリアフリー・音環境については、さほど重要な問題として捉えられていないようです。

住む地域環境の満足度も重要なポイント

あわせて、重視すべきことは良好な地域コミュニティ環境ですが、地域コミュニティ環境と住まいの環境はそれぞれ密接な関係があります。地域コミュニティの施設整備、野外自然、利便性、社会的環境により、地域への満足感が変わります。地域への満足度が高くなればなるほど、特に子育て中の方々にとっては住まい環境への満足度も高まるようです。スペックだけにこだわった住宅性能の改善だけではなく、屋外環境や地域コミュニティの状態も把握し、その結果に基づいて環境を改善していくことは、結果として長い間快適に過ごせることは間違いなさそうです。

※1出典 住環境満足度と居住者のストレス・健康感の関連分析
日本建築学会環境系論文集 2013/04 (686),359-366頁
堤仁美, 長澤夏子,松岡由紀子, 秋山友里, 加藤龍一, 秋元孝之, 田辺新一 共著

※2出典 住環境・コミュニティ、住まいと子育て世帯の健やかな生活
首都大学東京都市環境科学研究科都市システム科学域
『都市科学研究』編集委員会
都市科学研究 2012-03-30 4巻 61 - 69ページ
小杉 理理子  伊藤 史子  共著

3 冷え症の方は、6℃以下の温度変化も「不快」に感じやすい

さて、冷え症の方々には辛い冬において、室内温熱環境や室内温度差が冷え症をお持ちの方と非冷え性の方に与える影響を生理的・心理学的な側面から詳細に比較検討する実験結果が公開されています。この実験結果によりますと、冷え症にお悩みの方ほど住宅の断熱性能を高めておかないと、快適には過ごせないことはもちろん、気温の変化によって急激に血圧が上下してしまい、脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞などの病気が起こる(ヒートショック)可能性が高まることが発表されています。

20歳代~40歳代の女性6名(冷え症者3名/非冷え症者3名)が外気を模倣した人工気象室内で行なった実験で得られた知見ですが、心理的測定結果において興味深い結果が示されました。

室温21度程度に暖房された部屋から、室温14度・16度・18度の暖房されていない部屋に移動すると、手・足の「指先皮膚温」はそれぞれ低下するようですが、暖房されていない部屋の室温が最低15度以上あれば、手/足末梢の皮膚温は不快域とされる18℃以下にはならないことが示されています。心理的な側面で冷え症の方が感じている暖かさ・冷たさと快適か不快かという感覚について観ると、室温が15℃以上でも「不快」と申告する方が大半であったことが述べられています。冷え症の方は手足末梢の皮膚温が高い場合でも、一日中かなりの冷えを感じているのです。逆に、非冷え症の方では全身の寒さを比較的不快に感じにくいことも示されています。
これは、住宅の断熱性能が向上して暖房されている部屋と暖房されていない部屋の温度差が6℃以下であったとしても、冷え症の方にとっては寒い部屋でありその寒さ感は、非冷え性の方には実感してもらえない、ということです。非冷え性の方には快適な室温だとしても冷え症の方にとっては寒くてたいへんということです。

冷え症の方は温度変化に敏感で、いちど下がると一日中寒さを感じる

住まいの「断熱性能」を向上させる住まいづくりが冷え症の方には必要

非冷え性の方は周囲の温度変化にとても敏感に反応しますが、冷え症の方は急激な冷えを感じてしまうと、終始冷えを感じたままになってしまうそうです。これは、暖房されていない部屋の温度差が6℃を超える場合でも終始「寒い」という感覚が変わらないことから周囲の温度変化に対し敏感ではなくなってしまい急な室温低下に対処しきれずヒートショックを起こしてしまう可能性が高まるということです。

ヒートショックは65歳以上の高齢者、高血圧や糖尿病などの動脈硬化の基盤がある方、肥満や睡眠時無呼吸症候群、不整脈をもっていると影響を受けやすくなります。冷え症をお持ちで、上記のような不調をお持ちの方ほど、医療保険はもちろん新築・リフォームのときに住宅の断熱性能を向上させることは、高い優先順位になることは間違いないようです。

※1 出典:日本建築学会環境系論文集 第80巻 第709号 2015年3月
「冬期住宅における冷え症者と非冷え性者の生理心理量の比較」
 都築 弘政/齊藤 真理子/田辺 新一 著

