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住生活情報マガジン 余はく 秋を豊かに演出する和のアイテム ~この秋、和を愛でる~

1 この秋、和を愛でる

秋めく季節の過ごし方 和を愛でる秋行事をご紹介します

樹木が色づき、様々な食物が収穫期を迎える秋は、和の文化を見直したくなる時期。そもそも「和」という漢字には「日本的な」という意味のほか、「穏やかなこと」「仲よくすること」などという意味もあるのだとか。

つまり、日本の歳時には、人と人の心をつなぐ知恵が詰まっている、ともいえるのです。人とのあたたかな関係は、心豊かな日常と切り離せないもの。秋めく季節を豊かに過ごすための、和の行事の魅力に迫ります。

2 色づく季節、日本らしい季節感を愛おしむ

五感を澄ませて、紅葉、虫の音に秋を感じる季節
五感を澄ませて、紅葉、虫の音に秋を感じる季節

秋には暮らしに根づいた歳時記がたくさん

立秋(8月上旬)が過ぎれば、暦の上では秋。しかし実際の感覚では、秋は9月から11月頃までといえるでしょう。なかでも、夏の空気の中に秋の涼やかな風が混在し始めるのが9月。昼と夜の長さがほぼ等しくなる「秋分の日」を過ぎると日増しに夜が長くなり、夕暮れ時には虫の音が響き、すすきや萩など秋の草花がかすかに冷たい風に揺れ、秋の風情が出てきます。9月には、名月を愛でる「十五夜」(8日)、菊に長寿を祈る「重陽(ちょうよう)」(9日)、ご先祖を供養する「彼岸」(20日〜26日)など、生活文化と関連づいた様々な行事が行われます。

そして、10月になると秋はいよいよ深まり、新米や果物などが実りの時期を迎えます。空や空気は澄みわたり、爽やかそのもの。空気が冷えるのと歩調を合わせるかのように、山々の葉は色づき始めます。衣替え(1日)を済ませ、道ゆく人の服装もすっかり秋色に。さらに11月になり立冬を迎えると、木々の葉も色づき、「酉の市」(10日、22日)や「七五三」(15日)などが行われ、街は秋らしい賑わいを見せます。

紅葉、虫の音、秋の風… 五感を澄ませて季節を味わう

このように歳時やイベントの多い秋は日本の自然や文化を五感で味わうのにふさわしい季節。暖房を必要としないこの時期、窓を開け放して心地よい秋の風や虫の声、樹木の色づきなどを楽しんでみてはいかがでしょう。都会で暮らしていても、窓を開けて耳を澄ませば、街路樹のちょっとした繁みの中に松虫や鈴虫が潜んでいるもの。また、街路樹や公園の樹木も紅や橙、黄色に色づき、私たちの心を癒してくれます。日本らしい季節感に目を向け、愛おしむことは、心の和やかさにつながります。そして、その和やかさが人との関係にも「和」をもたらし、日々を豊かにすると思うのです。では、そんな〝和ごころ〞をもって楽しみたい秋の行事についてご紹介します。

3 お月見、菊酒、旬菜料理・・・

名月を愛でて月の神様のパワーをいただく

一年でもっとも月が美しいといわれるのが、十五夜。もともとお月見は、庶民の間では農作物の実りを感謝するための祭りだったとされ、この日はお団子や、ススキ、おみなえし、萩、桔梗といった秋の七草、そして畑作物であるサトイモをお供えするという習わしがあります。こうした供え物は地域によって様々ですが、なかでも代表的なものといえば、お団子。月のかたちに見立てた丸いお団子をピラミッドのような山形に供えるのは、月の神様の力をいただくためだとされています。つまり、現代的にいえば、月見団子は聖なる力を宿すパワーフード。いただく前に部屋の電気を消し、月の光を愛でる時間を持てば、いつもと違う世界があらわれることでしょう。

ちなみに、昔の日本では子どもは月からの使者と考えられている地域もあり、この日に限っては月見の供え物を盗むことが許されていたのだそうです。その名残は現在にもあり、地域によっては「お月見くださ〜い」などと声をかけて各家をまわり、お菓子をもらう風習があるのだとか。どこかハロウィンのようですね。

