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建築家 天野 彰 都市での暮らし町家の夏の家の発想

台風一過少しは涼しさを期待と思いきや、かえって全国にフェーン現象をもたらし各地を高湿度の40度近い猛暑にしています。

不思議なことにあの30度以上のカッと暑い真夏の方が、日陰に入れば涼しく感じ、風でもあればむしろ快適に思え、夜は涼しく感じることもありました。しかし最近の異常気象の蒸し暑さでは「何が涼味だ?」と叱られてしまいそうです。

【1】このアスファルトジヤングルでさわやか目元涼しい家とは

風の通りも、郊外や地方はともかく、アスファルトジャングルの都心や密集地では、窓を開ければゴーゴーとエアコンの音と熱風が吹きこんできます。こんな中でもわが国の住まいの本質は“日本”で、誰もが本音では無垢(むく)の木や土の家に憧れているのです。とは言え高断熱高気密の現代、わが国の気候と風土の中に息づいた生活文化はどこへ行ってしまったのだろうか?と思いきや、若い人たちは浴衣や着物を好み、日本料理に人が集まり、住まいも木造や無垢だと自然素材の本物思考もあるようです。

しかし密集した都市での家々でも、風の向きや適度な隣棟間隔、あるいは中庭などによって風が入り、涼しく感じることもあります。筆者自身もアパート暮らしで、風も無い暑い日に窓の外の草がかすかに揺れていることに気づき窓から手を出したところ、そこに僅かに風が通って、ちょっと涼しいと感じたことがありました。

【2】「プロテクト出窓」の発想

隣の家と5,60センチの狭い谷間のようなところは陽も当たらず地面も冷え、涼しく感じその風を呼び込むように板を立ててみら、そのわずかな風が見事にわが家に入って来たのです。狭いわが木賃アパートに血が通ったように、涼しく覚え、その後、新築やリフォームの設計の際出窓の活用をしました。

しかし隣のエアコンの室外機の音や壁が迫って、火災時の危険も感じました。そこで出窓の左右だけを風と光を呼び込むように縦長の窓を取り正面は遮蔽の壁やガラスブロックにして視線や騒音や火災を防いだのが「プロテクト出窓」です。

以来筆者の住まいの設計ではこの風を呼び込み視線を防ぐ「出窓」を多く設け、通りに面した窓も外観も目元涼しげな外観にしたのです。

イラスト:プロテクト出窓、目元爽やかY邸外観(イラスト:天野 彰)
イラスト:プロテクト出窓、目元爽やかY邸外観(イラスト:天野 彰)

写真:プロテクト出窓、目元爽やかY邸外観(写真:天野 彰)
写真:プロテクト出窓、目元爽やかY邸外観(写真:天野 彰)

【3】密集する都市の「町家」プラン

イラスト:「中庭プランのメリット」(図:天野 彰)
イラスト:「中庭プランのメリット」(図:天野 彰)

ここで改めて「住まいは夏を旨とすべし」の都市住宅の原点を京都の町家で探ってみましょう。さすが千年の街は東西南北の街路から工夫がなされ中途半端な?前庭など無くすべて中庭にして、しかも中庭に庇を深く植栽を施し、それが冬には陽だまりとなるプラン配置で、しかも立体的な巨大な換気扇(ベンチレーター)のような断面構造となっていることが分かりました。

ここで京都の「町家」の佇まいを建築的にちょっと解析してみると、都市の狭い土地ではイラストのように、敷地の真ん中に家をつくって周囲を隙間のような薄っぺらな庭をつくるより、L字やコの字、またはロの字形の中庭式プランにした方がまとまった庭となり間取りに変化も生まれます。

各戸が接するところは民法上の解釈もありますが、互いが合意し外壁を隣地いっぱいの防火壁にすると中庭はさらに広くなり、京の町家と街並みとなるのです。これで各家は広い中庭で風通しもよくなり街並みもすっきりと涼しげにはずです。

【4】「町家」は家全体が巨大な換気扇とは

しかし京都は盆地のような土地で風もあまりなく暑いのです。中庭をつくっても風が通るのでしょうか?実は京都の町家の中庭は平面だけではなく立体的にも風通しの工夫がなされているのです。その断面を見るとよくわかります。

日中の太陽に熱せられた瓦屋根の熱に引き上げられ中庭に上昇気流が生じ、各部屋の空気がその中庭に引き込まれ家全体が大きな換気扇になって排気されるのです。

イラスト:町家の風通しの原理(巨大な換気扇)(図:天野 彰)
イラスト:町家の風通しの原理(巨大な換気扇)(図:天野 彰)

写真:京都町家長江家外観(写真:天野 彰)
写真:京都町家長江家外観(写真:天野 彰)

写真:京都町家長江家中庭(写真:天野 彰)
写真:京都町家長江家中庭(写真:天野 彰)

夕方路地に打ち水をすると冷えた空気が、吸い込まれ部屋を通り中庭から排気されるのです。あの街並みや路地から見える美しい連子格子の窓は排気ではなく吸気となって、暑い中でも中庭の深い庇の影や日よけの縁台に居ると涼しさを感じるのです。冬は街路の連子の障子を閉じれば中庭に陽だまりが出来て暖かいと言うのです。

町家は暑い中でこそ、この涼しさを味わえ、感じられる“涼味”と“涼し気”こそ、きわめて合理的でかつ生理的で心理学的な科学の家だったのです。

こうして各路地から見える街の景観は、連子格子の家々がすきまなく連続し、路地全体が堂々とした重厚感となり、それでいてしっとりとした佇まいを感じさせるのです。しかし最近は「経験したことのない」ような、熱い太陽がじりじりと照りつける暑い夏と、線状降水帯の土砂降りになって、各地に大きな被害をもたらしています。この夏、町家の中庭はどうなのでしょう。

このような暑さの中、高齢となった人や、皆さんのご両親はいかが過ごされているのでしょうか?そこで次回から、ずばり「長寿の家」についてお話ししたいと思います。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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