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子どもの顔が見える家 机の配置一つで一体感
新年早々、能登での大地震に驚かされました。寒さの中で被災された方々への心からのお見舞いとご冥福をお祈りします。
地盤の破壊はもちろん、新耐震基準に準拠した建物のあっけない倒壊に心が痛みます。正月の平穏な団らんが一瞬のうちに失われ、家族がバラバラとなってしまうことに家づくりの重責を改めて肝に命じられました。耐震対策については、後日のコラムで詳しく紹介します。
【1】無防備に与えた子ども部屋
住まいの間取りは、実に不思議なもので、その配置や家の中の動線、さらにドアの開け閉め1つで親子関係や家族関係にまで係わることがあるのです。
近年、引きこもりや子育ての難しさに悩む家庭が増えています。家の大小に関わらず、壁で個室化された子ども部屋はどうしても家族が疎遠となり、閉じこもりの原因ともなっているのです。一方で、親子の息づかいが感じられるような狭い家ではそのことが煩わしくもなく、かえって楽しく住みやすくなることもあるのです。
親が子どもの自立や集中した勉強のためにと考えて個室を与えても、肝心の子どもは親や他の家族から離されたと勘違いし、かえってプレッシャーを感じたり疎外感を持って寂しくなったりもするのです。単に与えられた個室の子ども部屋では、勉強に集中するどころか毎日だらだらと過ごすだけのスペースになることもあります。
【2】顔の見える子ども部屋に
親が心配して子のドアを開けて中を見ようとすると「人の部屋に入るな」「鍵を付けて」と言われ、ショックを受けることもあると言います。子ども部屋の与え方がまず問題で、部屋を与える際は子どもからの要望があってから、個室の管理をしっかりと約束をし、同時に親の覚悟もしっかり持つことが大切なのです。すでに個室を与えてしまった場合、他の兄弟がいる場合は、将来的に共有するか交替することを伝え、いずれは父親の書斎か母親の家事室として使うことを宣言し、“所有権感覚”を持たせないことが重要です。
親子の関係は子ども部屋だけでなく、その動線の間取りも重要で、皆が集まるリビングを通るようにし、子どもの顔が見えるようにして、親の寝室との位置で気配を感じられるようにするなど、家族互いのコミュニケーションが取れる間取りが大切なのです。
【3】机の置き方ひとつで変わる親子の関係
実は、子ども部屋の机の配置だけで改善できる“秘策”があります。多くの子ども部屋が家の南側にあり、机が窓側に置かれていることが多いのですが、これには問題があります。
問題点は、入り口から見える子どもの姿が、明るい窓に向かっているシルエットであることです。何をしているのか分からず、疑心暗鬼に陥りがちです。この互いの不信感がいけないのです。さらに、机に当たる光線も問題です。窓際の強い日差しは目に悪影響を及ぼします。
そこで、机を入り口側の壁に向けて配置することを提案。これにより、常に安定した光が得られ、目にも優しいです。目の前の壁には、自分に必要な絵や文章を貼ることで、落ち着きを得られます。何より、入り口から見える子どもの姿は、一生懸命に取り組む姿となり、これにより、子どもも家族との距離が近くなり、次第に子ども部屋のドアが開け放たれるようになり、家族が一体となるはずです。次回は、このような子どもの顔が見える家についてお話ししたいと思います。
また阪神淡路大地震の時に筆者が急遽書き下ろした直下型地震『地震に勝つ家・負ける家』(山海堂)を読者の中から5冊謹呈させていただきたいと思います。
「あなたの家は直下型地震に耐えられますか?今住んでいる家のどこが危険で、どうすれば安心できるのか。家の下の地盤構造から間取り、家具の配置、地震保険に入るかどうかまで、建築家だから書けたノウハウ集。」B6版/246ページ/山海堂出版社/1995年/1300円 |
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