住宅関連記事・ノウハウ
私の住まい『壁の家』『傘の家』との葛藤
誰も家づくりや大規模なリフォームともなると緊張し、ある一種の興奮状態となるのです。いかに思慮深い人でも快適そうな家の写真やモデルルームなどを見ると瞬時に気に入ってしまい、それが残像として目の奥に焼き付けられてしまいそこからなかなか抜け出せないのです。
しかしいろいろなモデルルームを見るうちにどれも同じようになり、今度は価額、果てはセールスマンの善し悪しによってそれで決めてしまうのです。土地と建物を合わせると1億円以上するものをそうしてあっさり決めてしまうのです。そこでこの先の春夏秋冬を何年も暮らし、なによりもその家で子どもたちも生まれ、育っていきます。
【1】近代化?いや西欧化への逆行「壁の家」と「傘の家」の違い
果たして、気が付いたらカッコウのいい家がただの箱のような感じに思われ次第に内外の仕上げ材もメッキが剥がれるような感じとなるのです。そこでは春夏秋冬の季節を感じられず、あの住まいの情緒も重厚さもなさそうです。
いったいどうしてなのでしょう?そこで私たちの住まいの起源と住まい感覚は、本質的に西欧の住まいと異なることに気付くのです。
それこそ厳寒の対自然の閉鎖的な『壁の家』に対して、対湿気重視の開放的な『傘の家』との違いです。それも単に構造的なものだけではなく長年にわたる精神的なものがあり、西欧追随の姿勢では日本人にとって快適な住空間は求められにくいのです。さらにその土壌や空気や水、そして人との関係が何よりも大切であることもわかります。
その精神性や心理を大切にしないまま今風のデザインの住まいでは次第に違和感を感じて来て、愛着すら持てないのかも知れません。
【2】やはり「土」三つの「土」が重要
はたして近代建築の手法「風土」「郷土」「国土」の三つの「土壌」が私たちの住まいに課せられしかも欠かせることができない要素でもあるのです。これぞまさしくわが国の住まいの「三土」で、同時にこれが住まいの快適性を生み出すだすことにもなるのです。
その第一が「風土」で、湿気対策でありわが国の高温多湿の気候を代表するまさに「夏の家」の発想となり、さらに明確に四つに分かれた四季の美しさと恵みを取り入れるべき柔軟で開放的な住まいづくりとなるのです。
そして「郷土」で、まさしくふるさとです。日本人の誰もが潜在的に持つ郷土志向、家志向、親志向とも言えます。ここに親と子をはじめとする家族の織りなしや同居の問題はたまた和の志向など良しにつけ、悪しにつけどうしようもないわが国独自のものであることがわかります。
「国土」はまさしくわが国の狭さを表します。人口に比較して狭い国土は当然のごとく住まいの広さにも影響します。さらに中央集権型の国家は都市に人口が集中し、ますます都市の住まいは「狭苦しく」なるのです。バブルもその崩壊もそして今なお残る国家的不良債権も、区分所有の老朽化するマンション問題や、あの林立するタワー・マンションに至るまでの無策も、すべてこの三土に端を発しているのです。
【3】三つの「土」に翻弄させられ筆者のはじめての家が完成!
わが国に根を下ろす住宅ならこの三つの土から逃れるわけにはいかないのです。私たちはその中で快適にそして末永く生きていかなければならないからです。こうして筆者の処女作ともなる臼杵のこの家は完成したのです。
その街の風土と敷地の形状から家のカタチと素材を選び、さらに風土に合わせた地域性と自由な家族の生活行動に合わせてプランを配置したのです。こうして杉の薫りと肌合いの住まい全体のインテリアとなり外観の素地ともなったのです。地場のどこにもある「はいいし」は玄関の中まで取り込まれ、自然に街から家の中まで誘導するのです。こうした“三土”のおかげで、家づくりの姿勢は今も続いて、リフォームの際にも心がけていることとなったのです。
次回は「家づくりは 楽しく旅をして出会いをつくる」をお話しようと思います。
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