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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 親と住む子と住む 二世帯住宅は鬼の住み処か?

1 二世帯住宅は鬼の住み処か?

嫁姑の「二世帯住宅」は「鬼の住処(すみか)」などとよく言われます。いったいなぜなのかと言う疑問や、なかにはそんな辛い経験をして結局別居した。とか離婚までした例もあるとも言うのです。

「二世帯住宅」は親子の同居住宅なのか?

そこで「二世帯住宅」での生活とは一体どんなことなのか調べてみました。確かに「二世帯住宅」は同じ屋根の下で親子2つの家族が上下1、2階?で別々に住んでいますが、物理的にその2戸は別々の家で「同居」とは言えせん。余りにも距離が近すぎるため、いくらコンクリート系の構造の家と言っても“実の親子や孫”だけに他人が住むマンションなどとは違って互いの音や気配が気になるのです。

お互いの付き合いが積極的でない限り「音はすれども姿は見えず」の親子関係はかえってイライラが募り、顔も見せなければあれこれ気を使い疑心暗鬼となってしまうことも多いのです。特に今まで互いが核家族の気ままな生活に慣れて来た両夫婦にとってはすべてが初めてのことでありその付き合い方もよそよそしくなり、お互いが気を使い時には疲れてもしまうようです。

“疑心暗鬼”はやはり“鬼”?

こうして親の土地に音の伝わりにくい家を建て、取りあえず二世帯で「別々にしっかり分けていれば大丈夫だろう」の安易な「二世帯住宅」になるのです。あえて互いの生活に干渉しないように意識するために、それが相手には「避けている?」とか「冷たい!」と思われてしまうようになるのかも知れません。実際、父親が健在なうちはそんな疑問や不満を夫が慰めていたことが、運悪く父親が病に倒れたり、亡くなったりでもすると、母親は孤独感も増して、子夫婦への疑心暗鬼がますます募り、些細なことでいがみ合いも起こる例も多いのです。

二世帯住宅に住む親子夫婦の「バランスの崩壊」で、結果「鬼の住処(すみか)」となるのです。そんなことから私は安易に「二世帯住宅」など最初から勧めません。むしろ嫁姑、すなわち息子夫婦と住む場合は思い切って一緒に同居で住む方が楽だと勧めているのです。互いが勇気をもって顔を見合わせながら一緒に住むと、互いの良い所や欠点なども理解し合えるようになるのです。もし意見の相違や諍いが生じたとしても一緒ならすぐに理解でき修復できます。これなら疑心暗鬼とはならないのです。もしそんな中で親御さんにでも不幸があってもその後も支え合い長く暮らして行けるのです。こうしてあえて同居のメリットを互いにクールに考えてみるのです。

新しい同居住宅とは「同居“共働”の家」

プラン:息子夫婦とは玄関は別、LDKも別、しかし一体同居プランG様邸(画:天野彰)
<プラン:息子夫婦とは玄関は別、LDKも別、しかし一体同居プランG様邸(画:天野彰)>

同居住宅と言え、寝室など互いのプライバシーをきっちり確保し、台所などまさしく勝手は“勝手に”できるようにあえて2つのキッチンを設け、さらに孫の部屋は親の部屋からできるだけ遠ざけるのです。諍いの原因で多いのが子育ての世代の相違で、世代の違う親に干渉されることをもっとも嫌うのです。時代は変わっているのです。ここは親が我慢のしどころです。特に子どもが小さいうちは親の居場所が子ども(孫)の“逃げ場”にならないようにする工夫が大切です。

写真1:同居プランG様邸 玄関奥で一体(下が親、上が息子さん家族の家)(写真:天野彰)
<写真1:同居プランG様邸 玄関奥で一体(下が親、上が息子さん家族の家)(写真:天野彰)>

写真:同居プランG様邸 2階(息子さん家族)で一体のホール(写真:天野彰)
<写真:同居プランG様邸 2階(息子さん家族)で一体のホール(写真:天野彰)>

こんなことが、初めから一緒に暮らしていると親の側も理解しやすく子育ての邪魔にならないばかりか、子夫婦の親としての正当性や苦労などを孫たちに知らせてくれる役割ともなるのです。何よりも互いの“見守り”が同居生活の最大のメリットで「同居“共働”住宅」なのです。

2 親の本音と子の本音?

