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居住用不動産を売却した時の税金について
1 居住用不動産を売却した時の税金について
居住用不動産を売却した時の税金は、利益が出た場合、損失が出た場合によって、使える規定が違ってきます。そもそも、不動産を売却した時は、以下の計算式で利益や損失を計算します。
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
*「取得費」には、売却される不動産を当初購入された時の、仲介手数料、印紙代、登録免許税、不動産取得税、登記費用、立退き料などが含まれます。
*「譲渡費用」には、売却の際に生じる仲介手数料、印紙代、測量費、その他譲渡するために生じた費用が含まれます。
ここで利益が出た場合とは、当初購入した値段よりも高い価格で売却したことによる利益であり(譲渡収入>取得費+譲渡費用)、損失が出たというのは、当初購入した時よりも安い価格でしか売れなかった場合です(譲渡収入<取得費+譲渡費用)
また、相続等により取得した財産で、当初の購入価格がわからないものは、売却価格の5%を取得費とみなすことになっており、ほぼ95%が利益となってしまいます。
2 利益が出た場合の税金
利益が出た場合に、一定の要件を満たせば、(1)3,000万円の特別控除、(2)10年超所有軽減税率、(3)特定の買換え特例など様々な特例を受けることができます。
(1)3,000万円の特別控除
居住用不動産を売却して、利益が出た場合は、3,000万円の特別控除の適用を受けることができます。これは、売却益から3,000万円の特別控除を差引ける、という規定です。 すなわち、売却益が3,000万円以内であれば、売却益はゼロとなり、譲渡所得税はかからないことになります。
この特例の適用を受けるための要件
居住用不動産の所有期間にかかわらず適用が受けられますが、次の要件を満たすことが必要です。
- ・自分が住んでいた家屋の譲渡であること
- ・ 配偶者や親族など、特別な関係のある人に対する譲渡ではないこと
- ・ 売却した前年、前々年に、この制度または次の(3)の制度その他の優遇制度の適用を受けていないこと
- ・ 住まなくなってから3年目の年末までに譲渡すること
- ・ 家屋を取り壊して譲渡する時は、取り壊してから1年以内に譲渡すること
- ・ 翌年3月15日までに、所定の書類を添付して確定申告をすること
申告する際に必要な書類
- ・ 譲渡所得の内訳書(計算書)
- ・ 売却した資産の取得費がわかるもの(契約書、領収書など)のコピー
- ・ 譲渡資産の売買契約書コピー
- ・ 譲渡費用(仲介手数料など)の領収書コピー
- ・ 譲渡資産の登記簿謄本
- ・ 譲渡した資産の所在地の住民票除票(譲渡後2ヶ月経過後のもの)の写し
- ・ その他源泉徴収票など、通常の申告にも要するもの
(2)10年超所有の居住用財産の軽減税率
所有期間が10年を超える居住用不動産を売却した場合は、3,000万円特別控除後の譲渡益について、次の軽減税率を使うことができます。
- ・ 譲渡益 6,000万円以下の部分 所得税10%、住民税4%
- ・ 譲渡益 6,000万円超の部分 同 15%、 同 5%
申告する際に必要な書類
上記(1)に同じです。
3 特定の買換え特例の申告
この特例は、簡単に言えば「譲渡した自宅の売却価格よりも高い新居を購入すれば、税金がかからない」という制度です(この特例には、これまで、「相続等による買換え特例」という制度もありましたが、平成19年4月1日以降の譲渡からは廃止となりました)。※平成21年12月31日までの特例です
この特例の適用を受けるための要件
- ・ 譲渡資産、買換資産がともに国内にあること
- ・ 所有期間が、譲渡した年の1月1日現在で、10年を超えていること
- ・ 譲渡資産、買換資産がともに国内にあること
- ・ 譲渡先は、配偶者や親族など、特別な関係のある人ではないこと
- ・ 譲渡資産、買換資産がともに国内にあること
- ・ その年、前年、前々年に、3,000万円特別控除など他の特例を受けていないこと
- ・ 前年1月1日から翌年12月31日までに買換え資産を取得すること
- ・ 取得した年の翌年12月31日までに居住すること
- ・ 買換え資産の土地の面積は、500平方メートル以下であること
- ・ 買換え資産の建物の床面積は、50平方メートル以上であること(平成19年3月31日以前の譲渡については、50平方メートル以上280平方メートル以下)
- ・ 中古のマンションは、築年数が25年以内のものであるか、または、新耐震基準適合住宅であること
申告する際に必要な書類
- ・ 譲渡資産の譲渡価額に関する明細書
- ・ 買換え資産の取得価額またはその見積額に関する明細書
- ・ 譲渡資産の登記簿謄本
- ・ 譲渡した資産の所在地の住民票除票(譲渡後2ヶ月経過後のもの)、または戸籍の附票の写し
- ・ 譲渡資産の売買契約書コピー
- ・ 買換え資産の登記簿謄本、売買契約書等
- ・ 買換え資産の所在地の住民票の写し
- ・ 築後25年を越える耐火建築物を買換資産とする場合は、「耐震基準適合証明書」又は「住宅性能評価書の写し」
- ・ その他源泉徴収票など、通常の申告にも要するもの
他の特例との関係
