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建築家 天野 彰 親と住む子と住む 母を喪って超長寿時代を実感!

1 母を喪って超長寿時代を実感!

超長寿時代の「いい家」を考えるとき、今の住まいの良さとは一体何か、この先老いて何が住まいに必要であるかを考えさせられる時代となりました。現代の家族の間取りやその建て方や構造、設備とはと考えると、若くて元気な今は何も思い浮かばないことですが、大きな違いは寿命がはるかに長くなったことです。

現実の長寿社会を自分自身のこととして想像してみる

口先だけで「少子高齢化」だの「超高齢社会」などと言われますが、現実の長寿社会を自分自身のこととして想像してみるとあらゆる問題が浮かんでくるのです。まずは長く暮らすための経済ですが、なによりも身の周りの一つ一つがまったく今までとは変わってくることです。

あの105歳までご長寿であった医師日野原重明氏にお逢いする栄誉があり、そのお元気なお姿に「ご長寿でお元気な秘訣は」などの失礼な愚門に、即座に返して頂いた言葉が「いやそれなりですよ」と、そして「お声を掛けて頂くことと帰る処があるからですよ」ときっぱり。その時の、「帰る処がある」の言葉にとても新鮮で感動し、今も心に残っているのです。“それなり”は日々の身の周りのことで、“帰る処”はまさしく「家」です。老いて、当たり前だったことのすべてがそうではなくなり、何をするのもふらついたり躓いたり転んだりもするのです。食事はもとよりトイレや寝ること自体も年を重ねるごとにじわじわと変わってくると言うのです。

「同居」などと言う選択肢など、夢のかけらもない

果たして老後に強い家はどうつくるか?戦中戦後を生き抜き、戦後のわが国の経済や社会を支えた「団塊」と呼ばれる人たちが今、超高齢生活の真っただ中にいるのです。しかもこの先の見えないコロナ禍となっているのです。まさに悠々自適の老後を迎えようとしていた矢先の災禍となり、年金はもとより介護やデイケアもままならない厳しい現実に直面してもいるのです。

何よりの頼みは息子さんや医師たちと携帯電話の「命綱」で繋がっていることですが、それもこの災禍でどこまで頼りになるか、ご高齢だけに毎日がとても不安だと言うのです。若い今、そんな予測と覚悟で老いの自立の家を建て、リフォームをする人は果たしてどれほど居られるか、まして子どもさんと「同居」などと言う選択肢など、夢のかけらも考えていません。しかしかつての“いい家”の体験をされた親御さんはこうした現実的な問題を多用に、いや柔軟に解決もしていたのです。

写真:息子さんの家の奥に70歳で家を建てたTさん(設計・写真:天野彰)
<写真:息子さんの家の奥に70歳で家を建てたTさん(設計・写真:天野彰)>

写真:母の家の隣に娘夫婦が家を建てるTA様邸(設計アトリエ4A)
<写真:母の家の隣に娘夫婦が家を建てるTA様邸(設計アトリエ4A)>

その例として、写真のように息子さん家族の住む家の隣に土地を購入し70歳になって家を建てたTさんや、母の家の隣に娘さん夫婦が家を建てられた例もあるのです。

親の居場所?

私自身、17年前に母を喪って改めて思ったことは母の居場所でした。現実の長寿社会、そして親・兄弟そして家族のあり方を考えさせられたのです。豊かになった今日の生活において長寿は確かに長い老後の暮らしで多くの楽しみや学習もできて幸せそうなのですが、いったん病に伏せたり、つれ合いを亡くしたりすると長い老いの生活はかえって不自由なものとなってしまうのです。
このコロナ禍でも介護や医療や制度なども危うさも見えて来たのです。一方でその子たちはその長寿政策のためにさらに負担が増して、わが子の養育ばかりか自身の生活さえ苦しく忙しく働かなければなりません。

こうして親の最期に至って思うような介護もできず、そして逢うことすらままならないなどの寂しい思いをすることになるのです。親は親で不自由なわが身の置き場に悩むのです。幸い私の場合、妹夫婦が近くに居て世話になり、病院でも看護され安堵しましたが、住める家、それが“帰る家”となるのか?に悩んだものです。子の方も果たして親が住みやすい所となるのか?わが生きる所が近いか、同じ屋根の下ならなお安心だと悩むことになるのです。

「別々に住む」「同居する」その双方の在宅支援やデイケアなど社会的支援の「仕組み」も重要だと思うのです。徐々に政策も充実しては来ていますが、高齢化のスピードが速くて追いつけないのも事実です。

本来、老人の世話をするのではなく “どう互いが生きて行くか”を支援することこそ重要と思うのです。改めて老いをどう生きるか老若双方にとっても“いい家”とはいったい何かを探して行きたいと思うのです。

2 新同居の家のカタチとは

「二世帯住宅」は住み良かったか?

