無料新規会員登録

掲載情報件数

完成事例 1475 件 | ハウスメーカー 23件 | 工務店 68件 |建築家 11 件 | リノベーション

  1. HOME注文住宅のハウスネットギャラリー
  2. 住宅関連記事・ノウハウ TOP
  3. 設計のヒント
  4. 狭い国土でどう住む?

住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 狭い国土でどう住む?

1 狭い土地、いったい国立競技場はどうなるか

私は狭い土地の設計が好きだ。すでに50余年の長きに渡って設計し続けているのです。3万坪ほどのしょうゆ工場の設計依頼を受けても、狭い谷間や山をそのまま利用し環境を保全して最小限の予算で最大の生産をあげる設計をするのです。

写真 山と谷を利用したしょうゆ工場(筆者設計)
写真 山と谷を利用したしょうゆ工場(筆者設計)

なぜならわが国はもともと狭い国土で地価が高く家も狭い。建築家たちは狭いながらもやりがいのある家を建て、その家の周辺を含めて家を丸ごと高密度に高機能の設計をし、完成してからもその建て主や家族の笑顔が見られるからです。戦後復興間のない1964年の東京オリンピックではあの短期間に首都高速道路(今河川を埋め立て都市の景観を失った大きな負の遺産も残るが)新幹線、東京タワーのテレビ放送網を含め壮大なレガシーを残し、その後の高度経済成長を支えた言わば名棟梁と言われる匠の技は多岐にわたり高度な技術文化を支え、私たちにはまい進してきた建築家の遺伝子があるのです。

しかし今回のその成長を遂げ洗練された日本の威信をかける第二の東京オリンピックのメーンスタジアムの新国立競技場のありさまはいったいどうしたと言うのでしょう?国民の誰もが知らない間に応募要項が発せられ審査委員が決まり、初めて聞くコンペテターとその審査方法?と優勝者担当大臣すらその経緯を知らないと言う。それもどうも一人の有名建築家の独壇場で決められたらしく、しかも1000億円以上もの巨額予算も守られることなく国家プロジェクトとして進行していることに今の政権は時間がないので…と言う理由しか言えない有様なのです。これは体育祭を間近に控えた中高の生徒会の議論のようなもので(生徒会に叱られそうですが)、生徒会長はまるで指導の先生?がなにか意見を言ってくれるのを待っているようなもので、こんな有様であらゆる重要法案が進められているのか?と全国民の失笑を浴びる証拠となるのです。

当の国民も、特に都税を払う都民はあの最後に残された憩いの重要な庭にあんな物をつくってしまうことについて誰も反対をしていないのです。

私たち匠も、同朋と思っていた狭い長屋の設計で世に名を馳せた、設計仲間の一人の顛末であることの重大性を、もっと真摯に経緯を知って意見を述べる必要があると思うのです。テントでも5,6万人は入る巨大なサーカス小屋はできるのですこのくらいのことを言って。1000億以下で、3年以内でやりましょう!と言える東西の落札業社の魂はどこに行ったのでしょう?いずれにしろこのまま受ければ世界の笑いものになることを彼らが知っているはずですから。

建築家と匠の実力と使命とはいったい、いかあるべきか?今あちこちから問われているのです。

何よりもこの事態は小さな一つの施設のことではなく国家戦略の大きな誤算として世界に知れ渡ることが、すでにオリンピックレガシーどころか、世界に舐められ、笑われる大きな国益の負を抱えることになりかねないのです。

2 国立競技場は?

狭い国土、新国立競技場の今後の進展とその未来?

新国立競技場案は、台風列島直撃の最中、急きょ白紙撤回となりました。あまりにも唐突でびっくりしましたが、なるほど歴史は繰り返されるのか?1964年の東京オリンピックを直前に、安保反対運動が起こり、1960年の自民党単独強行採決を機に国民の反発を招きついにはデモ隊の国会乱入闘争にまで発展。犠牲者まで出して時の岸首相が退陣したことが思い出されます。奇しくも、今回の安保関連法案強行採決もオリンピック開催4、5年ほど前で、しかも現首相がその孫に当たると言う…。

政治もまたその歴史も疎い筆者までもがこの事実の因果が気になるところでの今回の突然の新競技場白紙撤回です。

経済的でしかも成熟した日本らしい新しい時代に向けての瀟洒な競技場づくりの再検討は好ましいのですが、なんとなくこのことが、福島、辺野古や社会保障など問題山積の政局の人身御供のような感もして、いったい本気なのか?真剣に競技場の提案で日本の未来と世界への発信を考えているか、が見えてこないのは筆者だけなのでしょうか?ともかくあの神宮外苑のわずかなスペースの中で8万人収容のしかも広大なフィールドを持った全天候型の競技場が果たして必要なのか?最近の土砂降り雨や突風、冬には思わぬドカ雪に耐える天蓋はどうしても土木的な構造のドーム型となり目障りな建物となるのです。前回の設計競技の際も応募46案の多くが構造的に成り立つものが少なく、しかも寄り付きが悪くアプローチに苦労をしていたことがうかがえます。建物だけではなく新たなアクセス手段などの総合計画が重要となるのです。

とは言え2020年夏の開催まで後5年、設計と装備ランニングテストまで考えると施工期間は3年ほどとなります。施工工程を考えた緻密な設計と周辺の環境整備計画で建物関連500億以内、そして周辺の環境整備とアクセスと駐車場整備で500億以内のオペレーションズ計画が必要で、それこそが国民も世界も納得する新しい時代のレガシーと言えるのではないのでしょうか?