こんなふうに、今人気のあるものの原点を日本の風習の中に見つけるのは、実に面白いこと。伝統行事というとつい「こうしなければならない」などと堅苦しく考えがちですが、そうではなく、もともとの風習の意味を知り、その楽しみを暮らしに取り入れることで、日々を豊かにすることにつなげたいものです。旬の清酒に菊香を移して 五感で秋を堪能する

菊の節句ともいわれる「重陽」には菊の香りを移した菊酒を飲むのが習わしです。そこには邪気を祓い、長命を願うという意味があります。菊というと仏前に供えるものというイメージがあるかもしれませんが、もともとは薬材。つまり、漢方薬の材料でした。また昔から菊には聖なる力もあるとされ、干した花びらを枕に入れることで、安眠につながるともいわれてきました。

そんな菊をより身近に楽しむには、「ひやおろし」や「秋上がり」といった、秋に旬を迎える日本酒に浮かべていただくのがおすすめ。このとき利用したいのは、黄色や紫色の食用菊。洗った後、水気をきゅっと絞り、ガラスの器に菊を少しだけ浮かべると、菊の香りが清酒に移り、香り、風味、見た目と、まさに五感で秋を楽しめます。

例えば、さつまいもの茶巾絞り 旬の食材で秋を味わう

味覚の秋といわれるように、この時期は野菜や果物、魚類など多くの食物が収穫期を迎えます。旬の食材は安価で栄養価が高く、おいしいのが魅力。手の込んだお料理でなくても、サッとつくれて見た目が秋らしい一品を食卓に並べれば、家族全員で秋らしさを味わえます。その一つが、さつまいもの茶巾絞り。ふかして形を整えるだけなので、至って簡単。紫芋を使ったり抹茶を混ぜたりすると、彩りに変化が出ておすすめです。

五感で感じる、味わう、色めく秋の愉しみ方
こんな小さなことから、秋めく暮らしを実践してみてはいかがでしょう。

4 知るほどに広がる月見の楽しみ

月見の楽しみ方は、その国それぞれ。日本には様々な月を愛でる習慣があります。文筆家。うつわ・ことば・絵の作家でもある、広田 千悦子さんにお話をうかがいましたました。

名前やかたち、歴史などから楽しむ月見

月にプラスのイメージを持つ民族はあまりいないと、広田千悦子さんは話します。「狼男やドラキュラなど、欧米では月をちょっと不気味な存在として描くことが多いのに対し、日本ではかぐや姫伝説など、月と聞いただけで心が潤うような感じですよね」そのためか、日本語には月に関係する言葉が豊富です。曇って見えない月を「無月」、雨の中ほのかに月の明るさを感じるのを「雨月」等々。見えない月にまで名前をつけるところに、物事を様々な角度から読み取ろうとする日本人の気質があらわれているといえそうです。「現代ではお月見というと十五夜か十三夜ですが、それ以外にも日本人はいろんなかたちの月を愛でてきた歴史があるんですよ」

それを示すのが、月待の行事。ある特定のかたちの月がのぼるまでの間、例えば十九夜では子宝や子育ての平安を願う女性たちが飲食しながら時を過ごしたのだとか。「十六夜待、十七夜待、さらには二十三夜待というのもあったようです」

新月から満月までの間は約15日。つまり二十六夜は、新月に近い細長い形。この頃の月が東の空に昇るのは真夜中から明け方なので、江戸の人々はわずかな間しか見えない月を見るために楽しみながら待っていたというわけです。現代の生活でそこまで悠長なことは難しいとしても、秋の夜長に夜空を見上げ、のんびり月を愛でるひとときをもつのは乙なもの。満月以外の月を愛でるという発想も、取り入れてみてもいいのでは。

ちなみに、日本では月の模様をウサギの餅つきに見立てますが、中国ではハサミが一つしかないカニ、北ヨーロッパでは本を読むおばあさんと、解釈はいろいろ。いつものイメージを取り払って見てみるのもまた新鮮です。

