住宅関連記事・ノウハウ
住む人が幸せになる家 建築家 八納啓造
【1】住む人が幸せになる家という発想
はじめまして、建築家の八納「やのう」啓造です。私は普段、広島と東京を拠点に「どうすれば住む人が幸せになる家が造れるか?」を日夜探求しながら、家の設計に取り組んでいます。設計してきた建築物は2012年3月次点でかれこれ107物件。そんなことを考えながら20年近く経ちますが、家造りというものは、家族の数だけ違いがあり、またその違い1つ1つが味わい深いものだと実感しています。そんな中で1つ興味深いことがあります。それは「家を手に入れて幸せに暮らしている人の共通点」についてです。
それぞれ条件も家族構成も何もかも違う条件ですが、それぞれの家族に共通点があるのです。その共通点は、どんな家族にも応用可能で、実際の家造りでもそれを活用することで、実際に住む人の幸せにも繋がっていると実感してきました。
それらのエッセンスを2010年12月に「わが子を天才に育てる家」(PHP研究所)2012年2月に「住む人が幸せになる家のつくり方」(サンマーク出版)でまとめさせていただきましたが、今改めて「住む人が幸せになる」という発想が大切だと感じています。2011年の東日本大震災をきっかけに、省エネや耐震性、安全性などの関心が高まりました。スマートハウスなど、人類が今後安心して生きていくためのハード的なノウハウが蓄積されつつあります。とても重要なことでしょう。それと合わせて大切なのは、「住まうことへの満足感」「幸せが実感出来る住環境」です。ハードが先行して整備されていったとしても、そこに住まう人たちの暮らしが心から満足出来ることが、本来「家」として一番重要なことだと考えているからです。
住まいは何十年と住んでいく場所でもあり、その家での過ごし方が人生にも大きく影響するのを見てきました。その視点から考えていくと、家は単なる箱ではなく「家族の幸せを後押しする存在」であることを忘れてはならないように思います。
コラム「住む人が幸せな家 建築家 八納啓造」では、21世紀のこれからの時代、住まいを通じて幸せを実感するために、忘れてはならない視点などをまとめてお伝えしていこうと思いますので、今後ともよろしくお願いします。日本で家を手に入れる動機で一番多いもの、それは一体何でしょうか?「子供が大きくなったから」「そろそろ年齢的にも」「両親と二世帯に住むことになったらか」「今後の震災などに堪えられる家が欲しい」「省エネを考え、停電しても生活出来る家にしたい」などそういう理由もあることでしょう。しかし、日本で一番多い動機は「家賃払うくらいだったら住宅ローンの方がまし」なのです。確かに、家賃だとお金は掛け捨てになり、住宅ローンだったら自分たちにお金をかけているように感じる部分もあります。
巷では「賃貸が得か?持ち家が得か?」などのテーマの特集もたくさんあり、専門家によっては意見が分かれるところです。もちろん、IQ(論理的なお金の計算部分)的な側面は、大切ですが、損得勘定を優先して家を手に入れた方の多くに「家が一年で飽きる」「家は帰って寝るだけ」「家に愛着をもつという考え自体があまりない」など、家に対して無味乾燥な感覚に陥りやすいという実態をたくさん見てきました。
これらから考えても、家を手に入れようと思う動機がどういうものかで、住まう充実感に影響していることが見えてくるでしょう。
【2】家を手に入れる最近多い動機の落とし穴
東日本大震災以降「今、太陽光発電をつけると得なのですか?」「木造だと耐震性がとても気になります。木造でも問題ないのでしょうか?」など相談者から、これらに類する質問を受けることが増えました。住宅業界自体もこれをビジネスチャンスとして受け止め、省エネを追求した「スマートハウス」や耐震性を追求した免震、制震構造の家づくりなど研究開発され、続々とそういった家がリリースされています。住宅の性能や技術レベルが高まるという意味では、意味があることだと思います。合わせてこれから家を手に入れようと思う方が「家の性能やスペック」にばかり意識が行き過ぎる傾向も同時に起こっています。そして、これらが家を手に入れるための決め手や動機にする人も増えています。ただ、ここで気をつけたいのは「家の快適性は性能やスペックだけではない」ということです。
