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「長寿の家」は夫婦の生き方にも問題がある?
多くの家を設計してきて、住まいが自然に人の生活、ひいては性格さらには夫婦の関係にまで影響を与えていると思うのです。結果としてそれが「長寿の家」の是非ともなるのではないかと言えるのです。
【1】きっかけは子育てが終わって子どもが出て行った後にある?
一般的には夫婦があって、子どもが生まれ家族があり、そのための家がある。こうして夫婦があることが当たりまえであり、子どもたちも母がいて父がいるのが家とも言えます。やがてその子どもたちは育って出ていきます。しかし夫婦はその家に残り夫婦だけの家となるのです。ここが住まいの大きな変わり目、いわば岐路ともなるのです。
3LDKないしは4LDKの家では、さあ、今だと思いながら空いた子ども部屋に移り住む。その時多いケースは妻が早速その部屋に移り住む?夫はそのまま広くなった寝室で悠々と広く住む。
これは互い違和感なくそれが快適だと思うらしいのですが、ここからなんと夫婦は“家庭内別居”となり始め、知らず知らずの間に互いが冷えた関係?となる危険もあるというのです。
【2】「時差」そして「温度差」さらに「煩さ」三つの“さ”がある?
一般的には夫婦寝室があって子ども部屋があります。そこで子ども部屋の一つでも空けばこうして夫婦の寝室が“晴れて”二つになり、互いが勝手に寝て、勝手に暮らせるかのような解放感もあると言うのです。が、なにも夫婦の関係が悪いなどと言った深刻な問題があるわけでもなさそうなのです。
そう、その解放感とは、次第にずれてくる夫婦の生活時間と心身の変化です。特に就寝時間の差です。どちらかが早く寝て、早く起きるといった夫婦の「時差」です。これは狭い一つの寝室では鬱陶しいことです。
さらに、暑がり・寒がりの「温度差」で、介護施設や病院での共用の療養室のように “クーラー戦争”とも言えるトラブルも起こりかねないものです。深刻なのがいびきや歯ぎしり、寝言や頻繁になるトイレの回数などと本当に「煩さ」の3つの“さ”があるからなのです。
これが若いころは狭い部屋でもなんとか我慢してきたのですが、子育ても終わり、こうした家族変化が起こると、一気にこの夫婦別室の思いが出てくるようです。
【3】「夫婦寝室」は「夫婦/寝室」がいい?」
とは言え、今の家で一階と二階に離れて寝ていて、互いの身に異変が起こると大変です。その異変に気付かず助けられなかったなどという悲劇が起こるかも知れないのです。
リフォームや建て替えなどの際、夫婦別室の希望も多いのですが、筆者の事務所ではそれを勧めません。余ほどの事情がない限り極力一部屋にし、最悪でも隣り合わせにすることを勧めます。おせっかいな設計者のようですが、これがこの先さらに老いる夫婦の最大の選択だと思うからです。もちろんそのための提案もするのです。
なんてことはありません、一つの寝室を二つに仕切れるようにする。必要な時はふすまでスルスルと閉じて仕切る。いびきの煩いときは防音を考えた分厚いふすまに。これなら二つのエアコンにして、互いに適当な室温にもでき、時間差にも対処できます。
不思議なもので、次第にふすまもしっかり閉じなくなり、自然にふすま一枚だけの「夫婦寝室」になってくるものです。これで異状の時でも気配を感じられ、風邪などの際はふすまで“隔離”でき安心です。
簡単にはリフォームで、今の寝室にふすまを建てることもできます。もっと簡単にはアコーデオンカーテンや防音カーテンで仕切ることでも効果的です。これこそが「長寿の家」の夫婦寝室です。
次回からは改めて、私たちはどこにどう住むべきかを考えてみませんか?
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