非常事態宣言がこうも長く続くと親子互いが心配になりますが、だからと言って親の家に同居しては、とも思いますが、果たして同居がうまく出来そうもなく、自信が持てないようなら、あえて「二世帯住宅」などにして無理に住まない方がいいと思うのです。

スープの冷めない距離は住みやすいか?

よく言う「スープの冷めない距離」など親の近所に住むと言うのはどうでしょう。「近くに住んでいながら、なんで顔を出さないのだろう?」とか、「何かあったのかな?」など気になり、かえって疑念が生じることもあると言うのです。中途半端に親の近くに離れて住むなど安易にしない方がいいのです。日ごろ子育てや仕事に忙しい子世帯にはまったく気にならないことが、悠々自適でゆったり過ごす親側には子や孫を思い案ずる気持ちも高じてこんな疑念を生み、離れて住む方があきらめもつき時折の電話などでコミュニケーションも取れると言うものです。

家が建つまでの苦労や土地の提供や工費など負担等の金銭も含め、同居の“失望”が強調され、あの“鬼の心”も芽生え、メリットどころか親子の関係にまで響くデメリットともなるのです。

同居には「真意」と「本意」のルールがある

このように難しい同居の家を何軒も設計してきた私どもは同居のプランづくりにはある一定の法則があり、それこそ同居の「真意」とその「本意」です。「真意」と「本意」などと、まるで同じ意味合いの言葉のように思えるのですが、さにあらず、同居住宅の設計となるとこの両者には微妙な相違点が現われて来るのです。それこそ同居に対する「親の本音」と「子の本音」のそれぞれの「真意」があり、それこそ親の「老後不安」と子の「戸建て願望」であり、同居することの意義を互いがどのように捉えるかの「本意」があるのです。

それぞれの「真意」は、ご想像の通りで、互いに“異なる同居のメリット”を探ってわが身、わが暮らしのこれからと今の「得」を考えることなのです。これは親の家や土地の有効利用と言う点でもきわめて当然のことで、その「本意」とは、これからの少子高齢化の時代、社会保障の行方や医療費などの高負担がかさむであろうことと、さらに高齢者施設やケアの質の不安に対処できる同居です。これはますます増え続ける「空き家」にならない土地の有効活用のみならず、身内が共存すると言うきわめて安心感があるはずです。

「親の本音」「子の本音」を知る秘伝のゲーム

こうした意義ある「本意」に反して、同居は依然として嫁姑問題などがあり、それが同居不安ともなっているのです。が、実は封建社会での先入観念であって現代は嫁姑が互いに“気を遣い過ぎる”のが同居不安の要因となっているのです。だからと言って同じ屋根の下に親子が別々に住む「二世帯住宅」などにすれば互いがもっと交流を密にしていない限り、かえって“意識が通い合って”近過ぎるがゆえの住みにくさ、あの“鬼”ともなりうるのです。その丁度良い距離関係こそ、住まいやすい同居プランなのです。

イラスト:同居の距離のマトリックスパターン・断面パターン(画:天野彰)
<イラスト:同居の距離のマトリックスパターン・断面パターン(画:天野彰)>

そこで「親の本音」「子の本音」を探り出すことになるのですが・・・これがなかなか本音は語りたがらないのです。主には嫁と姑の「本音」なのですが、これがまた厄介なことにそのつれ合い、つまり父親と息子、つまり夫婦、親子は一つでなくまた夫婦も一つではないのです。

イラスト:同居形態パターン図のゲーム*複製転載禁止(画:天野彰)
<イラスト:同居形態パターン図のゲーム*複製転載禁止(画:天野彰)>

そこでわが“秘伝のゲーム”を行うのです。ゲームと言っても親夫婦、子夫婦の4者が別々に行うのです。こうして出た4者を合わせてたどり着く同居のパターン図の一番下の型を見いだすのです。

3 「べったり同居住宅」とは?

親夫婦、子夫婦の側からではなく、親の夫婦、すなわち父親と母親の二人で、子夫婦の夫婦二人と合わせて四人の側からのゲームなのです。そもそも夫婦は一つではなく夫と妻の二人なのです。

安易な同居のきっかけ?

