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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 本当の自分の家を考えよう 生身の住空間とは!

はじめに

長いコロナ禍でいろいろなことが変わりました。職場や学校はオンライン会議や講座だZOOMとなり、住まいも在宅勤務でリモートワークの職場化し、人の行き来も訪れもしない職場や大学となり、家も独居暮らしとなり、人々は良くも悪くも、個として独立・単一化、分断化してしまったようです。

合掌造りの囲炉裏の上は屋根全体が大きなダクトフード状になっていて、炉の熱で家全体を暖め、上昇気流で空気を換気し、炉辺周辺の感染予防にもなるのです。そもそも職場や大学とはただ働く場や学ぶ場で、家とはただ住むところだったのでしょうか?確かにIT化が進み多角的なメディアもあり、多方面の情報に溢れ、SNSによって人との交流も広くなり、多くの人と対面することも可能となっているのですが、果たして人と人とが交流することの意味とは、真の意思の疎通はいったいどうでしょう。

人と対面することは可能でもその微細な表情や息使いなど、なかなか伝わりにくいものです。さらにメタバースの空間に一個のアバターとしてその仮想空間に参加するで、果たしてその人としての人柄や、人格、責任、果てはその尊厳は維持できるのでしょうか?人と人とが対面し交流することの意味、対面しようとする自身の真意やその立ち位置や居場所が問われる時代が来たと言ってもいいでしょう。ネット社会やIT革命とはそれを見抜き選択する能力、想像力の時代とも言えるのです。

写真:合掌造りの囲炉裏端(天野彰)
写真:合掌造りの囲炉裏端(天野彰)

仮想空間で愛は語れるか

対面とは触れ合い温もりです。テレビ電話で会話でき、立体画像を駆使しても相手の温もりや臭いまで触れることもできないのです。それこそが家族と家族のふれあいの原点です。職場や会議で侃々諤々語り合い、そこに新たなアイディアが生まれ、人々の意見の相違も確認でき、結果総意も確認できるのです。ZOOM会議などでいくらセッションを行っても、一部の発言者のズームアップとなりその場の全体のシーンは伝わってきません。たとえ何台ものカメラを設置してもその全体の状況を掴めないもので、ただ確認するだけの徒労に終わり、すでに進路を間違え国際社会ではZOOM紛争が起こり生身の戦争がまるでゲームのようになって行くことが恐ろしく感じられます。

生身の住空間とは

仮想空間では愛は生まれないのです。微妙な表情を感じながらその本心を探り、ふれあいと温もりこそが愛を育むのです。果たしてあのソフト満載の犬型のロボットで愛は生まれるのでしょうか。映画と言う平面にいかにこうした表情を伝え、カメラワークを駆使して投影しても映画という空間の中で見る人の想像力と自己満足に頼るしかないとは映像制作者の本音でもあると言えるのです。住まいもまた生身の人が住み、そこで愛を育み、家族の一体感を生み出す空間でありたいと思うのです。例え先端的なIT機器や3Dプリンターなどでスマートな住まいができようとも、定型の平面図と架構のまま生み出される家を建築士たちがおざなりのインテリアや設備で包み込んでも生身の自身や家族を温かく包んでくれる家になるかが疑問です。

対面式キッチンは今

イラスト:皆が集まる炉辺テーブル(設計:天野彰)
イラスト:皆が集まる炉辺テーブル(設計:天野彰)

時代がいかに変わろうとも生身の自分自身は変わらないのです。いかに社会や環境の変化に自身とわが家が適応して行けるかが大切なのです。LDKで大きく変わったわが国の家も時を経て対面式キッチンとなり家の主役となりました。しかしわが国の家そのものの本質は竪穴住居以来何千年以上も変わらないのです。壁で囲われ個室になりましたが、住まい方や家族のなりわいも変わっていないのです。

写真:わが家の居酒屋キッチンS邸(設計:アトリエ4A)
写真:わが家の居酒屋キッチンS邸(設計:アトリエ4A)

炉から始まった家は今も住まいの中心で、移動しながら少しずつその生活を変えているのです。

イラスト:皆が集まる一人キッチン・アイランド(イラスト:天野彰)
イラスト:皆が集まる一人キッチン・アイランド(イラスト:天野彰)
写真:アイランドキッチン千葉N邸(天野彰)
写真:アイランドキッチン千葉N邸(天野彰)

