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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 「老楽しく住む家」 わが家の危険?!

○今回のポイント 1 小さな段差が危険
○今回のポイント 2 実は若い人に事故が多い?

いつまでも若いと思うな!「わが家に危険はいっぱい」

住まいを建てるとき一番困ることは、自分はまだ若い、いつまでも元気だと思うことです。

これが住まいやリフォームの設計に大きな間違いをもたらすことになるのです。いくら若いと言っても、40代、50代の人が家を建てるとすると、だいたいはこの家はまさに「最期の家」と考えます。

もし人生の最後まで住むことを考えるなら自分が80、90になったときのことを忘れてはなりません。

しかし実際には、残念ながら建てる時には“今”しか頭に浮かばないのです。

小さな段差が危険

その一つが段差です。

家の中に段差がたくさんあるのですが、それはわずか3㎜か5㎜そこそこの畳と廊下との段差です。こんなわずかの段差にもつまずいて、足の爪をはがして“イタイッ”ということになるのです。

年をとるにつれ小さな奥行きや高さを認識しにくく、おまけに動作も鈍くなります。布団や座布団にもつまづき転倒をしてしまうのです。

リビングのソファーに2㎝もあるような分厚い絨毯を敷くなど、まさに大事故になることもあるのです。これは若い人でも慌てたり、酔っているときなどでも起こり得るのです。つまり現実にはそうカッコよくはならないのです。

これは玄関マットも同じことが言え、注意が必要です。

子どもたちによくある例で、玄関マットの上に乗った途端そのまま玄関に滑り落ちて行くこともあり大きな事故が現実に多く起こっているのです。これがお年寄りだったら大変です。玄関にマットなどない方がいいのです。もしどうしても玄関マットを敷きたい場合は滑らないようにすべり止めのゴムなどの上に置くか、できるだけ薄いものにし、両面テープなどで止めておきます。

こうして見ると住まいには思わぬところに小さな段差が多いのです。

同じ板張りでもリビングとダイニングの間、あるいはダイニングとキッチンの間などにドアや引き戸のためのわずかに敷居が上がっている場合もあり、これが危険となるのです。

こうした段差はあらかじめ施工者に頼んでおけば、床下の根太(ねだ) を切り込んで敷居を埋め込むことが可能です。

床の仕上げの厚みが15~20㎜だった場合敷居は2センチか3センチになりますが。それを同じ根太の上に敷居を乗せて施工すれば当然誤差が出て、立ち上ってくるのです。ワゴンや車いすも通りづらく、応急処置として市販のクサビ状の薄板を段差の両側に取りつけることもありますが、意外にこれに躓いたり滑ったりもするのです。

ハッキリした段差はリハビリ?

反対に玄関の上がり框(かまち)や、リビングから小上がりの和室との間の大きな段差があることを気にする人も多いのですが、意外にもこうしたはっきりとした段差の方が見誤ることが少なく、むしろ上がり降りの際、腰掛けて楽に上がれたり、足腰を鍛える為にもなると言うのです。やはり僅かな中途半端な段差の方が問題となるのです。

モダンですっきりした平らな床の間もいい例で、かつての床の間は畳よりも10センチ以上も高かったのが広く見せるために、床の間の床板(地板)を畳と同じ高さする例も多いが意外にもこれが事故やケガに繋がるのです。問題は素材の差で、畳には弾力があり踏むとわずかに沈み、床の間の地板は沈まずごくわずかな段差ができるからです。

床の間に花を生けようとしたときに躓いて前のめりに転んだり足の爪を剥いだりするのです。これはあのカーペット敷き込みの場合も同じで、踏むとカーペットが沈み、フローリングとの間にわずかな段差が生じるので注意が必要です。

浴室の水切り段差

浴室との段差も危険と言われます。脱衣室から浴室に入るとき防水の関係上どうしても5~10センチくらいの段差ができます。しかも脱衣室の方は板かビニールの床で、浴室の床はタイル貼りかプラスチックで濡れていてすべります。そこに不用意にかかとから踏み入れ体重を掛けると、ツルっと滑ります。

これは風呂に入るときよりも、掃除をするときや、お湯が溢れたりするときに、慌てて飛び込んで滑って転倒し、後頭部を敷居に打つなどの大きな事故となります。

多少の水切りからの漏れも覚悟して、ユニットバスなどの最少の水切り段差にするか、浴室側に細い溝を付けるのです。

トイレもトイレ・スリッパのために床を下げることもありますが、これも転倒の原因となり車椅子も出入りできません。老いに備えた住まいでは、床を一段下げるようなことは避けたいものです。

実は若い人に事故が多い?

これが老いた自分の姿なのですが・・・、実はこれらは若い人にも危険なのです。

この水回りの事故、意外にも動作も緩く慎重なお年寄りよりは、なんと活発に動く若い人や子どもの方が多いと言われています。

中でも階段の事故が多く、大きいのです。それも上がるときよりも降りる時に多く、物を持っているときや、リズミカルに降りているつもりが、足が遅れてたりスリッパが脱げたりし、逆に滑り止めにひっかかったりするなどして大きな事故になるのです。

そんなときこそ手すりが重要ですが、一般には片方しか手すりがありません。上って行くときを考えて手すりを付けることが多いのですが、降りる時は利き腕側に手すりがないのです。利き腕は家族でも違っています。

物を持って上り下りすることも多く。階段は広い方がよさそうですが、多少狭くなっても手すりは細めのパイプにしてでも両側にあった方が安全です。若く元気な時は気が付かないことですが、若い人でも酔ったときや、寝て起きてふら付いて降りてみると、階段がいかに恐ろしいものであるかがわかります。

それが老いた時の感覚なのです。両側手すりは若い時でもスキーなどで足をくじいたり骨折したりした時など両腕でよじ登れるのです。

階段の仕上げ材も重要で、板張りの階段はだれもが好むのですが、風呂の場合と同じように、かかとから足を下ろしたときに滑りやすく、段鼻に市販の滑り止めを付けている家庭も多く、つま先を引っ掛けて頭から落ちるなどの大事故にもなります。

また階段室を明るくしたいためガラス張りにすることもありますが、踏み外し転倒した場合には支えにはならず、割れて危険な凶器にもなります。

こうして家の中の段差、床、階段、玄関マット一つにさえ、足腰が弱ったときのことを考え想像して検討をすることが、今の若い自分にも安全で、それが老いの生活でのわが「老楽しく住む家」となるのです。

家庭内での不慮の事故の状況
<家庭内での不慮の事故の状況>

 

厚生労働省:人口動態統計年報主要統計表(最新データ、年次推移)
<厚生労働省:人口動態統計年報主要統計表(最新データ、年次推移)>

 

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では次回は「老楽しく住む家」の暮らしとは?です。


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お楽しみに♪

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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