住宅関連記事・ノウハウ
地震活動について考えよう!支援・診断・対策について
【1】活発化する地震活動に備えることが急務
3.11に発生した東日本大震災は、死者・行方不明者合わせて約25,000人という人的被害とその後の余震も含め、広範囲において多くの建物被害を生んだ。5.13時点での警察庁緊急災害警備本部の発表によれば、全壊88,873戸、半壊35,495戸、一部破損は256,242戸というのがその数字である。阪神・淡路大震災では、全壊104,906戸、半壊144,274戸、一部破損は390,506戸だったから、日本の観測史上最大のマグニチュード9.0という割には、マグニチュード7.3の阪神・淡路大震災と比較すると建物被害は意外に少ない。
これは今回の東日本大震災が、海溝型と言われる地震なのに対し、阪神・淡路大震災は内陸直下型であり都市部を襲ったことが大きな原因だ。この内陸直下型地震で恐ろしいのは、直下型として起きるために海溝型地震よりもずっと小さな地震でも、大被害を生む点だ。しかも内陸直下型は、活断層に関係なく、日本のどこを襲っても不思議ではない。囁かれる東海・東南海・南海地震も含め、活発化する地震活動の中、災害に備えておくことが急務である。
【2】耐震性には大きく3つの要素
- ・設計による建物本体の耐震性
- ・建築時の施工精度とその後の維持メンテンス状況
- ・建築地の地盤の状況
どれひとつかけても耐震性には不安が残ります。
項目 | |
---|---|
□ | 1981年6月以前に建てられた建物である |
□ | 建物の形が四角ではなく、L字や凸凹である |
□ | 1階がガレージなどで大きな開口となっている |
□ | 柱だけで支えている10帖以上の部屋がある |
□ | 1階と2階の外壁の位置がそろっていないところがある |
□ | 建物の四隅の内、90㎝以上の外壁がない角がある |
□ | 建物の南側面、西側面などほとんどが窓になっている外壁面がある |
□ | 一辺が4m以上の大きな吹き抜けがある |
□ | 屋根は昔ながらの重い瓦である |
□ | 室内の天井や壁に雨漏りのようなシミがついている |
□ | 外部サッシがしまりにくい所がある |
□ | 内部ドアの上部もしくは下部の隙間が均等ではない |
□ | なんとなく床が傾斜しているように感じ、ビー玉を置くと転がる |
□ | 浴室がユニットバスではなく、洗面所などの湿気が溜まり、床が沈み込む |
□ | 基礎や外壁や内壁にクラックが入っている箇所がある |
□ | 地名に池、沢、沼、川など、水に由縁のある漢字が入っている |
□ | 隣地、道路との高低差がかなりあり、擁壁が間知石で古く、傾いている |
□ | 過去に大きな地震、台風、水害などの被害を受けたことがある |
□ | 増築・改築をしたことがある |
□ | シロアリが発生したことがある |
【3】一般簡易耐震診断結果
- 16項目チェックした方
- 倒壊する危険性が非常に高い建物です。すぐに専門家による耐震診断を行い、補強工事をおこなってください。
- 11~15項目チェックした方
- 重大な欠陥・瑕疵の恐れがある建物です。大きな被害が出る可能性がありますので、専門家による耐震診断を行い、補強内容の検討を行いましょう
- 6~10項目チェックした方
- 耐震性に何かしら問題がある建物です。専門家による耐震診断を行い、詳細な状況を把握しましょう
- ~5項目チェックした方
- 一応問題がなさそうな建物です。チェック項目によっては耐震性の問題が疑われますので念のため専門家に見てもらいましょう
まずは、自身で現存の建物をチェックし、上記の表にある20項目のチェックリストは、木造の一般住宅を想定し、耐震性に起因する3要素をちりばめたものだ。程度に差こそあれ、すべてに危険な兆候があるものばかりで、一つでも該当するものがあれば専門家に相談することを勧める。マンションの場合は、長期修繕計画に基づき、10年以上経過したところで劣化診断を実施しているはずなので、心配であれば閲覧し、内容を把握しておくことも必要だ。
