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建築家 天野 彰 老楽しむ家 暮らしの必要素浴室

暮らしの必要素浴室

最近の若い人は簡単に浴びられるシャワー党の人が多いようですが、老いて、やはりゆったり湯船に浸かってと言う人も多いのです。確かに湿気の多い日本ではお風呂が大好きな人が多いのです。諸外国の老人施設や住宅さらにはホテルを見ても、彼らと決定的に違うことは、お年寄りをお湯に浸けて入浴させると言うことはありません。これがシャワーで済ませられるなどどれほど楽かしれません。

逆にその為に入浴に手間がかかり過ぎ、職員も忙しく、結局普段の要介護者の生活が“車いす漬け”となって、ついには寝たきりのおむつ生活になってしまうとも言われるほどです。こうした老人施設の為に“機械浴”なる設備もあります。

お年寄りを寝たままその“機械”に入れて、蓋をするとその中にお湯が噴流され気持ちよく洗われると言うものです。まるで人間洗濯機のようなものですが、中には横からその中に手を入れて隅々を洗うものもあるほどです。しかもそうした装置の価額は数百万円もし、時間もかかり水道料もバカにならないのです。

わが国独自のユニットバス開発

これは介護施設だけではありません。住宅でもユニットバスなるものが普及し、工場生産化されあらゆる装置が付いた浴室もあります。これもシャワー党の外国人は首を傾げるものです。特に最近はホテルなどプラスチックのユニットでありながら、内側がタイル張りや石張りの豪華なものもあり、私たち設計者も現場で浴室のデザインをすることは少なってきているのです。しかしリフォームなどでは、狭い現況の浴室に出窓を付けて壁を押し出して、腕を預けられるようにし、左右のスリットや出窓上部のトップライトから光と風も取り入れ視覚的にもゆったり広く、開放的にしたりするのです。湯船など浴室底部だけのハーフ・ユニットもあり、漏水も防げます。

イラスト:狭い浴室肘の当たる壁を出窓で広く(画:天野彰
<イラスト:狭い浴室肘の当たる壁を出窓で広く(画:天野彰>

自在天井走行の ホームナーシングユニット!?

在宅介護の推奨の時代、老いてわが家では自力でお風呂に入れられるか?さらにはトイレに行けるのか?と言う課題もあります。お年寄りを吊り上げ、回転させ湯船に浸ける簡易な装置も貸し出されていますが、中には不安定なものもあり、老いた老人同士では事故も起こりかねません。そこまでしてお湯に浸かりたいか?とも思うのですが、かく言う私自身も今日のような蒸し暑い梅雨時や、寒い冬など湯に浸かれなくなったらどうしようかと思うのです。

さらにはトイレだけは誰の助けも借りずに自力で行きたい!と言った思いで、狭い床の走行の難しい車椅子からお年寄りを天井から吊り上げ自在に走行するホームナーシングユニットなる、トランスファーでわが身をサポート、トイレ、浴槽と部屋の中を自由に動けるシステムの開発さえあります。

イラスト:いよいよとなっても自分で入りたい(画:天野彰
<イラスト:いよいよとなっても自分で入りたい(画:天野彰>

写真:ホームナーシング歩行テスト(設計アトリエ4A)
<写真:ホームナーシング歩行テスト(設計アトリエ4A)>

そのままトイレに行き、さらには浴槽までこんなプライバシーを保てる装置はありません。実際の家づくりやリフォーム現場では、既存にあるレールやトランスファーやリフトを駆使して実際のお年寄りの家に取り付けたこともあります。

人は老いても、なお生きて行かなければなりません。そこにはお風呂が必須です。なんと老いてみるとお風呂が一番安らぐとも言われます。こんな毎日こそ、頭からザバッとお湯をかぶり、汗やウイルスを洗い流し、さらには邪念をも一気に流すのです。

シャワーで身体をくねくねして洗うのではなく、神経までもいたわることです。しばしお湯に浸かって、わが生まれる前の母の羊水での体感を想像するのです。

暖かいお湯を意味するbath【バス】は温泉発祥の地イギリスからの地名で、そして人が生まれるbirth【バース】とはスペルも語源もまったく違うものなのですが、筆者には暖かい羊水のような湯に浸かることで、人はまさに生まれ変わるのではないかとさえ思えるのです。

そこで改めて、バスは住まいの中で最高のスペースにして、風通しの良い場所を選び、さらに少しでも広く贅沢な空間にしたいものです。できる限り最期まで自力でお湯に浸かれるように縁を一部広くし、手すりを自分に合わせ、腰掛けて入るなどの工夫をするのです。

写真:総ヒノキの風呂N邸(設計アトリエ4A)
<写真:総ヒノキの風呂N邸(設計アトリエ4A)>

写真:小中庭に面した浴室H邸那須(設計アトリエ4A)
<写真:小中庭に面した浴室H邸那須(設計アトリエ4A)>

イラスト:中庭に自由で広いバスルーム(画:天野彰
<イラスト:中庭に自由で広いバスルーム(画:天野彰>

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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