※2 出典:人工環境デザインハンドブック,丸善, pp.67,2007.12.1
栃原 裕 著

ある程度の年齢にさしかかると気になる方々も多い「血圧」。血圧は、年齢・性別・生活習慣の要因だけではなく、住まいの室温にも大きく影響されます。室温と家庭血圧の関連についての調査によると、年齢・BMI(肥満度を表す指数)・性別と血圧の関係に加えて、居間・寝室の室温との間にも大きな相関関係が見られることがわかりました。(※1)

室温を適正温度に保つことで、血圧をおさえる

この調査によると、室温が10℃低下すると60歳の方は起床時血圧が3.8mmHg上昇し、70歳の方では起床時血圧が5.5mmHg上昇していることから、高齢者ほど室温が血圧に及ぼす影響が大きいことがわかりました。あわせて、山口県・高知県の実測調査では、低断熱住宅では高齢者の高血圧者の割合が高くなっています。
平均10℃低い家にお住まいの方の起床時血圧は3.8mmHg高く、個人レベルでは、さらに1.9mmHgも高いことが示されています。
住宅内の室温が外気温に比べ1℃低い環境化では、収縮時血圧が0.38mmHg高く、平均室温が1℃低い住宅に住んでいる方は、同じ室温下であっても収縮期血圧が0.19mmHg、拡張期血圧が0.23mmHg高いことがわかりました。食生活や生活習慣病の改善で血圧を抑えることはもちろんですが、寒い住宅に住み続けることで血圧が高くなってしまうことが証明されていることから住宅の断熱性能を高めるだけでも、血圧を下げることができる可能性があるわけです。高血圧が問題視される理由は、みなさまご存じのとおり脳血管疾患と心疾患(虚血性)の4つの危険因子(※2)のひとつとして捉えられているからですが1.5mmHgも血圧を低下させることは、並大抵のことではできません。(※3)

別な調査では、寒い住宅の10年後高血圧発病リスクは6倍を超える調査結果(※4)も発表されている一方、(0時に18℃未満の住宅居住者高血圧発病リスクは6.67倍)断熱化で室温が平均2.7度上昇したのに対し最高血圧は同1.0mmHg低下し、室温が上がるほど血圧は下がる傾向がみられました。(※5)
ほか、暖かい住まいに住むことで健康寿命(要介護ではない)を4歳延伸させる可能性も発表されています。(※6)

寒い住宅の弊害とは、ヒートショックによる影響はもちろんですが高血圧に代表される慢性的な疾患を引き起こす大きな要因にもなるわけです。
高齢者と呼ばれるみなさまはもちろんですが、親御さんといっしょに住む計画を抱いているみなさまも、親御さんの将来的な健康維持を考えて住宅の高性能化を真剣に考えることも、間取りや耐震性向上と同じように大切なことであることは間違いないようです。

※1 出典:日本建築学会環境系論文集 80(715), 703-710, 2015
「マルチレベルモデルに基づく室温による家庭血圧への影響:
-冬季の室内温熱環境が血圧に及ぼす影響の実態調査 (その2)-」
海塩 渉/伊香賀 俊治/安藤 真太朗[他]/大塚 邦明 著

※2 出典:健康日本21(第二次)厚生労働省
4つの危険因子として、高血圧のほか、脂質異常症・喫煙・糖尿病が
 挙げられています。

※3 出典:健康日本21(第二次)厚生労働省
食生活改善で2.3mmHg、身体活動で1.5mmHg、飲酒を控えると
 0.12mmHg、降圧剤の服用率を10%高めることで0.17mmHg改善する
 ことを目標としています。

※4 出典:JST科学技術振興機構
「健康長寿を実現する住まいとコミュニティの創造
(伊香賀 俊治/星 旦二/高知県梼原町) 」社会実証事業

※5 出典:一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 2017年01月19日
家を改修すると血圧が下がる 断熱化すると室温が上がり血圧が低下

※6 出典:住宅内温熱環境と居住者の介護予防に関するイベントヒストリー分析
-冬季の住宅内温熱環境が要介護状態に及ぼす影響の実態調査-
林 侑江/伊香賀 俊治/星 旦二/安藤 真太朗 著

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住生活コンサルタント 早坂淳一住生活コンサルタント 早坂淳一

住生活コンサルタント 
早坂淳一
ネクスト・アイズ株式会社

大手百貨店にてクレジットカード事業の立ち上げやポイントカードシステムの運用、全店販促支援システムの運用、売場リニューアルブロジェクトなど、新規事業を中心とした業務に従事。 その後、携帯キャリア店舗改善プロジェクトや不登校児童・生徒活動支援プロジェクト、工務店支援プロジェクトに従事したのち、工務店にて営業を経験し、現在は第三者機関ネクスト・アイズにて、住宅コンサルタントとして活躍中。