5 秋を豊かに演出する和のアイテム

見直してみたい日本の行事。その魅力をより身近に感じるためには、かたちから入るのもひとつの方法。日常生活に取り入れてみたい和のインテリア雑貨をご紹介します。

どこかオブジェのような 一人膳

座って使うお盆(お膳)のイメージから、「座盆(ざぼん)」と名付けられた小さめの一人膳。縁側で虫の声を聞きながらお茶を飲んだり、お月見をしたり。また床座でお酒を飲んだり、テーブルの上で大皿代わりに直接料理を盛りつけたりしても絵になります。

高さ違いの2タイプ、いずれも樹種はチェリーとウォールナットの2種類あり

  • ふるいともかず工房tsukinowa
  • TEL:0771-82-0310
  • 「ざぼん」高さ13×天板直径33㎝・・・30,000円(税別)
  • 高さ7.5×天板直径30㎝・・・22,000円(税別)

懐かしい虫かごに 鳴き声が美しい秋の虫

繊細な竹細工でできた虫かごの中には、粘土や針金でつくられた本物そっくりの鈴虫と松虫が。赤外線センサーで人影に反応するごとに、鈴虫が「リーン、リーン」、松虫が「チッチキチッ、チッチキチッ…」と本物の声を使った美しい音色を響かせます。リビングや和室などに飾って、秋の風情を堪能してみては。

高さ違いの2タイプ、いずれも樹種はチェリーとウォールナットの2種類あり

かごや(外部リンク)

「竹細工虫かご」鈴虫と松虫(長さ17.5×幅14×高さ18cm)18,000円(税別)

和のアイテム 昔ながらのてぬぐいやろうそく

飾る、敷く以外にも多用に使える日本てぬぐい

 日本の春夏秋冬を描いた絵てぬぐいは、手ぬぐいとしてはもちろん、額に飾れば一幅の絵としても楽しめます。 また、小ぶりな手ぬぐいハンカチはお手ふきに最適。そのまま玄関やリビングなどの棚の上にクロスとして敷いても季節感の演出が楽しめます。

用途が多いてぬぐい

  • 麻布十番 麻の葉
  • TEL:03-3405-0161
  • 右:「絵てぬぐい ネコ紅葉」(大沢麻衣子原画)1,300円(税別)
  • 左:「手ぬぐいハンカチ 紅葉」(グリーン・オレンジ)各600円(税別)

三方があれば お月見気分が盛りあがる

三方(さんぽう)とは3ヵ所に穴の開いた台のことで、神事の祭具として生まれたもの。穴が4つないのは、三方より三宝を取り込み逃がさないためといわれています。月見団子を供える以外にも、お正月の鏡餅やひな祭りなどの季節行事に、ひとつあると何かと重宝。写真は栓の木でつくられたもの。白っぽい色あいはインテリアを選びません。

インテリアとしても活用可能な三方

たざわこ芸術村 森林工芸館

  • たざわこ芸術村 森林工芸館
  • 「三方」(幅15×奥行き15×高さ12㎝)4,500円(税別)

和菓子のような名月のお香はいかが?

月の満ち欠けをテーマにしたお香は、白檀がベース。玄関に置いておけば、帰宅時にほのかな香りで出迎えてくれ、また休日の読書やヨガ、リラックスタイムに焚けば、心落ち着くひと時を楽しめます。香りが薄くなったら、アロマオイルを数滴たらせばディフューザーとしても。

心落ち着くひとときに和のお香

  • Juttoku.神楽坂弁天町店
  • TEL:03-6205-5211
  • 「印香 満月」(3つ1セット)2,000円(税別)

モダンな和ろうそくで 夜を楽しむ

「ななお」はポップで美しいかたちが魅力的な「デザイナーズ和ろうそく」。デザインモチーフは植物。5本を並べてみると、それぞれのフォルムから草花の生命力と優しさが感じられます。植物性の原料からつくられていて環境にやさしいのも、和ろうそくならでは。燃焼時間は約90分。

デザイナーズろうそくでほっこり温か

  • 高澤ろうそく
  • TEL:0767-53-0406
  • 「和ろうそく ななお」(5本1セット) 1,800円(税別)

取材協力・イラスト/広田 千悦子氏
取材・文/冨部 志保子氏
情報提供:住宅情報マガジン『余はくvol.22 秋号』 P08~P13(2014.9.1発行)

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