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建築家 天野 彰 収納は「収めて」「納める」もの?

1 収納は「収めて」「納める」もの?

収納は「収出」か「出納」の考え方?

「収納」とは文字通り「収めて」「納める」ものです。だからと言って 収納は多くあれば良いと言うものではありません。いくら物を多く「納めて」もただの「物入れ」か「倉庫」です。当たり前のことですが「収納」はしまいやすいところで「収め」、いったん「納め」すなわち保管し、そしてまた欲しいときに出せる収納すなわち、「収出」か「出納」の考えが望ましいのです。

「収納」は入れることより出すことが大切です。使いやすい収納は、家族の生活行動に合わせた収納がうまく配置されているかどうかが重要になってくるのです。いくら大きな納戸や倉庫をつくっても片付かず、無理して屋根裏や床下に収納をつくっても今度は入れたら2度と出せなくなるのです。

押入れはただの「納」、生活についてくる「納」こそ「収納」

アパートなどの押入れこそが良い例で、物を深く押し込むだけでは、いくら床から天井までの大容量としても高いところや奥はいったん入れたらどこに入れたか分からず、押し込む「納」となり部屋は物に溢れてしまいます。浅くて小さくてもアパートなどの押入れこそが良い例で、物を深く押し込むだけでは、いくら床から天井までの大容量としても高いところや奥はいったん入れたらどこに入れたか分からず、押し込む「納」となり部屋は物に溢れてしまいます。浅くて小さくても欲しいときにすぐに物が出て来る収納が大切です。住む人の生活と物がいかに一致するか、「生活の間取り」と「収納の間取り」がうまくシンクロするかどうかが1番大切になってくるのです。

そのためにはまず、「出す」ことを前提に収納を考え、どこに収納をつくるかよりも、どこで何をするかを考えましょう。そして、その上でそれらを収納する場所を探していくことで分かりやすいのはダイニングキッチンなどで、食器や食品の棚、造り付けの壁面収納です。これらの収納に収まりきれない物は、その使用頻度に合わせて隣の和室や納戸などに順番に収納することをおすすめします。

「収納」は住む人の生活をも救う?

玄関の収納も同じです。ふだん使う靴は下駄箱に納め、よそ行きの靴や和服や礼装の履物などは押入れやクロゼットの天袋にでもなどに収納します。この要領で各生活と 各部屋において必要なものとストックをまとめて収納し、寝室などのウオークインクロゼットも小スペースながら立体的に物を納められ、中は扉も付けずパイプだけにすべての衣服を掛け一目瞭然にします。天気の良い日は窓や扉を開けて虫干しもできます。

写真:玄関の関所・大容量シューズクロゼット(天野彰)
<写真:玄関の関所・大容量シューズクロゼット(天野彰)>

家の中と外の物に溢れる玄関で重宝されるのがウオークイン・シューズクロゼットです。床から天井まで膨大な靴などを収納する棚とし、傘やコートはもとよりスーツケースから掃除機、ゴルフバックに、古新聞や雑誌など目に付く邪魔なものをすべて吸い込んでくれます。

写真:玄関からも家の中からもここを通る (天野彰)
<写真:玄関からも家の中からもここを通る(天野彰)>

このクロゼットのドアを開ければすべてが一目瞭然で、しかも住まいに侵入するすべての物をここでいったん止めてもくれる、物の“関所”となり家の中はもとより生活をも救ってくれるのです。

写真:苦手なカブトムシの幼虫も玄関でストップ(天野彰)
<写真:苦手なカブトムシの幼虫も玄関でストップ(天野彰)>

2 「収納のマトリックス」とは?

「収納」は住む人の性格、そしてその家の間取りに大きく左右されます。収納は人の頭のよさに例えられ「頭の中の引き出しが整理されている」などとも言われます。例え記憶力の良い人でも、知識がいくら多くても整理されていなければいざという時なんの役にも立ちません。筆者は物を覚えることはあまり得意ではありませんが、極力メモを取っておき、後に整理することを心がけています。

収納を「収出」にする?

