住宅関連記事・ノウハウ
2026年7月13日(月)
ナフサショックに伴う請負金額スライドは認められているのか?
はじめに

現在の住宅設備や資材の多くは、石油由来の「ナフサ(粗製ガソリン)」を原料としています。
緊迫する中東情勢による「ナフサショック(原油高騰)」は、これから家づくりやリフォームを検討されるみなさまにとって、住宅ローン金利の上昇以上に深刻かつ長期的な影響を及ぼすと想定されます。
【中東情勢関連対策ワンストップポータル/経済産業省】
こちら
そこで今回は、今後想定される「住宅価格の上昇」や「資材不足による引き渡し遅延」への対応策をまとめました。
※以下の内容は、現時点で公表されている情報に基づく一般論です。個別の契約内容や状況によって法的判断が異なるため、具体的な補償交渉にあたっては必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
まずは、原油高騰に起因する「請負金額のスライド(改定)」に関する現状と法的義務について解説します。
請負金額のスライドは認められているのか

現在では認められるケースが増えています。
公共工事
「単品スライド条項」などの適用が積極的に推奨されており、主要な資材(燃料、鋼材など)の価格が急騰した場合には、代金の増額がルール化されています。
民間工事
以前は固定金額が一般的でしたが、現在は政府のガイドライン等により、価格変動リスクをあらかじめ契約に盛り込むことや、高騰時の協議に応じることが強く求められるようになっています。
差額は法的に払わなければいけないのか

これは「契約書にどう書かれているか」で決まります。
スライド条項がある場合
契約書に「物価変動時に金額を協議・変更できる」という条項(例:民間(七会)連合協定 工事請負契約約款など)が含まれていれば、その手続きに基づいて算定された差額を支払う義務が生じます。
2025年12月に改訂された民間(七会)連合協定 工事請負契約約款 第29条1において『必要と認められる請負代金額の変更を請求することができるとともに、必要により請負代金額の変更に係る協議を申し出ることができる』と改定されました。
この要件の1つとして『建設業法第20条の2第2項に定める資材の価格の高騰、その他の請負代金額に影響を及ぼす事象が発生したとき。』と記載されています。
スライド条項がない場合
原則として、発注者に法的な支払い義務はありません。契約は「当初の金額」で成立しているため、受注者が一方的に増額を強制することは困難です。
実務上の判断
ただし、2024年施行の改正建設業法では、受注者が高騰リスクを事前に通知(おそれ通知)することが義務付けられるなど、発注者側にも誠実な協議が求められるようになっています。「無理に安く据え置くと工事が止まる・業者が倒産する」という実利的なリスクを避けるため、協議で差額を折半するなどの解決が一般的です。
まずは、契約書の「物価の変動」や「請負代金額の変更」に関する条項に、スライド(増額請求)の規定があるか確認してみてください。
品不足の影響で引き渡しが遅れた場合、補償(遅延損害金)を請求できるかどうか

続いて、ナフサショック(原油高騰)に伴う住宅資材高騰・品不足の影響で引き渡しが遅れた場合、補償(遅延損害金)を請求できるかどうかについて解説します。
住宅資材高騰・品不足の影響で引き渡しが遅れた場合の補償(遅延損害金)を請求できるかという点は、「その遅延が不可抗力と言えるかどうか」が最大の争点になります。
結論から言うと「基本的には請求できる可能性があるが、契約書の『不可抗力』条項の内容次第」です。
遅延損害金の請求の原則
通常の契約では、工期が遅れた場合、発注者は受注者に対して遅延損害金(補償金)を請求できます。これは、当初の契約で引き渡し日が約束されているため、それを守ることができなかったことに対する損害賠償です。
不可抗力(免責)の壁
例外
遅延損害金の請求にあたり、契約書には通常「不可抗力(天災や予期せぬ社会的混乱など)」による遅延については、受注者は責任を負わないという免責規定があります。ナフサショック(原油高騰)のような、世界的な住宅資材不足・高騰が「不可抗力」にあたるかどうかは、個別の判断となります。
不可抗力と認められる場合
受注者に責任はないとされ、補償(遅延損害金)は請求できません。
不可抗力と認められない場合
「業者の予測が甘かった」「代替品の調達努力が不足していた」とみなされれば、受注者の責任となり、補償を請求できる可能性があります。
法的な実務の現状

昨今の世界的な物価高騰や物流混乱について、裁判所や実務上のガイドラインでは「単なる価格高騰だけでは不可抗力とは認めにくい」という見方が一般的です。
一方、「物理的に資材が一切流通しておらず、どうやっても手に入らなかった」というレベルの品不足であれば、免責(補償不要)となるケースもあります。
対策と確認

契約書の「不可抗力」条項を確認
建築請負契約前においては、必ず事前にどのような事態が「不可抗力」として免責対象になっているかチェックしましょう。
建築請負契約後の場合は、着工前後を問わず協議時点における住宅資材・住宅設備等、住宅を建築するために必要な各種資材等の納品状況の説明、ならびに今後の各種住宅資材・設備等の需給見通しについて、施工会社と協議する必要があります。
遅延の「理由」を精査
単に「高くなったから買わなかった(買い控え)」のか、「市場に必要とするモノがなくて買えなかった(品不足)」なのかによって、責任の所在が変わります。
協議の記録を残す
施工会社がいつ遅延を報告してきたか、各種資材等の調達に向けてどのような努力をしたのかの記録が、後の交渉や法的判断において、たいへん重要になります。
まずは建築請負契約を締結した施工会社から、工事遅延の具体的な「直接的な原因」を書面で回答してもらうことから始めるのが得策です。
(注)上記で解説した本内容は、執筆時点における一般的な見解です。よって、個別の契約内容や状況によって、法的判断は異なります。具体的な補償交渉にあたっては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
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