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【2011年】住宅被害認定の制度を見直し
住宅被害認定の制度を見直し
2011年5月2日、内閣府は罹災証明の住宅被害認定の制度を見直し、これまで認定対象にされていなかった建物の傾斜や沈下について、いっそう重い被害と認定する方針を発表しました。
東日本大震災で多発した地盤の液状化による住宅被害については、その補修に多額の費用が必要とされるにもかかわらず、市町村が行う罹災証明では建物の傾斜や沈下(不同沈下)の被害は、軽微な被害とみなされます。茨城、千葉両県で約1万6千戸とされる液状化被害を受けた住宅は、すべて全壊として認定されるのか、といえばそうではありません。これまでの基準では一部損壊でしか認められない例が大半でした。
新基準
液状化被害が大きかった千葉県浦安市など被災自治体が国に判定基準の見直しを求めておりました。新基準では、住宅が床上1メートル以上沈んでいれば全壊。床まで沈んだ場合は大規模半壊、基礎の上部から25センチまで沈下したら半壊と認定されます。
傾斜について
柱と基礎が一緒に傾いた場合の基準を新たに設定。20センチの高さで水平方向に1センチ以上傾いていれば全壊と認定されます。60センチの高さで水平方向に1センチ以上傾いていたら『大規模半壊』。居住者が住んで居て苦痛を感じるとされる100センチの高さで水平方向に1センチ以上の傾きがある場合は、半壊などの支援が受けられます。
内閣府では、修復を終えた場合でも写真や工事業者の記録で被害が確認できれば、さかのぼって被害認定できるようにする、とのことです。いままでの震災ではここまで大きな問題にならなかった液状化被害で、住宅被害認定基準の見直しが後手に回った理由とは、いままでの液状化被害が、どちらかというと人口の少ない場所で起きたことが多く、短期間は報道されたとしても、長期間にわたり世間の関心をひく被害ではなかったからなのです。今回のようにライフラインが緻密にはりめぐされた人口密集地で、地盤液状化によって引き起こされた被害が想定外であった以上、たとえ後手の対応だとしても、いままでの被害算定基準で対応されてしまうと、生活再建に向けた公的補助すらほとんどない状態で、生活再建に取り組まなければなりません。地盤液状化が直接の原因で死者・不明者は出ていないことから、津波被害の陰にかくれてあまりクローズアップされてこなかった液状化被害による住宅被害ですが、未曾有のライフライン寸断でようやくクローズアップされたのです。
今回の千葉県浦安市の例を紐解くと、たとえ建物被害が軽微であったとしても、上下水道などの埋設されたインフラがより深刻なダメージをを受ける可能性は高く結果としてそこに住めなくなってしまう可能性がきわめて高いことが立証されてしまいました。こうした事実が長期にわたる報道を通じて、実感として多くの人に認識されるようになったことが、今回の判定基準の変更に結びついたと確信しています。もし、万が一他の人口密集地で同様な被害が起きたときも。この基準でスムーズに判定してもらうことで、より復興のサイクルが早くなるのではないか、という願いを抱いています。
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