冒頭でお話ししたように、収納は人の性格がいろいろあるように、住まいにも片付く家と片付かない家の性格があるようです。それは主にその家の収納の状態にあるのですが、さらに住む人の性格によってもその状況はかなり変わってきます。もちろん物を余り買い込まない人が一番良いのですが、出ている物をすぐに片付けてしまう人も困りもので、一瞬身のまわりはすっきりするものの、果たして使おうとするとなかなか出てこず、仕方なくまた買ってしまうなどということになってしまいます。

「収納」とは”収めて納める”ことで、「収」は収め「納」は奥に納めてしまうということになります。おうようで寛大な人のことを「懐が大きい」とか「懐が深い」などと言いますが、果たして収納も大きくて深ければよいのでしょうか?大きな納戸や奥の深い物置、奥行きの深い押し入れなど物の下敷や奥に隠れ結局“死蔵”されてしまいます。収納は入れることではなく、出すことすなわち「収出」が大事なのです。

引き出しは多いほどいい?収納上手は頭の中の整理がいい人!

では、いったいどうやって整理をするかですが、それこそ「時間」「空間」「人間」を考えること。そう、収納はまさに人の生活のT・P・Oにシンクロすること!引き出しにインデックスを張り、それを使う「時」と「場」の順、使う「人」のタイミングの順に並べ、日常のこと、季節ごと、そして特別なことの順に連想ゲームのように分かりやすくドラマのように整理し、連想でき、忘れないようにすることが大切なのです。

物はそのまま放置すれば、すぐに忘れてしまいます。だからと言って収納が多ければよいものでもありません。慌てて仕舞うとどこに入れたか忘れてどこに置いたかわからなくなってしまうでしょう。知識なども同じでなかなか忘れてしまったことを思い出せませんね。収納の引き出しと同じなのです。

物の「時間」「空間」「人間」収納は生活行動と同じ!

朝から夜、曜日、春夏秋冬、年中行事、まれな出来事の順に合わせるのです。そしてその時や場をイメージするといろいろな物がどこにあるかが連想できます。冒頭でお話ししたように、筆者は記憶力に自信ないため、人の顔をイメージしながらその時の場所などいろいろな事象を思い出し、情景を記憶します。お陰でいつもドラマがいっぱいで楽しくなりますが、それらをすべて覚えていては頭の収納能力が無駄になってしまいます。

そんな時はコンピューターやノート、あるいは手帳にその在りかを示しておきます。まさしく、出しやすい「記憶のマトリックス」です。と、まるで複雑な頭の中の整理術のように思えるのですが、なんてことはありません。住まいの収納に例えるとむしろ分かりやすく、下記にあるイラストのように示せるのです。

イラスト:住まいの収納のマトリックス(天野彰)
<イラスト:住まいの収納のマトリックス(天野彰)>

上記のように「収納」ならぬ「収出」のための“収納マトリックス”はどうつくるかですが、まずはその使用頻度の「時間」や季節ごとに近づけ遠ざけ、次にその場「空間」は日常の行動に合わせて収納をつくります。そして欲しいところに物があるようにすること、それは住む人自身からの距離が大切なのです。収納上手とは人の“頭が良い”と言うことになりそうですが、現実、日常の忙しい毎日の中でいちいち寄り分け収納など簡単に、ましてやそんな上手にできるはずもありません。なぜなら、すべてのものをすべて身のまわりに置けませんし、簡単に整理ができないからです。

3 生活のプランと収納のプラン?

プランの中の収納の配置

収納にとって大事なことは間取りや配置を考える時に生活の行為と動線の流れをつくり必要な道具と物を想定し配置計画を行なうことが肝心になってきます。それこそが“生活のマトリックス”であり、何よりも住まいの中の“物を少なくすること”が一番ですが、難しい場合は、季節や頻度、在庫の保存、稀のイベントや災害などの「非常時」までを考え収納すると、より生活しやすくなります。この生活と収納のマトリックスの図に沿って物の配置をして行くと案外簡単に整理することができます。

“物の関所”のシューズクローゼットと勝手口パントリー

では、物を物を少なくするにはどうしたらいいでしょう。それは、「関所」をつくり、買い物の帰りや、贈答品の多い季節など、玄関や勝手口に「一時預かり場」をつくり、家の中に物を入れないことです。ここに何があるかが一目瞭然となるオープンな棚にし、そこを通るたび整理しないといけないと感じることです。

