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建築家 天野 彰 「狭い」の反対は「広い」です。では「狭苦しい」の反対は?~狭楽しく住む

1 狭いの反対は広い?狭苦しいの反対は?

大半の人はだだっ広い」と答えますが、本当でしょうか?

都市の家は狭く、高い?

なぜなら利便性が良いからです。職もあります。だから人は都市に集中するのです。こうして人口密度が高くなればなるほど比例して都市の家は狭く高くなるのです。そこに家族が増えれば狭いばかりか狭苦しくもなるのです。どうせ狭く、狭苦しいのならその「苦」を取り去り「楽」にすればいいのです。さらに「楽」どころかもっと「楽しく」するのです。狭苦しいの反対は狭楽しいかもしれません。

狭楽しさを追求してはや40年が経ちます。私が最初に刊行した著書も『狭楽しく住む法』でした。小さな中古の2LDKを購入したことに起因します。長男が誕生し続いてもう一人が生まれることになったからです。運よく一階の小さな庭付き(ベランダだが土だった)が買えて子犬を飼うこともできました。ところが2LDKとは名ばかりで確かに6畳間が2部屋あったもののLDKは大きなキッチンで料理をすれば音も匂いもすべて台所!おまけに玄関からすべてが丸見えで、水回りもバスの中にトイレさらには洗濯機はその土間に置くありさまだったのです。これがマンションか?と愕然としたものです。

そこで、家内がお産のために実家に帰った間にこのどうしょうもない2LDKを快適にリフォームしてやろうと決意したのです。当時リフォームなどと言う言葉もなく増改築とか改装などと言っていいましたが、お金もなく時間もなく出来たことはその改装でした。
 その大きな手段があの大きなKをLとDKに分断することでした。そのテクニックこそ私がかねてより構想していた“収納ロボット”だったのです。まさしくこのロボット、単なる壁収納のようなのですが、さにあらず。DK側のすべての収納とリビング側のすべてを収納し、おまけに私の書斎(のちのオヤジデスク)まで収納されていたのです。

LをL+DKに分ける
私の住まいのLDKの真ん中に収納ロボットスケッチ右が玄関手前がリビング。ガラリの中がDK(画:天野彰)

2 収納間仕切りで新たなプランをつくる!?

LDKとは名ばかりの大きな“K”を収納ロボットこと間仕切り収納家具でLとDKとを仕切ると互いの空間がはっきりとして物が立体的に収納されすっきりとし、生活感と見た目が広く感じます。具体的にはKでの調理の場面が玄関やリビングから見えなくなり音や匂いを遮断することができ料理に集中でき、リビングは落ち着くのです。DKにしたことで調理中は食卓が調理テーブルや配膳台ともなって広くなります。もちろん作りながらも食べられます。反対にリビング側はテレビやオーディオセットなどが収納され物が片付き、そこに書斎兼用の趣味のテーブルも仕込むことができます。造り付けのライティングビューロウで私はこれをお子様デスクならぬオヤジデスクなどと命名したのです。

LDKの真ん中の収納ロボットでLとDKに 左がオヤジデスク
写真 LDKをLとDKに分ける手前左が折り畳み書斎(画:天野彰)

これと同様に2、3LDKと呼称される二つの部屋もその一つを収納家具や二段ベッドで2つに仕切って一部屋を増やしたり、子ども部屋をタンスなどの家具で半分に縮めてそこを納戸やリビングの1部として広げることもできるのです!1平方メートルも増やさず、手持ちの既成の家具で仕切れば1円もかけずに2LDKを3LDKにもできるのです。

今の“間取りを溶かして、新たな間取りをつくることも可能なのです。タンスで仕切った納戸と操縦席のような子どもコーナー

6畳を上手に子供部屋に
左 6畳を2人の子ども部屋に 右 2LDKを3LDKに6畳を納戸と子ども操縦席(画:天野彰)

3 間取りを“溶かした”プランで老後に備える?

狭いわが家を広くしたい!今の2LDKを3LDKに広げたい!子どもが大きくなったとか、部屋を要求するようになったなどが原因でさらに1000万円以上も足して一部屋広い家を買ったり、倍もする家賃のアパートに引っ越したりするのです。これでは今度は家計が狭苦しくなってしまいます。これは大変と、郊外のそのまた郊外へ引っ越しするのです。なるほど家は割安で広くなりますが、今度は通勤通学に往復3時間も4時間かかり、家族や友人との交流が狭苦しくなります。私はこれを「狭苦しさの三すくみ」と言い、都市に住む私たちはしょせんこの「苦」からは逃れられない運命なのです。そこで狭さは同じでも「苦」を取り去り「楽」にし、そして「楽しく」してしまうそれが「狭楽しさ」の発想なのです。

この狭楽しい家の発想は立体、可変、さらに人生が三原則です。既存の間取り。今の狭い家をそのままに収納家具で物を積み上げ立体的に広くし、高密度にすることです。その反対に人のスペースを極力広くするのです。既存の間取りに左右されることなく間仕切り壁を溶かすように自在に動かして新たな間取りをつくることもできます。そして可動間仕切りや収納壁で区切って子どもたちにコーナーのような部屋を分け与えるのです。時には6畳を押入れを含めて3つのコーナーに仕切ることもできるのです。そして、この発想で、いずれ子どもたちが成長し出て行った後の生活を考えるのです。そのときこれらの収納間仕切りを取り払って老夫婦で広々と住むプランに戻すのです。住まいは人生と共に生きるのです。

全ての間仕切りを取り去り自在プラン
左 すべての間仕切りを取り去り可動の“収納ロボット”で自在プランに(画:天野彰)
右上 6畳と押入れで3人の子どもコーナーをつくる 右下 住まいと人の人世を長期的に見る

4 収納は工夫すればいくらでも納まる?!