この台風直撃の最中、いったい京都の祇園祭はどう対処するのだろうか?戦後風雨で一度たりとも中止したことがないと言う実績は果たしていかなるものか?好奇心が募りわざわざ行って驚いたのです。なんと多くの山はほとんど丸裸で、鉾は強風に備え四方のビルから友綱で括り付け最小の装束にして対処し(写真:宵山長刀鉾)、さらに巡行当日は上手に雨よけを施しながらも大雨の中しっかりと神事を全うし京都人の意地さえ感じたものです。

宵山長刀鉾
写真 四方のビルから友綱で括り付けられた長刀鉾(撮影:天野彰)

なによりも印象的だったのは観客側で、提燈が外された宵山の寂しさと、桟敷でのんびり観ることなどとてもできようがない中、粛々と予定通りに巡行する行列とがまるで次元を超えた存在のようであり一種の異様ささえ感じ、伝統の奥の深さを感じたことです。

土砂降りの中を粛々と巡行する鉾たち
写真 土砂降りの中粛々としかも平生とした顔で巡行する鉾(撮影:天野彰)

3 合掌造りの思想

狭い国土、一緒に住めば合理的?合掌造りに学ぶ

新国立競技場白紙撤回は現政局のタイミングとしては良さそうな決断であったように思えますが、本質的なオリンピック関連施設やその受け入れ態勢、国の選手強化支援を含め、大人の日本の成熟社会での2度目の国家プロジェクトとしてのおもてなしレガシーとまでとなると、そのコンセプト自体がまったく見受けられないのです。私たち国土全体のしかも首都で行われる巨大イベントに先駆けていったい何をレガシーとはなにか前回の設計案競技会を見てもオリンピック開催権獲得のためのPR感だけが強く、太陽光発電や環境整備などが後付けのイメージとしての漫画で、それをそのまま実施設計へと進めた発注者の責任と姿勢のレベルが問われることと、何よりもそれを受けてそのまま設計や積算してそれが国家首脳に簡単にキャンセルされたこと自体が情けなくも現実的ではないのです。

そのことに少しでも関係した人物や企業名、さらに第三者委員会のメンバー全員の名前を国民に広く公表し、まさしく更迭どころか費用の弁済責任が問われるべき事態なのです。これが現実の設計や施工業界の厳しさで、もしその名誉を回復したいのなら無償でも一からやり直すべきなのです。これが本当の白紙撤回の首相の発言の重さだと思うのです。

こんな予算に見合わない設計などキャンセルだ!あるいは嫌いなカタチだ!などと突然オーナーに言われるなど、まさしくプロとして大変不名誉なことで、発注者も受けた者も第三者委員会なる委員のすべてが世界の笑いものとなっているのです。なぜこうなったか!こうすれば希望のカタチができる!と言う、大人の主張も意見もなく物価高と消費税のせい・こんな大きなものは初めてだから…」に至っては、現実のプロ社会ではあり得ないほど情けないことなのです。何よりも危惧されることは、この無責任な首脳や組織委員会に疑念や不信感を抱き、だれも協力者が現れることなく、またアスリートをはじめとする国民全体のオリンピックへの失望感が、今後のまさしく期限のない中でどう対処できるかで、開催場所や時期、さらにはパラリンピックとの同時共催(シンボルマークまで黒に変える差別感?)まで、を含めて、今までの発想を根本から変える必要が出て来たことです。

考えてみれば私たちは今まで環境問題エネルギーのためと、小さな国土でありながら都市の間近に、耐久年度も知らされないまま無数の原子力発電所をつくってしまったり、狭い都市の中で、所狭しと、危険な高層マンションや高速道路を無数につくり続けてきたのです。しかも区分所有などと言う無責任な所有権を与え、家を持つ意味、住む意味さえ根底から覆しているのです。10年もしないうちに価値は半減します!と言う、絶対的事実を誰も伝えようとしないのです。せめて「償却39年の建て替え費用として毎年購入価額の40分の1、すなわち4000万円なら毎年100万円、すなわち毎月10万円ほどは積み立てくださいと真摯に言うべきところなのです。

こんなことから新たに先行きを危惧する前に、過去の実績を真摯に見直してみるのです。人はやはり一緒に住むことが一番いいのです。いかなる厳しい環境の場所であろうとも人々は何百年も一緒に生きて来たのです。原点に戻ろうとは言いませんが、その良さを現代に生かし、その不備を補足改善すればいいのです。

写真 合掌造り内部構造なんと ジョイントは縄(筆者撮影)
写真:合掌造り内部構造なんと!ジョイントは縄(筆者撮影)

