住宅関連記事・ノウハウ
段差と温度差注意!お年寄りで怖いのは
1 段差はあった方がいい?それより温度差注意!
バリアフリーの解釈はいろいろです。確かに垣根や段差は文字通りバリアです。また道路や駅など公共施設のどこでも車いすで通れることは法制化されています。しかし肝心の家においては、車いすはまず道路から家の玄関までの段差、さらに玄関の上がり框(かまち)や小上がりの和室など、家の中の段差がバリアとなり、車いすの生活はかなり困難なものとなります。第一廊下やあらゆるドアの幅やキッチンやトイレの狭さ自体、自力で車いすを操ることはできません。
お年寄りの生活にはつまづきそうな2,3cmほどのちょっとした段差が危険なのです。また廊下や階段など滑りそうな床材もスムースで、バリアではないはずですが、実はお年寄りには滑って危険なのです。そんなことから明日できる現実的なバリアフリーを考えてみましょう。
2 浴室の段差はスノコで調整
最近のユニットバスの浴室の入り口が脱衣室と同じ高さで段差がほとんどありません。確かにずり足でもスムースに入れますが、最近「子どもや孫たちが入るとお湯が脱衣室にまで溢れて床が腐って落ちそうです。なぜ洗い場と平らにしたのでしょう?」との苦情が多いのです。しかもこれが当の高齢者からですから皮肉な話です。
確かに車いすや介護機器の為には浴室の水切り段差は避けたいものですが、意外にもお風呂の水切り段差はあっても、ここでつまづいたり滑ったりする“せっかちな老人”は少ないのです。むしろ若い主婦の方がお湯が溢れて慌てて飛び込んで滑って転ぶ事故の方が多いと言うのです。それ以上に脱衣室にザバーとお湯が溢れ出るのは問題です。各社この脱衣との仕切りにいろいろ工夫をしていますが、それでも乱暴に入ったり引き戸を開けていたらまさしく溜まりません。そこで私は現在の浴室などあえて水切り段差を残したり、今は少なくなった段差のあるユニットバスを探し出し水切りをしっかりします。その代わり脱衣室と同じ高さにスノコを敷いて段差の解消をするのです。これによってしっかりした水返しが出来、脱衣室に水が溢れ出すことはなく、湿気や床が腐らず安全で、しかも木の香りと足触りを楽しむこともできるのです。
3 段差はあった方が動きやすい?!
さらに私はお年寄りに、あえて腰掛けられるほどの段差を設けます。高さは20センチから30センチほどですが、起き上がる時に足を降ろして立ち上がるのに楽な場合があるのです。それが玄関の上がり框であったり小上がりの和室などです。もちろんその段差の上がり下りには15センチほどの段を付け手すりを付けるのです。
玄関ポーチなど奥行きがなく急なスロープにするより、ゆるい段にしてにして数を増やし、手すりを付けるのです。これを急なスロープにすると降りるときに滑ったり弾みがついてかえって危険なのです。加えて雪や雨など降ったらさらに危険です。実際こうして小幅な階段したところ、足の不自由なお年寄りがかえってリハビリになって良かったと言うのです。
これはいろいろな症状があって一概には言えませんが、確かにゆっくり歩きゆっくり足を上げて動くことは専門家も奨励していることのようで、こうした運動ができる段差は住まいに少しはあった方がいいと考えるのです。こんなスノコと段差の発想から、私はベッドから起き上がって腰かけたまま両手をついて腰をずらし、同じ高さの便器にまで移動しそこで用を足すと言うベンチ式トイレを提案しています。まさしくベッドにつながった“おまる”でしかも水洗式なのです。これで介護者が来るまで待つことも無くプライバシーもあるのです。実際に私の母は夜間コールを遠慮して、病室の脇に据えられたポーターブルのおまるに乗り損ね、一緒に転んで大腿骨骨折でそのまま寝たきりとなってしまったのです。
4 お年寄りで怖いのは段差より“温度差”
さらに、お年寄りの事故で多いのは段差よりも “温度差”で、夜中のトイレで、暖かい布団の中から冷えた廊下を通る、トイレへの道筋か寒いトイレで血栓疾患を起こし倒れる人が多いと言うのです。私は「段差よりも温度差!」と主張し、こうした温度差が極力生じないようにし、贅沢でも寝室から廊下トイレあるいは脱衣室までを床暖房としたり、ついには“寝室の中にトイレをつくる”すなわち「トイレの中の寝室」のような発想をするのです。それが先のベッドの高さを揃えたベンチ式トイレの考え方で、段差も温度差も一挙解決なのです。
実際に、トイレ、浴室で転んで頭を打ったと思しき事故が、実はその原因が心筋梗塞や脳梗塞で倒れて打ったと言う症例もあり、その誤認をした場合、救急処置が遅れ、生命や麻痺(まひ)からの救出を妨げることもあると言うのです。
その対策に、まずは家中の温度差を無くすことから始め、そしてつまづいて転ばないように徹底的に中途半端な段差をなくすことが重要です。なんと、私の祖母は浴槽には入らず、人の手を借りることなくそのスノコの上で転がりながら体を洗っていたのです。
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