「働きに出たいが、子どもが心配」「離れて暮らす親が心配」で親は「子夫婦が心配」「親子で一緒に住む方がなにかと都合がよく安上がり…?」で、同居や二世帯住宅を選択してしまう人が多いのです。

このコロナ禍のような事態に、互いが離れて住んでいることの不安や子夫婦が共働きで子どもの成長に伴って保育に預けるも大変、さらに家が手狭になったなどが原因とも言え、親子どちらかから希望が出て「同居」となっているのです。さらに親の高齢化に伴って突然の体調の変化や怪我などに対し気弱になり、子の方も心配になり、慌ててできるだけ近くに住もうなどと考えるのです。しかし離れて住むならかえって中途半端に近くに住まない方が無駄な気を使い過ぎなくてよいとも言いました。都合が良さそうな二世帯住宅なども同じです。

確かにどの親も年金の目減りや医療費の負担増、さらには親の介護、老々介護などの問題も差し迫ってもいるのです。本音では同居の願望があっても、一方で今までの勝手気ままな暮らしに同居に不安も抱いているのです。

どうせ同居するなら「べったり同居」!

親子が今までに同居の経験があるか、あるいは今までも親子の交流が多く仲良しの場合を除いては安易に同居や二世帯住宅などにしない方が良さそうです。まして親の方から誘わない方がいいのです。そこで改めて前回のあの親子夫婦“YES”or“NO”のゲームを見てみましょう。

結果が上からべったり同居。ややべったり。そしてべったり一体だがやや離れて外から子 (親) のゾーンに直接入れる。のゲームで一致する上の方の3つの同居形態(断面例)が見えて来ます。もちろん親子夫婦の4人のどなたかがNGならさらに下の分離同居になります。

イラスト:べったり同居のパターンの断面でキッチンと寝室の位置(画:天野彰)
<イラスト:べったり同居のパターンの断面でキッチンと寝室の位置(画:天野彰)>

するとこの断面パターンの図からいずれも同居にはキッチン(図1:K)と親・子・孫の寝場所の位置が重要であることが分かります。キッチンすなわち台所を中心に親と子、孫の寝室を干渉しないようにできるだけ遠くに距離を置けば、わざわざ別の家・すなわち「二世帯住宅」などにする必要はないことが分かって来るのです。

もともと住まいの肝・心・要は台所と寝室とリビングです。まさしくわが家の“勝手”と“寝床”と“居間”で、落語の「じゅげむ」の「食う・寝るところ住むところ・・・」なのです。

べったり同居でもキッチンは2つが望ましい?!

“勝手”の台所(キッチン)は主婦の象徴とも言えるところです。そのキッチンの役割を親子2人の主婦が守ることになり“2人の主婦が居る”と言うことが同居の難しいところです。そのバランスこそが大切なのです。なぜなら、ひとつの住まいの中で主導権をどちらが持つかと言う「嫁姑の競い合い」となるからです。しかも昔と違って、ニコニコと笑いながらの“静かな戦い”ともなるからです。このことは嫁姑に限らず、仲の良い母娘であっても問題となることで、企業で言えば “社長の椅子”とも言えるのです。これを母親から取り上げてしまってもいけません。母親のキッチンは言わば“社長の椅子”を譲った“会長の椅子”?と言ったところです。そこで、狭い同居住宅の中での2つのキッチンをどうつくるかです。

イラスト:狭くても嫁姑二つのキッチン(画:天野彰)
<イラスト:狭くても嫁姑二つのキッチン(画:天野彰)>

どうしても狭くて2つ取れなければ、イラストのように1つの台所の中に嫁姑2つのキッチンセットを設けることも可能です。“会長の椅子”である母のキッチンがいずれ使われなくなっても“象徴的なもの”として孫たちも使える意味もあるのです。母親の大切な食器も保管され、気が向いた時に手料理もでき、深夜に薬も飲めるなど母のキッチンは心の寄り処であり、心の安らぎでもあるのです。

狭くても二つのキッチンA様邸(設計:アトリエ4A)
<狭くても二つのキッチンA様邸(設計:アトリエ4A)>

こうして「べったり」とは住むものの、双方の寝る場所の寝室は極力遠くに離して、キッチンは2つ、トイレも2つ、バスも2つが理想です。

やはり同居するなら息子夫婦すなわち“嫁”とは最初から思い切って「べったりの同居」が良く“中途半端に”二世帯住宅や近くに住まない方が気を使い過ぎなくてよいのです。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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