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建築家 天野 彰 私の住まい 旅に行こう!本物の家を探そう

家を建てることは多くの人との出会いです。体験や試練も与られ、ときに人生を大きく変えることもあります。家づくりは材料や施工のあらゆる職人たちとも出会い、家づくりの本質を学び経済や文化を知ることになります。

筆者自身こうした家づくりの現場で、本来の日本の伝統と西欧の近代住宅との間でもやもやしたものを感じていました。その疑念を晴らそうとの思いが日本から飛び出す勇気を得たのです。

旅をして住まいの本質を探す

住まいを学ぶことは同時に伝統や街の文化、社会を学ぶことでもあるのです。国内では京都や金沢などたびたび古都を探訪し、生身の人が暮らす家やその環境や伝統を観て西欧との違いを感じていたのです。

若気の至りに背を押され、今思えば無謀で恥ずかしいことばかりですが、おかげでその生の実態や各地の民族の歴史を学ぶことにもなり、今も彼らとの触れ合いを鮮明に覚えているのです。まさしく戦後間もなく、安保闘争や学園紛争などが活発化し、多分に漏れず時の体制にうんざりし、社会主義思想にも興味もあり、割安なソ連経由を選んだのです。

ソ連から欧州へ陸路を渡り歩き、ローマ・テルミニに

こうして胸躍らせ、ソ連の貨客船のオルジョニキーゼ号に乗船、がその途端に独特の匂いに息を詰まらせ、船室の狭さと揺れに食事もままならずナホトカに着いて、この状態のまま長い鉄道旅に後悔さえしたほどでした。のちにその匂いがアザラシの脂などと分かるのですが、それこそが環境と文化だと知らされるのです。

寒さと長引くインフレの中で人々の暮らしも過酷のようで、思い描いていた社会とは違っていたのです。そんなモスクワをあとにして建物や街に興味があったレニングラードへ、まさしくロシア帝国が誇ったかつての首都サンクトペテルブルク。

街の主要な建物はまさに宮廷のような彩りの石張りで、その豪華さに目を奪われたものの、エルミタージュなど主だった建物がなぜか人々の暮らしが見えてこない芝居のセットのような空しさも覚えたのです。

写真:雨のクレムリン奥にポクロフスキー聖堂が見える
【左】写真:雨のクレムリン奥にポクロフスキー聖堂が見える【右】列車の女性車掌、各駅に監視の目? 雨のクレムリン、奥にポクロフスキー聖堂(撮影写真:天野 彰)

そして国境を抜けると欧州の明るさと色があった!

目が覚めると車窓に緑の森をさっそうと走る真っ赤なスカーフの女の子と眩い銀輪が目に飛び込んで来たのです。欧州北欧フィンランドです。これからがわが国の伝統と近代建築との葛藤の出会いの始まりとなるのです。

多く建築士や学生たちと逢え、彼らの家にも訪ねることが出来、幸い東京オリンピック直前もあいまって、皆日本ひいきで快くもてなしてくれ泊まることもでき、彼らの住まいや生活文化を生で体験することともなったのです。

こうして北欧から中欧さらに南欧へと、ローマを目指し伝統と近代建築探訪の欧州縦断の歩き旅となるのです。今こうして欧州を渡り歩いたことを思えば、ロシアと欧州が侵攻によって分断されていることが、ある種の大陸の必然性と虚しさを覚えるのです。

旅をし、環境を変えその地に身を置くと自己を知る

話が反れましたが、広大なユーラシア大陸の中では種々の文化があり国があり言語も違い多様な民族が共存し、それらの伝統や近代建築への葛藤があるのです。こうした欧州を足で旅するに従って、自身がよそ者の“異邦人”であることを思い知らされるのです。

そして同時に、わが国の文化を改めて顧みることにもなるのです。近代建築や住まいのカタチを真似することではなく、その成り立ちから学ぶこととなるのです。こうした情景をスケッチブックに描き留めることに努めたのです。すると “頭の黒い異邦人”のスケッチを描く姿が珍しく、各地の公園などでポストカード版のスケッチ画を売ることとなるのです。旅費も次第に尽きて来た頃でもあり、情景を探索しながら、しかもその日の“糧”ともなる・・・一石二鳥ならぬ“一筆二得”となったのです。

ドイツ・ライン川沿いのブラウバッハ・マルクスブルク城 売れ残ったスケッチ
【左】ドイツ・ライン川沿いのブラウバッハ・マルクスブルク城 売れ残ったスケッチ
【右】ドイツ・デュッセルドルフ・テッセンハウス;SOM設計の超高層

ローマ・テルミニ駅前に辿り着いた!筆者若い!細い!(撮影:天野 彰)
ローマ・テルミニ駅前に辿り着いた!筆者若い!細い!(撮影:天野 彰)

旅は自身の生活を見直し、家づくりの発見もある?

こうして各地を歩くと、欧州のどの街にも老人が多いことに驚いたのです。公園やピアッツァのくつろぎは“狭い城壁都市”での彼らのリビングルームであることも実感しました。そこにコミュニティーの必然性があることも理解できたのです。まさに今のわが国の高齢化社会だったのです。

そしてあまりにも長い歴史と伝統の中で建物も住まいもそれらをすべて内包しつつ近代化の葛藤があったのです。スマートにその伝統を浸透させて来たこともよく解かったのです。

しかしこの西欧の近代の住まいのカタチはあくまでも“西欧のもの”なのです。改めてわが国の風土と伝統をスマートに浸透させて住まいの近代化をどう図るべきかを考えさられます。以来国内の古都など古き暮らしの中に同様の発見があり、忙しい合間でもあちこちの旅に出かけるようになったのです。

皆さんも家を建てるときやリフォームを考える機会にショウルームではなく、ぜひ古都の旅に出ることをお勧めします。まずは手始めにお近くの神社仏閣からでもどうですか。そこに必ず新たな住まいの発見があるはずです。

次回は「私の住まい 家の本物は構造と素材」をお話しします。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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