住まいの建て替えやリフォームの最大の動機とは一体何でしょう?もちろん耐震あるいはバリアフリー?残念ながらそれらは上位ではないのです。若い世代はやはり子ども部屋、子どもにせがまれてもう一部屋や一回り大きい家にしたいで、あるいは奥様方の要望から、システムキッチンを、などが大きな理由ですが、最大の原因は物、収納がない!収納が絶対的に足りない!と言う理由が本音です。

確かにこの収納が足りないと部屋が片付かないばかりか、奥さんはイライラとして、毎日の生活そのものがいやになってしまうのです。大げさですが恐ろしいことにその収納不足が原因で憂うつになっている奥さん方が多く家族全員の元気がなくなるのです。わが国では収納と言えばもともと納戸でのちに押し入れが主流となりました。あの奥行きの深い押し入れは、布団をたたんで押し入れるのにはちょうど良いサイズですが、現代のようにそこに小物や衣類などを入れようとすると大変です。奥に押し込んだものは物の陰となって見えなくなり死蔵されてしまうのです。そればかりか、その上からさらにぎゅっとものを押入れればいくらでも押入れることができるのですが、かえってますます煩雑となるのです。

押し入れの本当の意味は、文字通り布団を「えいやっ!」と投げ入れるように放り込み押入れるためでだいたいが中段の2段となっているのです。これは不便と中段を下げ、その上にもう一段棚をつくり、下段にマットレスを押し込み、中段に敷布団、さらに上段に掛け布団と、3段にしようなどと言う要望もありますが、そうした結果マットレスはともかく、重い敷布団は狭い中棚に収めようがなく、何かの棒で突いて押し込むようなことになり布団は破れ、上段は高すぎて、掛け布団など奥さんの背たけ体力ではとうてい投げ入れられません。その上段で奥さまのおでこを傷つけたら大変です。

そこでその中途半端な奥行きの押し入れを、中段を取って手前をクロゼットにし、その奥に本棚のような収納棚にしてバッグなどの小物やよそ行きの履物などを入れるのです。その奥行きを利用し奥行の深い引き出しにして、手前を今、後に季節外の衣服や履物を入れたりするなど、かなりの容量が入るようにもできるのです。

押入れを多機能収納クロゼットに
イラスト:押入れを大容量の収納に改造する 写真 押入れの中段を取りクロゼット奥に小物棚、下に下駄引出しをつくる(画:天野彰)

さあこれで玄関回りがだいぶ片付きました。こうして今の住まいを改めて見るとなんと意外なところに収納のスペースがあることも分かります。

5 住まいは「空ける」と広くなる?!

住まいの最大の問題点とは狭いです。私は住まいはせまいと読むものだと言っているほどです。なぜなら広くすればそのコストは上がりわが家の経済は狭くなり広さを求めて遠くへ移れば通勤通学に時間がかかりつき合いの時間が狭くなるからです。しかも最近は年寄りだけの暮らしとなり広いと掃除や暖房費が嵩みます。何より寂しくてたまりません。現代社会での住まいは“せまい”でいいのです。昨暮れにお話ししたように掃除のために人生を無駄にしてはいけないのです。ましてや物などに使われたり、今の家に拘束されてははいけないのです。

そこで住む場所を限り無駄なスペース、無駄な空間を空ける。もともと空間とは「空」の「間」なのです。日本の住まいは間でそれは空をつくる柱の間のことでその柱の間には何もないのです。これこそSpaceで西欧の壁に囲まれた空間はまさしく部屋でありRoomだったのです。個の本質的スペースを今改めて取戻し自分にとって、家族にとって、自由な発想で住まいをつくるのです。と言ってもなにも難しいことでは無いのです。わがスペース囲いの無い仕切りのないワンルームをつくりそこで柔軟に暮らすのです。

このワンルームもかつては一部屋しかない狭いマンションなどの呼称となっていますが、ここで言うワンルームは隔てのない家全体を言うのです。もちろんプライバシーの必要な時や就寝する時などはいずこから仕切りや目隠しが現れてルームやコーナーとなるのです。

わが国の開放的な住まいの原点
開放的なわが国の住まい(画:天野彰)

最大の要素は時、そう時間です。この時の間は何かをする時。個になりたい時などの日常的な時から、病気や来客等の非日常の時、さらには家族変化があった時、老いて不自由になった時などのライフサイクルの時にも対応することです。なんてことはありませんすべて壁やドア納戸で固定せずに襖などで自在にかつ柔軟に仕切れればよいのです。

間仕切りをすべて取り去り、自在にプランをつくる
間仕切りをすべて取り去り “収納ロボット”で自在なプラン(画:天野彰)

これはなんとわが国で固有に培われた住まいの思想でもあるのです。急激な近代化で西欧思考されて失った今の家を、わが国固有の家の思想で考え直し、現代の技術で再構築するだけのことです。さあ、「壁の住まい」の壁を空けて、部屋を空けて、改めて自分そして家族の生活を考えてみましょう!これは今の壁の家、マンションの暮らしでもできることなのです。ルーム取りから家族の居る場、何かをする場、場取りの思考に変えるだけでいいのです。

マンションの間取りも開放
マンションの間取りも開放 既成の間仕切りを空けて透明にすると効果的(画:天野彰)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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