今や対面しないキッチンは炉を中心に炉端や炬燵のように人を呼び寄せ、愛を育み、この先の住まいを構成し暮らしの機微を生んでIT社会の今こそ、この本質を忘れてはならないのです。

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リフォーム建替自分の家を生かす方法

今住んでいる家をリフォームするべきか、あるいは思い切って建て替えるか?To be or not to beではないのですが、実際にリフォームに際し今の家を生かすか壊すかで悩む人は多いのです。真剣に考え込みすぎて結局ま、いいかで、何もしないままでいる人も多いのです。何もしないまま空き家とならないように家はなんとか無事に建っていて、家族も使い勝手が悪いまま何とかやっている。

今何かをしなくともそんな時期やチャンスが巡って来たらやればよいなどと言っている間に突然大地震が起こったり、今のようなリモートワークなど閉じこもり生活のコロナ災禍となったり、先に先にと言っている間に定年退職をしたら住宅ローンも借りられず資金づくりも難しい。次第に自身の体の調子が悪くなったり、親の介護が必要となったりと、この先何が起こるかも分からないままに、老いて空き家となる。肝心の子世代の若い人たちはと言うと、賃貸から何とか分譲のマンション、できれば戸建ての持ち家へと、親の家には興味も持たない。

こんな空き家が全国には八百万戸余もあると言う。この現象は大きな都市問題でもあり、国家的損失の社会問題でもあるのです。

壊す減築大幅リフォーム

確かに今の家をこの先どうしたらよいか。思い切って壊してこじんまりした終の棲家をつくるかあるいは、すでに子どもたちは出て行き、夫も同僚たちを連れて来るような世代でもなく余った家の一部を壊して、流行りの減築リフォームにするか?

はたまた今の家をそのまま屋根と骨だけの裸の構造体にして、全体の間取りまで大きく変えて大幅のスケルトン・リフォームをして、家の一部を貸して老いの暮らしの糧にでもするまで考えるのです。

アイディアはいろいろ巡っても、いざどこに頼むか近所の工務店やリフォームの看板を掲げた店に声を掛ければ、近所だけに安心のようで、反面断ることも難しそう。何よりも家の内情を知られることも気恥ずかしい。そこでネットや展示場などで安心そうな窓口に相談をすると、今度はなにか割高になりそうな話しとなり、果ては家にまで追っ掛けられるかもしれない。肝心の自分たちが何かを決めている訳でもなく、どうしたい訳でもない。ましてそんな予算を用意している訳でもない。今の住まいは自らの老後不安とともに都市の中での存在を、もう一度根底から考える時が来ているのです。身体と同様、住まいの健康診断さらには予防診断が必要となっているのです。

家の価値を知り、わが身わが暮らしの老いに向けて、家はもとよりその周辺で、わが人生を考えてどこを補強して、どこを守るかこうして自分が考えた家こそが今の自分に合った最良の家となるのです。方法はいっぱいあるのです。アドバイスも思い切って専門家に訪ねてみることです。

自分の家とは何のために必要か

いざ家づくりのチャンスを得て、改めて自分たちの家はと考えてみると案外難しく、住宅展示場など見れば見るほどよく分らなくなってしまいます。あれほど家を欲しがって多くの建物を見て、家づくりの資料を集めていたのにますます分からなくなってしまいます。これが家づくりの不思議でおもしろいところです。

実際に多くの家づくりのお手伝いをして来て思うことは、その人にとって家族にとって本当に何が必要で何が一番大切なのかを探ることがとても難しいことがよくわかります。多くの住宅やショウルームを“視”過ぎてその都度の提案や数値を断片的に見せられて知識が豊富なのです。

対面式キッチンがどうのこうのから始まり、高気密高断熱、高耐震リフォームか建て替えか果ては住み替えかなどと混乱してしまっているのです。肝心のご当人たちはまったく違う考えの夫婦や家族であり、一方は老後生活や資金、他方は遺産相続や果ては夢のデザインの家をイメージしているのです。

今ちょっと立ち留まって家族の互いが自身と家族の将来の為わが家を観るとても良い機会でもあるのかも知れません。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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