私が何十年も言い続けて来たフレームコロニーは、ご存じあの白川郷の合掌づくりの高強度で高レベルのメンテナンス力〈結:ゆいと言う〉(写真:著者)を参考にしたもので、A型の強靭な構造兼設備フレームに各ハウスメーカーが一定のアタッチメントで自由にハウスユニットをつくりそれをフレーム権にはめ込むと言うものです。同居なら左右、あるいは上下にフレーム権を手に入れ一緒に住み、転勤があればそのユニットを勤め先のフレームにそのまま移送すれば良いと言うものです。(イラストと模型)

イラストと写真:フレームコロニーイメージと模型 (筆者撮影)
イラストと写真:フレームコロニーイメージと模型 (筆者撮影)

フレーム自体は常にメンテナンスが可能で、何100年と持ちこたえ、地方のフレームに住めば権利差額は人に譲ったり貸したりして、老後も生きやすいと言うものです。東京では山手線の上をすべてこのフレームコロニーにすれば全線一周に、ほぼ東京の全世帯が住め、駅は常に下にあり、道路もその地下に本当の山の手道路ができるのです。各戸は木造や既成のユニットなど好みの自由なものになり各戸には一戸建て同様すべてに自然の風が通り、庭ユニットも持てるのです。もちろん車と同じ中古物件の市場もあり、さらに“持ち家”の自由性が広がるのです。

4 狭い国土 観測史上初の灼熱の夏に思うわが国の家のカタチ?

この観測史上初の列島灼熱地獄の最中、暦の上では立秋とは?!

わが国の国民性そして気候に合わせた集合住宅の日本のカタチではないかと、改めて実感するものです。家のつくりようは夏を旨とすべしの通り、冬の寒さには耐えられても暑さ、そして湿度には耐えられません。今年はまさしくその「死ぬほど」の湿気と暑さです。このエアコンの発達した時代をしても暑苦しかったのです。しかし同じ暑い都心でも庭やビルの屋上に出てみると、わずかに風があり涼しさを感じられるはずです。特に日蔭は涼しさが増すのです。あの暑い京都の町家の中庭すなわち植栽の涼しさなのです。

 なぜ四方を囲われた中庭で風が通るのか?流石に平面からは解析しにくいのですが、なんとこれを立体的、かつ自然の原理に沿った日本らしい、いやもっと言えば京都らしい粋な知恵は今の日本の都市型住居「町家」を生み出した原点なのです。

ではなぜ四方を囲まれた中庭に風が通るのでしょう?しかも中庭に向かって各部屋の風が流れ込むのでしょう?その不思議な現象の仕組みは立体的な構造と太陽にあったのです。

イラスト:町家の風通しの原理
イラスト 京都町家の中庭の断面図「風通しの原理」(天野彰画)

イラストの断面のように太陽光で屋根が熱せられると上昇気流が発生します。するとそれに吸い上られるように中庭の空気が上昇し、中庭の気圧が負圧となり四方の室内の空気を呼ぶのです。これが全方向通風です。まさしく家全体が自然の換気扇となっているのです。私はこの原理を一戸建てに採用し、四方をコンクリートやガラスブロックで強靭な外壁で囲んでその中に無垢の木造の家を建てる中庭式住居なのです。

セルフディフェンスの家
左 中庭のセルフディフェンス(天野彰画) 右 セルフディフェンスの家 Y様邸(天野彰撮影)

健康に良い裸の木造の家ですが、火災にも台風にも津波にも対処しようと言うセルフディフェンスの家なのです。ビル風や路地になぜ風が通るのか?もっと言えば風はどうして吹くのか?となるのですが、答えは同様で、先の気圧の問題で、日陰あるいは陽だまりの温度差が風をつくり、大気では寒暖の差がある空気が接することによって雲が発生し風が生ずるのです。熱い地表に冷たい風が当たれば竜巻となり、海上では台風にもなるのです。

ビルの谷間では広いところから狭い路地では鞴(ふいご)のようになりやはり負圧となって風の道ができるのです。日中屋上が熱せられ、その余熱で上昇気流も発生するのです。

こうして集合住宅でも、フレームコロニーのように構造と設備のパイプとそのメンテナンスが容易なことと、その間に住ユニットを載せることにより各戸が四方床と屋根の全面が外気に接し、一戸建てと同じ空間となるのです。各戸の屋根に陽が当たり町家同様上昇気流が生じ、しかも合掌づくりのような立体的な三角で構成されたユニット群には風が生まれるのです。各戸の風を呼び、しかも独立しているため一戸建てのように風が八方から入りしかも各戸のプライバシーも高くなるのです。各ユニットに張り巡らされた空中路地は風通しの良い住人関係の場となり新たなコミュニティ(結=ゆい:前回)が生まれるのです。

フレームコロニー(天野彰)
フレームコロニー 天野彰画)

簡単予約!不動産・建築業界経験20年以上の専門家に相談できる!

関連記事

建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

CATEGORIES

絶対に後悔・失敗しないための家づくりコンシェルジュ

2024年人気住宅会社ランキング

THEME RANKING

PHOTO GALLERY