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狭い国土でどう住む?(1)
狭い国土でどう住む?(1)
―狭い土地、いったい国立競技場はどうなるか?―
私は狭い土地の設計が好きだ。すでに50余年の長きに渡って設計し続けているのです。3万坪ほどのしょうゆ工場の設計依頼を受けても、狭い谷間や山をそのまま利用し環境を保全して最小限の予算で最大の生産をあげる設計をするのです。
<写真*山と谷を利用したしょうゆ工場(筆者設計)>
なぜならわが国はもともと狭い国土で地価が高く家も狭い。建築家たちは狭いながらもやりがいのある家を建て、その家の周辺を含めて家を丸ごと高密度に高機能の設計をし、完成してからもその建て主や家族の笑顔が見られるからです。
戦後復興間のない1964年の東京オリンピックではあの短期間に首都高速道路(今河川を埋め立て都市の景観を失った大きな負の遺産も残るが…)、新幹線、東京タワーのテレビ放送網を含め壮大なレガシーを残し、その後の高度経済成長を支えた。
言わば名棟梁と言われる匠の技は多岐にわたり高度な技術文化を支え、私たちにはまい進してきた建築家の遺伝子があるのです。
しかし今回のその成長を遂げ洗練された日本の威信をかける第二の東京オリンピックのメーンスタジアムの新国立競技場のありさまはいったいどうしたと言うのでしょう?
国民の誰もが知らない間に応募要項が発せられ審査委員が決まり、初めて聞くコンペテターとその審査方法?と優勝者?担当大臣すらその経緯を知らないと言う。それもどうも一人の有名建築家の独壇場で決められたらしく、しかも1000億円以上もの巨額予算も守られることなく国家プロジェクトとして進行していることに今の政権は「時間がないので…」と言う理由しか言えない有様なのです。これは体育祭を間近に控えた中高の生徒会の議論のようなもので(生徒会に叱られそうですが…)、生徒会長はまるで指導の先生?がなにか意見を言ってくれるのを待っているようなもので、こんな有様であらゆる重要法案が進められているのか?と全国民の失笑を浴びる証拠となるのです。
当の国民も、特に都税を払う都民はあの最後に残された憩いの重要な庭に“あんな物”をつくってしまうことについて誰も反対をしていないのです。
私たち匠も、“同朋”と思っていた狭い長屋の設計で世に名を馳せた、設計仲間の一人の顛末であることの重大性を、もっと真摯に経緯を知って意見を述べる必要があると思うのです。
「テントでも5,6万人は入る巨大な“サーカス小屋”はできるのです」このくらいのことを言って。1000億以下で、3年以内でやりましょう!と言える東西の落札業社の魂はどこに行ったのでしょう?いずれにしろこのまま受ければ世界の笑いものになることを彼らが知っているはずですから…。
「建築家と匠の実力と使命とはいったい、いかあるべきか?」
今あちこちから問われているのです。
何よりもこの事態は小さな一つの施設のことではなく国家戦略の大きな誤算として世界に知れ渡ることが、すでにオリンピックレガシーどころか、世界に舐められ、笑われる大きな国益の負を抱えることになりかねないのです。
話はちょっとそれたようですが…、狭い家の実際の設計は次回から。
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