【4】耐震診断と補強対策
複数にチェックが入った場合、耐震診断を行なう。耐震診断には、木造の場合、一般的に財団法人日本建築防災協会の木造住宅耐震診断プログラム評価制度の基づく認定ソフトを利用した「一般診断法」を利用する場合が多い。この「一般診断法」は、調査をする人が目視で行なうもので、隠れている柱、耐力壁などは図面をもとに入力、筋交い接合部は釘打ち、地盤については良好な状態が前提となる。問題点は、調査する人の見方で結果が大きく変わる点である。何が正しいというものがなく、調査員の判断でソフトに入力していく。リフォーム会社が営業目的に独自で調査する場合があるが、できれば、市区町村の指定する診断士か中立的な検査機関に耐震診断をお願いした方が良い。
中立的な検査機関で50,000円から150,000円が相場だ。市区町村の中には、耐震診断を補助してくれるところもあるので、助成相談窓口にまずは相談することが必要です。
耐震診断の結果、耐震補強が必要になった場合は、しっかりとした建築会社に施工してもらうことが大切です。耐震補強工事は、リフォームというカテゴリーにいれられがちだが、全く別物である。リフォームという未成熟な業界の問題点は、建設業の資格がなくても営業ができ、新築時のような確認申請手続きや工事中の検査もないところだ。前述した耐震性に起因する3要素のように、どんなにいい設計であっても、いい加減な施工精度では地震には耐えることができません。お金をかけただけで身の安全にはならないので、しっかりとした経験のある複数の建築会社に見積もりをお願いし、よく吟味検討することが必要です。
耐震補強工事に必要な費用も市区町村で助成しているところが多く、東京都港区を例にとれば、木造住宅で130万円、非木造住宅で200万円の最大助成があります。
耐震診断では建物本体の診断であるため、地盤状況のチェックも忘れないようにしたい。1メートル四方程度の空地があれば、サウンディング試験といって簡単な機械で、地耐力を調査する方法もある。費用は30,000円から40,000円程度だ。また市区町村の役所に行けばハザードマップや地形図などももらえ、災害に強い土地か否かが判断できる。隣地との高低差がある場合などは、擁壁の状況確認も必要だ。亀裂が入っていないかどうか、膨らんでいないかどうか、水抜き穴が正常に機能しているかどうか確認する。なかなか一般の人にはわからないだろうから、我々のような専門家に調査してもらうといいでしょう。
【5】公的支援と住宅政策
市区町村では、耐震診断や補強工事に必要な費用を助成してくれるだけでなく、マンションの劣化診断の助成や危険な擁壁の整備に必要な資金を金融機関から借り入れた人に対する利子補給事業なども行なっている。都道府県でも別途支援しているところも多く、東京都では、耐震改修を行なった建物に対し、一定期間、固定資産税及び都市計画税の全額免除を実施している。国も耐震改修減税や耐震改修助成等で支援している。
昨年の6月、新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~が閣議決定された。7つの戦略分野の基本方針と目標とする成果の住宅政策の中で、2020年までの目標数字として、耐震性が不十分な住宅割合を5%にすることを掲げた。
2036年までに70%の確率で首都直下型地震が起きる。既存住宅ストック4950万戸の内、約21%に当る1050万戸が耐震性不十分な住宅で、これを5%の247.5万戸にすると明記してあります。つまりあと10年で802.5万戸を耐震改修すると宣言した。東日本大震災が起きてしまった今、あと10年早ければとも思うが、二度と同じ過ちを繰り返してはならない。そのためには、一刻も早くひとりひとりの住宅の耐震性を上げ、町を強くし、都市を強くし、日本を強くする必要があります。もう目の前に危険が迫っているのだから他人事ではなく考えてみましょう。
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