- ・ この特例の適用を受けると、買換えた居住用不動産に対し、ローンを組んでいたとしても、いわゆる「住宅ローン控除」の適用を受けることができませんので注意が必要です。
- ・ (1)の特例と(2)の特例は重複適用可能です。しかし、(1)(2)の特例と(3)の特例とは選択適用になりますので、ご注意下さい。
損失が出た場合の損益通算・繰越控除
平成16年より、不動産を売却して売却損が出た場合は、その損失は他の所得から控除することができなくなってしまいました。すなわち、売却損を給与などと相殺して、給与から引かれている源泉所得税の還付を受ける、ということができなくなりました。また、青色申告の場合などは、その損失を翌年以降3年間繰り越せたのですが、それもできなくなりました。
以上が、一般的な不動産の譲渡の原則なのですが、居住用不動産に限っては、一定の要件を満たせば、売却損の損益通算(他の所得から控除すること)および損益通算しても引き切れない損失がある場合は、翌年以降3年間の繰越控除ができることになりました。
規定について
居住用不動産を、買換えた場合の、譲渡損失の損益通算及び繰越控除
この特例は、その年の1月1日での所有期間が5年を超える居住用資産を譲渡して、その翌年末までに住宅ローンで買換え資産を取得した場合に、以下の要件を満たせば、その譲渡によって生じた損失を他の所得と損益通算して、通算しきれない損失の金額を翌年以後3年(合計所得金額が3,000万円以下である年に限る)にわたって繰越控除することができるというものです。
※平成21年12月31日までの特例です。また、この制度は、住宅ローン控除との併用が可能です。
この特例の適用を受けるための要件
- ・ 所有期間が、譲渡した年の1月1日現在で、5年を超えていること
- ・ 譲渡先は、配偶者や親族など、特別な関係のある人ではないこと
- ・ その年の前年、前々年に、3,000万円特別控除など他の特例を受けていないこと
- ・ 譲渡をした年の前年1月1日から翌年12月31日までに居住用不動産(家屋は50平方メートル以上)を、10年以上のローンで取得すること
- ・ 取得した年の翌年12月31日までに居住すること
- ・ 譲渡した翌年3月15日までに、所定の書類を添付して確定申告をすること
申告する際に必要な書類
上記1(3)「特定の買換え特例の申告」に記載した書類に加えて、購入した資産に係る住宅借入金の残高証明書が必要になります。
居住用不動産を売却した時の税金について
ローン残高が、売却収入よりも多い場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
この特例は、その年の1月1日における所有期間が5年を超える居住用資産を譲渡した場合に、その譲渡価額がその譲渡資産のローン残高に満たないときに、以下の要件を満たせば、その譲渡によって生じた損失のうち、『住宅ローンの残高-譲渡価額』までの金額を、他の所得と損益通算することができ、通算してきれない損失の額は、翌年以降3年(合計所得金額が3,000万円以下である年に限る)にわたって繰越控除することができるというものです。※平成21年12月31日までの特例です。
この特例の適用を受けるための要件
- ・ 所有期間が、譲渡した年の1月1日現在で、5年を超えていること
- ・ 譲渡先は、配偶者や親族など、特別な関係のある人ではないこと
- ・ 譲渡契約日の前日において、償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること
- ・ その年の前年、前々年に、3,000万円特別控除など他の特例を受けていないこと
- ・ 譲渡資産の登記簿謄本 ・譲渡した資産の所在地の住民票除票(譲渡後2ヶ月経過後のもの)または戸籍の附票の写し
- ・譲渡した前日における売却した資産にかかる住宅借入金等の残高証明書
- ・ その他源泉徴収票など、通常の申告にも要するもの
例
このケースはちょっとわかりづらいので、例をあげてみます。
- ・ 今回、譲渡した金額 3,000万円
- ・ 購入時の取得価額 5,000万円
- ・ 譲渡直前ローン残高 4,200万円
他の条件は無視します。この場合▽
- 譲渡損失 3,000万円-5,000万円 = ▲2,000万円
- 損益通算対象額 3,000万円-4,200万円 = ▲1,200万円
※譲渡損失は、2,000万円ありますが、そのすべてが損益通算・繰越控除の対象になるわけではありません。譲渡収入を上回るローン残高の部分(1,200万円)のみが、損益通算・繰越控除の対象になるということです。
1.と2.の違い
1.2.は、いずれも居住用不動産の譲渡損失の損益通算、繰越控除ができるものですが、その違いは次のとおりです。
1.は、買い換えることが条件です。この場合、売却した資産には借入金がなくても構いません。ただし、買い換えた資産は10年以上のローンを組んで購入する必要があります。
2.は、買い換える必要がありません。自宅を売却して、賃貸住宅に住んでも適用があります。 ただし、売却した資産に償還期間10年以上のローンが付いていることが条件になっています。
いずれにしても、居住用不動産を売却して損が出る見込みの場合は、上記1.2.いずれかの要件にあてはまるように、意識して売却・購入を行なうことが得策です
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