写真:マンションリフォーム押入れをクロゼットにA邸(天野彰)
<写真:マンションリフォーム押入れをクロゼットにA邸(天野彰)>

写真:玄関なんでもクロゼット(天野彰)
<写真:玄関なんでもクロゼット(天野彰)>

玄関の下駄箱だけでは履物などでいっぱいになり、とても足りません。これでは、雨や雪の日のコートや長靴やブーツに傘、べビーカーやゴルフバッグ・スキーなどのレジャーやアウトドアの物までしまうことができません。そのため、大きな下駄箱「シューズクローゼット」が必要になってくるのです。玄関の土間と上がり鼻に平行して玄関からバイパスのように棚がある廊下です。こうすることで土間には濡れたものや手洗いもできる流しがあれば生活変容の時代には便利で清潔です。狭いところでも玄関に面した階段があれば、その下にシューズクローゼットを置くことも出来ます。

写真:玄関シューズクロゼットK邸(天野彰)
<写真:玄関シューズクロゼットK邸(天野彰)>

洗濯などの家事室兼用のパントリーを大きめのクローゼットにすると勝手口から侵入する物の「関所」となり台所がかなりすっきりします。

写真:台所のパントリー収納奥が勝手口S邸(天野彰)

戸棚を天井までの大きなガラス戸にすることで食材や洗剤などのストックや道具が常に一目瞭然になります。

食器などの飾り棚は展示場

リビングにはくつろぎや娯楽を含め、思い出のアルバム、来客セットなどの用品や道具、オーディオ機器や各種ソフト類の収納が必要です。また、来客がある「ハレ」の場面には“見せる収納”と“隠す収納”が必要で、ガラスケースのような飾り棚は展示用で実用の食器やストックなどは戸で目隠しすることをお勧めします。

写真:ダイニングの飾り棚下が目隠し(天野彰)
<写真:ダイニングの飾り棚下が目隠し(天野彰)>

水回りも、洗面所に下着タンスやタオル類のリネン庫。トイレにも予備のペーパー、サニタリーやタオルが 収納されていれば、「おーい、カミ」も「パンツ!」などと慌てることもなくなります。こうして自身の生活の場面、場面を想像することで生活にマッチした収納のプランができるのです。

4 危険な屋根裏もゴールデン収納に

どの家にもある「屋根裏収納」は天井に埋め込み式の折り畳み階段などで上り下りすることになるのですが、難点は梯子のように急で幅も狭いことです。若いころはなんとかしまい込むことができた物も、老いてからでは階段を下すことも難儀で事故も多く、二度と出すこともできなくなります。

しかし屋根裏などのデッドスペースを広い収納スペースにしたいものですが3階建てがダメで容積率や建蔽率が小さい住居地域では高さ制限や北側斜線などもさらに厳しくなります。

厳しい建築基準法はわが家の安全と環境を守る

法の構成は都市全体や近隣に対する地域ごとの高さや容積制限などの外形と防火基準などの「団体規定」と、人が住む上での安全と環境基準の「単体規定」の二つが主軸となっています。建築基準法は街と住む人を守り快適に暮らすための最低基準でもあるのです。

屋根裏収納を安全に這って行ける収納と物干し場に?

さてその屋根裏収納ですが、正式には「小屋裏収納」で、2階などの天井と屋根の間にある小屋組の中に収納をつくるものです。 天井の構造を補強して床を張り、そこに物を収納するのですが、この小屋裏も規定があります。屋根裏の天井までの高さが1メートル40センチ以下なら床面積に算定されないことから容積(総床面積の制限)の厳しいところでは、この貴重な空間を何とか確保しようとこの屋根裏の空間がつくられます。ロフトなどと称して子どもの遊びの空間にすることもありますが、基本的には人が居る部屋としては使えません。

階段の工夫で屋根裏も危険な床下も「ゴールデン収納」に?

