住宅関連記事・ノウハウ
国の新築支援は減少。これからは税制・金融面での補助に注目!
物価高騰と金利上昇をうけ、住宅価格は上昇を続けています。
結果として、「持ち家を建てたくても建てられない!」、という声は日増しに高まっています。
ただ、2024年については、国からの支援策は明らかにリフォームにシフトしており、前年度と比較して新築を対象とした支援策が限られているのが現状です。
新築住宅を対象に今年度実施される国の新築支援事業は【子育てエコホーム事業】・【ZEH支援事業】・【LCCM住宅整備推進事業】となります。それぞれ一定の性能を持つ新築住宅が対象。
そこで今回は2024年以降、注目すべき税制や金融制度、保険料の値上がりについてもまとめていきます。
2024年に着目すべき税制・金融面での優遇策
王道の住宅ローン減税では2024年度は18歳未満の子供がいる『子育て世代』・夫婦いずれかが40歳未満の『若者夫婦世帯』を優遇。
2024年度中に入居する場合、借入限度額が2022年度・2023年度と同等の額となり、2025年度についても同様の方向性で検討されます。
こちらもご存じの通り高性能な住宅にのみ適用されます。
リフォーム減税(所得税)も、2年間にわたり同等の措置を延長。
さらに2024年度については『子育て世代』・『若者夫婦世帯』における『子育てに対応した住宅のリフォーム』について、工事費相当額の10%が控除されます。
着目すべきは、フラット35の優遇策の『フラット35子育てプラス』。
『子育て世代』・『若者夫婦世帯』に対し、子どもの人数に応じて当初5年間の金利を引き下げ。多子世帯ほど引き下げ幅が大きくなり、条件次第では10年目以降も金利が優遇されます。
*フラット35 子育てプラス
これは、長期金利の上昇に伴うメガバンクをはじめとする6月からの固定期間型住宅ローン金利上昇、ならびに今後ますます不透明になる変動金利の金利上昇の可能性を考えると、総支払額を減らせる可能性が高い制度です。
自治体からの補助事業にも注目!
住宅の性能水準に応じた金額の助成のほか、太陽光発電や蓄電池の設置に対する加算措置など、自治体により多種多様な条件での補助が魅力的です。
それぞれ補助・助成額も大きく、通年申請が可能。かつ、国の補助事業とも併用可能な制度も多いことから、家づくりの計画段階から要チェックです。
建てる側(つくり手)の立場でみると、事前に事業者登録が必要な制度が多いことから、なかには対応できないつくり手もいるかもしれません。ただ、補助金・助成金を含めた総合的な提案・情報提供が得意なつくり手も多いので、戻った補助金で住宅性能のアップグレードや外構工事の足しにするなど、さまざまな提案が期待できます。
自分たちの計画で活用できる補助金・助成金という【宝の山】をしっかり計画当初から確認しておくことが今後は重要です。
秋から火災保険料が大幅値上がり!
2024年10月から、火災保険料が過去最大の値上げになります。さらに長期の契約も5年に短縮されていることから、火災保険料の長期割引が縮小。1年あたりの火災保険料は実質大幅な値上がりになります。
火災保険の長期契約は、2022年9月までは最長10年でした。
ただ、制度が変わり2022年10月より最長5年となりました。5年超の契約が廃止された理由とは、以前と比べて自然災害が多く発生するようになり、損害保険会社各社のほうで長期の収支予測をすることが困難になったことからきています。
毎年更新する場合と長期契約の場合のメリット・デメリット
今後、各損害保険会社の想定以上に自然災害の被害が増えたら、受け取る保険料と支払う保険金のバランスが崩れてしまいます。そこで、5年超の新規契約を廃止することで保険料の改定を反映しやすくして、収支のバランスを取りやすくしたのです。
火災保険を毎年更新する場合と、保険期間が10年を超える長期契約にする場合のそれぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
1年契約 | ・補償内容を見直しやすい ・1回あたりの保険料支払い負担が軽い | ・毎年更新する手間がある ・総支払額が多くなる(長期保険料払込の割引対象外) |
長期契約 | ・更新の手間が少ない ・年払いと同期間で比較した場合、総支払額が安くなる | ・補償内容見直しのきっかけが少ない ・1回あたりの保険料支払い負担が大きい(長期保険料払込の割引対象であっても、複数年分の保険料支払になるのでお支払いする保険料は年払の数倍程度が目安) |
火災保険料が過去最大の値上げとなる根拠
2024年10月更改の火災保険から、火災保険料の「目安」が過去最大となる13%の値上げになります。あわせて、2025年以降の更改分も火災保険料が値上げになる可能性は高いと想定されます。
火災保険料の値上げとなる根拠は、損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構が2023年10月に発表した『個人向け火災保険料の目安となる「参考純率」について全国平均で13%上げる』からきています。
損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構は2023年6月28日、個人向け火災保険料の目安となる「参考純率」を全国平均で13%上げると発表しました。
- 相次ぐ自然災害で保険金支払いが急増していること
- 資材価格上昇
- 人件費上昇による修理費高騰
上記の背景から、引き上げは直近6年間で4度目となり、引き上げ幅は過去最大となります。
水災についても昨今頻発する台風被害による保険金額の増大により、水災想定地域別に水災リスクを細かく設定。保険の対象となる建物の場所によっては、火災保険料が大幅な値上がりとなります。
地震保険も値上がりは避けられない?
地震保険については、耐震性の高い普及によって直近では値下げとなりました。
ただ、全国的に地震の発生頻度が増加傾向にあること、ならびに2011年の東日本大震災の影響から大幅な保険料引き上げが必要でしたが、急激な保険料引き上げではなく3段階の引き上げとしたため、2020年12月までは必要水準より低い保険料になりました。
そのため、依然として保険料不足が続いているのを解消する必要があることから、今後は火災保険と同様、地震保険の保険料についても大幅な値上がりとなる可能性は高いとお考えになったほうが良いでしょう。
参考:損害保険料率算出機構 【地震保険】基準料率改定の届出のご案内
上記をまとめると、地震保険料は僅かに値下がりしましたが、地震保険料の値下がり以上に火災保険料の値上げ幅が大きいものの、火災保険の契約期間は半分になります。
これから新規で火災保険をご契約の方については、保険料の負担がいままで以上に大きくなることを踏まえた資金計画を検討しておく必要があります。
『定額減税』により、地震保険料控除による還付が大幅に減るかも・・・
2024年分については『定額減税』によって年末調整における地震保険料控除による還付が減る、もしくは還付金がなくなる可能性があります。
その理由は、定額減税の制度そのものが平年では年末調整で還付する所得税を前倒しで還付する制度。当たり前の話ではありますが、所得税の還付金額は納付した所得税額が上限です。
還付にあたり、あらゆる控除項目はありますが納付した所得税額(ならびに住民税の一部)以上は還付されません。
関連:期待外れの「定額減税」に長期金利1%を超えて今後どうなる!?
金利上昇に加え火災保険料のアップ、ならびに日増しに強くなる新築における補助金・助成金の先細り感から、家を建てる決断を先延ばしにすればするほど、土地・建物価格の上昇はもちろんのこと、火災保険料をはじめとする諸経費の支出増が重なり、資金的な余裕はどんどんなくなっていくことが想定されます。
古き良き時代を懐かしんでも、現在とはあらゆる条件が異なっています。
つまり、『家族が家を建てようと合意できたとき』が、家の建て時のベストタイミング。
現在の条件で最善の資金計画を検討し、家づくり要望の優先順位を家族で共有し複数の住宅会社を丁寧に比較検討する。
これからも変わらない家づくりの原理原則です。
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