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天野彰~同居を改めて考える(3)同居はわが身と国を救う?- 1 -
天野彰~同居を改めて考える(3)同居はわが身と国を救う?- 1 -
―「同居」は「少子高齢化社会」を救えるか?―
親世帯と子世帯が一緒に住む住宅は単なる共同住宅です。特に「二世帯住宅」が世に出回って以来、親子二世帯が同じ屋根の下に住むマンションのようにクールな「同居」?が多くなったようです。
まずは親子家族が「同居」することとはいったい何か?を考える必要があるのではないでしょうか。そもそも三世代の違った家族が住むことは、一世代離れた父母の文化も、二世代離れた祖父母の「生きた歴史」や、日常の生活姿勢や「味」も継承されることです。さらに共同で住む思いやりや気づかい、心遣いも醸成されるはずです。
何よりも子育てでは親子二組の両親、祖父母の“目”があり、子どもの安心があり、さらには高齢両親にとっては孫子2世代のサポートが得られ身も心も安らぎ、先々も心強いのです。農耕民族の家族ではこうした同居、大家族は当たり前のことで、今も日本人の心の奥底に親子の絆が息づいているのです。
まさしく「二“世帯”住宅」の大罪はこうした家族の本質的な絆を断ち切ったのかも知れません。同じ敷地、同じ屋根の下でも1,2階をきっちり仕切って外階段を付ければまさしく別家族。ここには気遣いも干渉も起こりません。なるほど親の土地を使って、別棟よりも屋根も基礎も兼用できて建設費が割安で経済的で、合理的な住まいだったはずです。
が、同時に親子互いの思い過ごしや疑心暗鬼が生まれていたのです。それこそ子育てと老後の生活を、互いが負担に思い始めたのです。べったり一緒に暮らしていれば気になることではないことが、近くで他人のような日常生活は音はすれども姿が見えず。たまにあってもあいさつ程度の付き合いになるのです。これも親が若くて元気なうちはよいが、どちらか一方具合が悪くなったり、亡くなったりでもすると状況は変わります。やはり一緒に住んでいれば子育ても親の世話も家族として当たり前になっていることが、突如義務感のような、勤めのような感覚となり、慣れていないだけに遠慮し、かえってワザとらしく、ぎこちなくなり負担になってしまうのです。こんな状況で、万が一愚痴や意見を言えば、まさに近い割にうるさい“他人”となってしまうのです。かえって遠くに離れたところに暮らしていた方が互いが諦め、過度な期待も起こらないのかも知れません。
ならば同居はしない方がいいのか?こうした二世帯がいいのか?確かに親子夫婦双方が毎日顔を突き合わせ暮すのも鬱陶しい。しかし同居の良さもある・・・、そこで私は、親子家族2世帯が壁で仕切られるのではなく、親・子・孫の三世代が住む、親夫婦と子夫婦が住む家と考えたのです。
なんだ?同居と同じことではないか?と思われそうですが、さ、にあらず。親夫婦の生活と、子夫婦の生活を優先し、なおかつ仕切らずに住むのです。つまり家の中で親と子をできるだけ離し遠ざけることです。狭い家の中では無理のようですが、寝室はもちろんのこと、互いのLDKを小さくとも二つ作るのです。するとイラストのマトリックスや断面のように互いのゾーンが独立し、LDKがその干渉帯のようになるのです。
<イラスト:同居のマトリックス/融合から分離の濃さ(画:天野 彰)>
<イラスト:同居の断面/上からべったり同居、半融合、そして半分離,分離(画:天野 彰)>
さらに子どもの部屋は子夫婦のさらに奥、親からできるだけ遠くになるように配置に心がけることです。同居で一番問題となるのは、子育てで孫すなわち子が親に干渉され、子が親に依存することにならないようにするのです。親が叱っているときに可哀想でついかばってしまうなどが問題となるのです。
こうして親子夫婦の生活を確立し、子側は子育てに干渉されることなく、かつ互いを常に見守れる、まさしく「同居」の良さと安心をプランにするのです。さあ、これで本格的な同居ができ、親は子すなわち孫を守り、子は親も見守ることができるのです。この負担のない安心の同居家庭が世に“蔓延”すれば少子高齢化は少しでも救えるのではないでしょうか。
<写真:佐賀、O邸/(上)外観,(左下)1階親側のLDK,(右下)2階子側のLDK(写真:天野 彰)>
次回は「共同ではなく「協“働”」の同居」です。
―ここで御礼―
先週はビッグサイトでの「コ・ベネフィット型の減築リフォーム、超高齢化社会を救う」建築再生展に多くの読者方のご来場を心より感謝致します。
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