確かに「二世帯住宅」は各家族が安心で自由な生活で親子夫婦のプライバシーも確保し、子育てにも干渉されない、と言う合理性が優先し本来の親子夫婦のそれぞれの想いや孫との関係をもが冷たいものとなったと思う家族も多かったのです。親の土地を活かして子の側のローンで家を建てる。資金はもとより工事費も割安となり光熱費や租税の優遇措置なども後押し、モデルルームなどでは暗いイメージは取り払われ、親子それぞれがキッチンを中心とした魅力的なリビングやダイニングにも目を奪われたものでした。

しかし実際に住んでみると本来の同居とは程遠いもので、親子二世帯が住んで居れば果たしてそれは親子孫のための“同居”なのか?など新たな疑問も生まれたのです。「二世帯住宅」は同じ屋根の下に親子2組の家族が住むのですが、家族は親子孫の同居とは言ってもマンションと同じ、同じ屋根の下の別の家に親子家族が別々に暮らすものとなってしまったのかも知れません。

親子二世帯“共働き”?

結婚して初めて一緒に住むことになる「同居生活」は嫁や婿にとってはまったく“別の家族”と住むことであり、生い立ちも家族の雰囲気も根本的に違い意見の相違もあり、我慢のできない違和感や事態もあるのです。双方2組の家族が別々に住むとうまく行けそうな「二世帯住宅」に目が行くのも不思議ではなかったのです。

しかし今あらためて本来の同居を考えてみたいのは「活動的かつ積極的な同居生活」です。バリバリ共働きで稼ぐ子夫婦と、それをサポートする親夫婦の“共働生活”はまさしく“親子二世代の共働き一家”の同居のことです。共働きのためなどと言うと、どことなくさもしい感もするのですが、同居家族の一人ひとりに役割分担があると思うと、家族のそれぞれが溌剌としてなかなかどうして、前向きで楽しく温かい同居生活となるはずです。

“新同居”とは「親子“共働”住宅」?

このことを今さら“新同居”などと言うのもおかしな話ですが、それこそあの白川郷にある養蚕のための合掌造りの大家族の住まいように「父ちゃん、母ちゃんそして兄ちゃん」の“3ちゃん農業”で、漁業、商家だったのです。こうして一家に住む家族全員が一緒に働いて稼ぐ「生産的な家」だったのです。しかもこうした家の中には “家長”が居て、封建的ではあったにせよ、営々と何代にも渡って「家」と広くは「国」も続いて来た歴史もあるのです。かつて嫁が邪険にされたような「嫁姑問題」などもあったのですが、実はそれも家長の補佐役となるべく修練の場でもありその嫁がまた営々と家を継いで来たのも事実なのです。

私が言う“新同居”とは、ありうる親子夫婦の本音の部分を認めながらも2組の夫婦が一緒になって、「核家族」となった今までの社会と、現実の暮らしを改めて考えて、工夫し生産的かつ積極的に生きることこそが、今の超少子高齢化社会に対する家族総出の「親子“共働”住宅」だと思うのです。

イラスト:プライバシーを守り「親子“共働”住宅」プラン例(画:天野彰)
<イラスト:プライバシーを守り「親子“共働”住宅」プラン例(画:天野彰)>

イラストのプランのように、互いの夫婦のプライバシーを守りながらの互いのチームワークを発揮すれば、“新同居”と呼ぶにふさわしい新しい同居スタイルと言えるのです。さらに発展させて二世帯「同居“含み”住宅」とも言えるのです。

写真:二世帯『同居“含み” 住宅』例 佐賀O様邸
<写真:二世帯『同居“含み” 住宅』例 佐賀O様邸(写真:天野彰)>

例え同居のきっかけが、新築や建て替えのための土地代や建築費のためや、子育てや介護のサポートだったとしても、この親子が「共働」の意識と姿勢で前向きで、生産的かつ親、子、孫の修練の場としたいものです。

拙著紹介
「新しい二世帯『同居』住宅のつくり方」(講談社+α新書)
「新しい二世帯『同居』住宅のつくり方」(講談社+α新書)

「親と住む子と住む」(蔵書房)
「親と住む子と住む」(蔵書房)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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