例えば、断熱性能や気密性能が高く冬でも温かいリビング空間。これだけ見れば素敵です。しかしそのリビングで、TVを見るだけでTVが終わるとそれぞれが部屋に入ってしまうという使い方だとどうでしょう。リビングで家族でどんな過ごし方がしたいですか?イメージ力が高まるほど家での快適性もUPしてきます。
これまで関わってきた家づくりからの経験でいうと「家は単なる箱ではなく、家は家族の幸せや居心地の良さを後押ししてくれる環境であることが重要」と確信してきました。
「居心地の良い環境」これは性能やスペックなどの数値だけでは、測れない領域があります。それは「具体的にこの家でどのように暮らしていきたいか?」という思いや「この家を手に入れることでどんな夢を叶えたいか?」という思いやイメージ、そしてビジョンです。
【3】住む人が幸せになる家 なぜ「幸せな家」という発想が大切なのか?家を買うという発想はもったいない
家を手に入れることを「家を買う」という人もいれば「家を建てる」という人もいます。どちらかというと前者は家を買い物として購入する感覚が強く、後者は家を造って形にしていくという感覚が強いようです。どちらの感覚に対して善し悪しはないのですが、「家を買う」という感覚が強いようでしたら、それは個人的にもったいない、と考えています。なぜなら、購入するという行為は、購入することが目的になってしまって、購入後どのように使いこなしていこうか?というところに意識がいきにくいからです。
そういう側面から言えば「家を買う」ではなく「家を持つ」「家を建てる」「家をつくる」などのフレーズを使うことで、家を使いこなしていくイメージや意図が湧きやすくなるでしょう。これを機会にフレーズを変えてみましょう。
既存の松と調和しながらも、新しさと懐かしさの融合を図った作るという発想だからこそ醸し出すことが出来るデザイン
【4】なぜ「幸せな家」という発想が大切なのか?家を通じて幸せを形にした人々
- この家でサロン的なことをしていきたいと思っているんですと家の設計段階で夢を語ってくれたT様の奥様
- 気持ちのいいリビングに大好きな友人やご縁のある方を招いてお茶会などサロン的に使いたいんです、という奥様の笑顔はキラキラしていました。
特に素晴らしいのは、奥様の夢や自分らしさを表現したいという気持ちをご主人や3人の子供たちも応援してあげたいという思いでした。
「自分らしさを表現する家」打ち合わせを重ねるにつれて、このフレーズがこの家のメインコンセプトになりました。奥様の夢を皆で応援するという側面もありますが、ご主人もそれを楽しく自分なりに表現しながら応援する。そして子供たちも自分たちがこの家を通じてどんな生活をエンジョイできるか?など、住む人皆の自分らしさを表現していくというふうになっていきました。
建築家として考えたのは予算とデザインのバランス、特にデザインは周辺の街並からみて落ち着きながらもおしゃれなデザインで女性の感性にうったえかけることを意識しました。あまりにもゴージャスだと周辺から浮いてしまうし、オーソドックスすぎると目に入らない。
「何か機会があったらあの家に入ってみたいな〜」と思ってもらえるようなデザインコントロールで出来上がったのがこの家です。
- 家が完成してから早速サロン的な活用をし始めた奥様
- 予想以上にたくさんの人に興味をもっていただいたようで、家が完成してから半年でそれまで勤めていた仕事を退職され、サロンを中心に活動されはじめました。「この家が無かったらこういう生活は手に入っていなかったと思います」
完成後1年半経った時に奥様から伺った言葉です。「家は家族の夢を叶えるための器」だと改めて思った瞬間でした。
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