住宅関連記事・ノウハウ
2025年2月3日(月)
長生きハウス!“うさぎ小屋”が住みやすい!
コロナ禍でリモートワークが定着化し、在宅あるいは遠隔地でも仕事が可能と多くの企業がリモートワークを推進し、政府も地方創生を推し進めているのにもかかわらず、今も東京への人口流入が8万人近いという・・・。
結局のところますます東京の一極集中が起こっているのです。おかげで都市の住まいはますます高騰し、すでに一戸建ては無理と湾岸のタワーマンションへとそのニーズが高まり、さらに住まいは高層化し供給者側の定型化の“住むための容器”へと変貌しているのです。
一方で都心の住宅地は高齢化が進み独居老人世帯が増え、あげくは空き家が目立つという矛盾も起こっているのです。そんな中であの八潮市の下水管による道路陥没など危険なインフラの老朽化や災害のリスクも高まっているのです。
“うさぎ小屋”から“狭楽しく住む”の発想
確かに都市には職もあり店もあり病院もあり、何よりも便利で楽しいのです。まさしくコンビニエンスなのです。当然のことに住まいは密集し狭くなります。
そんな中1955年以降、経済成長を果たしたころ、欧米を席巻するようになると、欧米から、「危うい木造の長屋が密集する“うさぎ小屋”に住むビジネスマン」などと揶揄されたのです。しかもそのことに反応するかのような即席の住宅政策がわが国の住まいを狂わせることにもなるのです。
しかし欧州の住まいも狭いことを知っていた筆者は“うさぎ小屋”で何が悪い!と開き直ったものです。どうせ狭く、狭苦しいのならその「苦」を取り去り「楽」にすればいい!さらに「楽」どころか「楽しく」もすればいいのです。そうです!狭くても「狭“楽”しく」住めばいいのです。
こうして“狭楽しさ”を追求して、はや半世紀が経ちます。筆者に二人目の子どもが生まれたことを契機に、小さな中古の2LDKを購入したことに端を発しこれを実践し、それをまとめて初めて刊行した著書が『狭楽しく住む法』(新声社)でした。

まさに2LDKとは名ばかりで6畳間が2部屋あったもののLDKなどは料理をすれば音も匂いもすべて充満するKだけで、おまけに玄関からすべてが丸見えと狭いばかりかとても住みにくいものでした。
狭いほど楽しい!
このどうしょうもない2LDKを快適にリフォームしてやろうと決意したのです。当時リフォームなどと言う言葉もなく増改築とか改装などと言っていましたが、その改装で大きなKをLとDKに分けることでした。
そのテクニックこそ私がかねてより提唱していた“収納ロボット”だったのです。単なるハッチのようなのでしたが、さにあらず。DK側は妻の領域で食器収納で、リビング側にTVや収納とし、そこにライティング・ビューローを組み込んだのです。
そう、筆者の書斎です。このリビングのボードを開ければ書斎となり、ここで子どもたちとプラモデルをつくったり、一緒に学習もしたのです。
応接間、時に書斎、そして遊び場と時間差で空間を多重に使い分けたのです。
この狭楽しい家の発想は空間の立体利用、多目的利用、さらには多重利用と、同じ限られた狭いスペースを最大に生かす三原則でした。これは既存の間取りでも間仕切り壁をすべて収納とし、家具や家電を立体的に積み上げ広く使い、間仕切りの開閉で多目的に利用することなのです。
こうして既存の間取りでも高密度に利用し、そして可動間仕切りや収納壁で区切って子どもたちと楽しく暮らすことができたのです。
老いても限られた地面と資源の中で住むことは美学!
いずれ子どもたちが成長し出て行った後の生活も考えるのです。そのときこれらの収納間仕切りを取り払って老夫婦二人が住むプランに戻すのです。狭い家は壁が近くにあり、いざというときも手が付けて転倒するリスクも少なく。 近くに物があり、取り出しやすく、ずぼらに過ごせるのです。
- そう、狭いはすべてが近く、密で親しく、簡潔で引き締まって、内容も詰まって…compactです。このcomこそが…、
- community,companion,company,combine,comfort,comfortableなどなどと密接につながる豊かさなのです。
お陰で夫婦円満に、子どもたちとも密度濃く暮らし、さらには友人も多く招いて蜜に親しく交流も可能。まさに人にやさしく都市にやさしく、経済に、さらには地球にやさしい美学なのかも知れません。
そして限られた時間の中でいかに楽しく活きるか!です。狭いまま生きてきた家は老いて冷暖房費も安く、何よりも掃除が楽です。こうして住まいは人生と共に生きるのです。
次回は老いても、いや老いたからこそ物が多いのです。

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