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建築家 天野 彰 長生きハウス!人は一人では生きていけない

突然不気味な振動があったかと思った瞬間,家が丸ごと振り回されているかと思うような激しい振れと轟音に恐怖しか感じられないような数分間、おさまってみると暗い中で何かの下敷きとなり、朝ぼらけの中で見えてきたのは家の中は物がごちゃごちゃと溢れ、足の踏み場もなく窓も傾き開かず息が詰まった。

外は妙に静かで呆然としていると、やがて人の声が聞こえてきてホッとしたと言う。この人の声とつながりが悲惨な状況の中でも人々の心を和ませるものはないのです。

30年となる阪神淡路の災禍の鎮魂の祈りと心構え

写真:押しつぶされた住宅街にショックを隠せない筆者(撮影:アトリエ4A林正憲
写真:押しつぶされた住宅街にショックを隠せない筆者【撮影:アトリエ4A林正憲】
直下型の突き上げるようなショックに鉄筋ビルの柱が破壊 撮影;天野彰
直下型の突き上げるようなショックに鉄筋ビルの柱が破壊【撮影 天野彰】

一方で家の一階と二階に離れて寝ていて、必死で安否を気遣う呼び声も聞こえ、通りかかりの人も家の中を覗いて一緒に声かけ持ち上げて物をかい潜り込めるスペースをつくる・・・。こうした大きな災害の場合、すぐには救助や消防が来ることはないのです。

また電気ガスや水道などのインフラが止まり、孤立感が増します。こうして初めて日ごろの自助自立の備えと地域のコミニュニティや隣人の助け合いの共助の意味を知るのです。

また家の中においても一、二階に分かれて寝るとか、個室を求めて離れて寝るなど、普段でも互いの身に異変が起こると危険で、その異変に気付かず助けられなかったなどという痛恨の悲劇が起こるかも知れないのです。

このプレートが交差する地震列島に住む限り起こる天変地異、いったい何が起ころうとも、またどこに居ても、究極のサバイバル意識は常々心しておいた方がよいと思うのです。

大きなラジオ付きの懐中電灯を一個用意するよりも、住まいのあちこちに小さなペンライトを“ばら撒く”ように置く方が安心で、また出かけるときもさらに小さいペンライト一本と薄いポリ袋数枚を常に鞄やポケットに忍ばせておくことです。まさかの事故や火災で煙に巻かれたとき、このポリ袋に空気を入れ、それを吸いながら逃げ出すこともできるのです。

普段からこうした心構えを持っていることが、自分を守り、さらに家族や人を救うことができると思うのです。

街は住むため、生きるためにできた

災害時;自衛隊による水の配給
災害時;自衛隊による水の配給【撮影 天野彰】

筆者も30年前のこの日予定していた関西の出張で地震直後の午前10時過ぎまだ機能していた関西空港に降り立ち余震の中タクシーを乗り継ぎやっとのおもいで西宮口手前までたどり着いたところで、前に進むことができず、また救助車両の邪魔になると判断、大阪まで引き返したのです。

その数週間後、事務所の構造専門の林正憲と改めて破壊状況の調査に粉塵舞う左右の惨状の中を西の宮口から三宮まで呆然と歩いたのです。さいわい筆者の設計した建物はさほど被害はなかったのですが、至るまでの駅周辺や商店街の惨状など胸が詰まる思いで見守る中、地域の人々の賢明に瓦礫を片付け、再興の意欲に感動したものでした。

「この街、商店街は我々の生きる場、復興や再開発よりも、仮設でもなんでもいいから明日から住めて生活できる家が早く欲しい。さもなければ人々がいなくなってしまう」と切実な声も聞こえて来たのです。

なるほど「長生きハウス」は人が街と一体となって助け合いながら住める街の一部だったのです。果たしてわが家わが街がそうなっているか・・・。

次回はこんな災害にも強い家とは、「ウサギ小屋」で何が悪い!です。

つっかい棒で助かった古い家   画 天野彰

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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