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2024年12月9日(月)
私の住まい 和と洋の仕口の構造と素材の美
欧州の旅を終え、近代建築の和と西欧との不可解な共通点を見いだし、欧州の模倣ではなく、あくまで “和モダン”をと考え、まずは手始めにリビングの暖炉を鉄板のみで、飾り棚も板と鉄筋だけの統一デザインにとシンプルなスケッチをしたのです。
さらに玄関の階段の手すりや、段受けなどを極力シンプルにボルトで無垢の板を支えるなど、まさに機能主義を手作りで挑戦したのです。勢いあまってコートハンガーに至るまで鍛冶屋さんと奮闘することとなったのです。
【1】木材とスティールだけの合理的シンプルデザイン
家具や調度のイメージが自分でも驚くほど変わっていることに気が付いたのです。もともと箱を組んで造る飾り棚や階段が、主だった木材を見せるために、方立の木材を限りなく細い鉄筋やボルトで留めたのです。
結果、棚板や階段板がまるで宙に浮いているように象徴的に見え、しかも木材と鉄をバランスよく組み合わせ繋ぎ、ナットで微調整して強度や振動に耐えられるものとなったのです。近代建築のモダンデザインのシンプルなカタチとは、その骨組みの構造と素材の持つ美との合理性でした。
【2】しかし・・・家づくりの和と洋の現実は厳しいものでした!
「台風一過の晴天で竣工写真を撮ろう!」などと台風が迫る中、自慢のデザインの家で就寝したのです。
が、次第に風雨が強まり分厚い雨戸がミシミシと撓い始め、押さえている間に異様な振動がブルブルと伝わって、突然巨人が天井を持ち上げるかのように浮き上がり、リビングの屋根がまるで蟹の甲羅が剥がされたような無惨な姿となったのです。まさか初めて設計した家がこのような試練に遭おうとは!と落胆していると、駆け付けた棟梁や大工たちは口々に「やっぱり『仕口』でないとだめか!」と言うのです。
【3】伝統的な木組みの軋(きし)みの柔軟な継手のパワー
確かに南に1mほど大胆に突き出した庇は妻側のテラス屋根の幅3mを含めて25㎡余ありそこに風圧と揚力を受けるのです(写真)。しかも風の強弱がブルブルと庇を震わせ150角の主柱に16㎜のボルトで緊結された梁もその繰り返す振動に、まるで主柱をボルトが引き裂くようにずるずると持ち上げられていたのです。
駆け付けた棟梁たちの「仕口」をボルトに託したことで “軋み”の柔軟性がなく、揺れを吸収できず、柱が“金物に負けて”引き裂かれたと言うのです。
なるほど伝統木造建築の「仕口」こそが、枘(ほぞ)と枘穴による“木と木を繋ぐ”伝統的な木組み軋(きし)みの柔軟な継手で、わが国の柔軟で持続可能な「仕口」の合理性だと言うのです。
ほんのこの間まで当たりまえだった、わが国の木造住宅を改めて見直すことではないのでしょうか?
次回は修復工事にあたり「和の伝統木造の柔軟性と防災を知る」です。
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