収納は有ると嬉しいものですが、高いところや床下などは使いにくく危険です。筆者は手を伸ばして届く範囲の収納場所をTVのゴールデン・タイムならぬ「ゴールデン収納」と名付けました。

階段を延長して中3階位置に踊り場のような物干し場もできます。

イラスト:階段途中の踊り場上部を「物干し場」に(天野彰)
<イラスト:階段途中の踊り場上部を「物干し場」に天野彰)>

地域によってはこの階段が3階とみなされ面積の制限がかかることもあり協議が必要ですが、イラストのように2階の屋根裏空間を2階の床から屈(かが)んで楽に使う屋根裏収納が可能となります。こうすればクローゼットのように安全に歩いて(這って)行けるようになります。同じことが最高、高さ内であれば二階床下に中2階的な階をつくり、天井の高さを1.4メートル以下にしてそこに大きな収蔵庫などをつくる方法も考えられます。落ちる危険があり、使いにくい「床下収納」も基礎を高くし、高床にしてその床下にゆったりとした収蔵庫を設けます。地下室のようですが、人が入れる床下収納になります。この下り口も人が落ち込まないように階段の続きにするか、押し入れの中などに階段を設けるのです。

イラスト:屋根裏の高さまで階段を延長し小屋裏クローゼットに(天野彰)

5 わが身の気楽なポケット収納

キッチンをはじめとした「水回り」も然り、昨今の住まいにまつわる重要なことは住まいやすいプランや構造、この先の経年変化などよりもこうした設備やインテリアに係わることの方が多そうです。

活き方と嗜好に合った手軽な「バックパック収納」

ここでちょっと足を止めてそこに住むこと、住む人、そしてその家族の生き方、生きざまを改めて考えてみようではありませんか。住まいで忘れてならないのは裸の自分と本音にフィットしているかどうかではないでしょうか。筆者自身の住まいの想いも「家は裸の自分を包む衣服」のようなもので、温かくて、それでいて蒸れずに通気良く、なにより柔らかく持ちがよいことであればいいと思うものです。そして収納はまさしくその最小限の必要な物の為のポケットが付いていれば良いと言った感じです。

これは学生時代にバックパック1つに家財道具を詰め込み欧州やアジアの各地を放浪したころのあの感覚で、野宿も辞さずリュック1つでまるで世界をわが家のように過ごした体験からかも知れません。

写真:バックパック一つローマテルミニにて1964(天野彰)
<写真:バックパック一つローマテルミニにて1964(天野彰)>

物一つない“殻だけの家”

理想の住まいはまるで“殻だけ”のようにスッキリ何も物がないことが理想のようです。住宅雑誌のグラビアやカタログのように何もない写真がスッキリして綺麗ですが、何とも冷たく窮屈で“嘘くさい写真”となります。

現実の暮らしを思うと必要な物や道具をいちいち持ち歩くのでしょうか?結局のところ住まいのあちこちに必要な物が無造作に置かれ煩雑となります。しかしこれこそが現実の暮らしで、息吹ある温もりを感じられる生の姿なのです。物が置かれても目立たない空間をと考えて設計することになります。壁の中に収納を埋め込みその中に物を隠し、透明で目立たない色彩や素材で空間をつくるのです。

写真:扉を開けるとすべて本棚(天野彰)
<写真:扉を開けるとすべて本棚(天野彰)>

物だらけを溶け込む “カオスの家”

反対に物が無造作に置かれていても空間に融け込むデザインを考えます。本棚のように汚れても煩雑に見えない共通性を持たせ、規律のある「統一性」を持たせる。背景の一部に個性的なアンテーク家具を置くなどして煩雑な物を目立たせなくする。恥ずかしながらわが家がそれで、食卓兼作業場兼書斎テーブルなどは一枚のジャンボテーブルを置き、その上に書類などを山と積み、まさしくカオスのようなポケット空間。そこにわが身が自然に溶け込んで暮らしていると自負しているのですが、やはりごみ屋敷か?

写真:わが家のカオス:食卓?書斎?ジャンボテーブル(天野彰)
<写真:わが家のカオス:食卓?書斎?ジャンボテーブル(天野彰)>

神経質にならずもっと気楽に自由に住める家にしたいものと言いたいのです。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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