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子どもの顔が見える わが家のスナック
新年早々の能登大地震から4週間が経ちました。ますます寒くなる中、被災地での暮らしの厳しさに心が痛みます。こうした災害が起こるたびに、AIやSNS、ドローンなどのDXが発達した今日でも、多方面にわたる神経網のような国家的な統合危機管理システムが未だ構築されていないことに、いまだ各地の自治体さらには分屯の自衛隊の救助に頼る姿勢に虚しささえ覚えます。
子どもを守る家とは今日、各地で起こる災害や紛争、事故に対して子どもを守る姿勢や思想が欠如していることに、IT社会が生み出す仮想現実的で軽薄なクールさを感じます。
親が身を挺して子を守るのは動物的本能であり、今日まで多くの敵から子を守ってきました。しかし現代の社会システムでは、親は子どもを見守ることが難しくなっています。そこでは今までとは異なる新たな“社会”という敵が暗躍しており、親はそれに対処することが困難です。さらに、家の中にもSNSの情報やゲームなどを通じてそれが侵入し、潜んでいます。それは子どもたちの心に入り込み、知らないうちに彼らを侵食し、侵略しています。まさしく現代は家の内外で子どもは多くの危害に晒されているのです。
堅固な家を作り物理的に防御することは子どもに限らず重要ですが、さらに子どもの心を守ることも親や家族、そして家の“本来の防御”の一部であるべきです。
1 心が見えるプラン
最近の分譲住宅や提案プランを見るたび、設備の機能や見た目、面積、費用に重点が置かれている一方で、実際の生活や住む人の心を考慮していないように感じます。人が住む住まいにはドラマがあり、プラン、つまり間取りはそのあらすじであり、場面ごとの情景も見えてきます。
ホームドラマや漫画の家でもそれがうかがわれ、あのサザエさんの家などまさしく下町の情緒を醸し出し、その家族関係まで見えていました。これがプランニングの重要なポイントです。つまり、そこに住む人の目線で何が見えるか、家族間でどう見えるかがプラン作りにおいて重要です。
特に今の時代こそ、子どもたちとの係りが重要と言えるのです。彼らが外で何を経験したか、何に悩んでいるか、体調はどうかなど、分からないことが多いです。これは個室化が進み、廊下で仕切られた最近の家では、彼らが帰宅してもすぐに部屋に直行してしまい、声をかける機会が減っています。
2 リビングを通るプラン
前回のコラムで述べたように、子どもの顔が見える家の設計が、今重要です。玄関からすぐの部屋や階段を使って直行できる子ども部屋など、帰宅してすぐに彼らの部屋に直行できる設計は望ましくありません。。
さらに、親がいる台所やリビングが壁で囲まれ、トイレや浴室へのアクセスも廊下で隔てられている設計が多いのも気になります。暖房やプライバシーの観点では有効かもしれませんが、家族間の出会いや会話が極端に減少することが問題です。
そこで思い切って今の台所の仕切り壁を取り去り、リビング直結のプランに開放するのです。すなわちリビングを通り抜けないと自分たちの部屋に行けないプランにするのです。まるでホテルのロビーのようなリビングを目指すのです。
3 わが家は街のスナック?!
狭い家でロビーのような空間が難しい場合、台所を玄関に近づけるような大胆な提案もあります。これはまるで街のスナックのような雰囲気を持ち、狭い間口の住まいでもカウンターで出迎える「いらっしゃい!」の感覚を生み出します。
母親はまるで街のスナックのママのように、帰ってきた子どもの顔や表情、顔色を察し、自然に会話が進むようになります。子どもたちは部屋に行かず、そこで宿題をしたり、思いがけない悩みを打ち明けたりするようになります。
次回は『子どもと共に育つ家』をお送りします。
また阪神淡路大地震の時に筆者が急遽書き下ろした直下型地震『地震に勝つ家・負ける家』(山海堂)を読者の中から5冊謹呈させていただきたいと思います。
「あなたの家は直下型地震に耐えられますか?今住んでいる家のどこが危険で、どうすれば安心できるのか。家の下の地盤構造から間取り、家具の配置、地震保険に入るかどうかまで、建築家だから書けたノウハウ集。」B6版/246ページ/山海堂出版社/1995年/1300円 |
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